派遣社員の有給休暇管理は派遣元?よくある誤解と正しい運用ポイント 2026.01.16
派遣社員として働いている方、または派遣社員を受け入れている企業の担当者から、次のような質問を受けることがよくあります。
「有給休暇は誰に申請すればいいの?」
「派遣先の上司に言えば取得できるの?」
「派遣だから有給休暇はないのでは?」
派遣という働き方は、雇用主と実際の勤務先が異なるため、有給休暇の管理について誤解が生じやすいのが実情です。実務の現場では、派遣元・派遣先・派遣社員の三者で認識がズレてしまい、不要なトラブルにつながるケースも少なくありません。
本記事では、社会保険労務士の視点から「派遣社員の有給休暇は誰が管理するのか」という基本を整理しつつ、よくある誤解と正しい運用ポイントをわかりやすく解説します。
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■ 結論:派遣社員の有給休暇を管理するのは「派遣元」
結論からお伝えすると、派遣社員の有給休暇を管理するのは派遣先企業ではなく、派遣元(派遣会社)です。
派遣社員は派遣先の職場で日々業務を行いますが、法律上の雇用主は派遣元になります。労働契約を結んでいる相手が派遣元である以上、有給休暇に関する管理責任も派遣元にある、というのが基本的な考え方です。
具体的には、次のような業務はすべて派遣元が担います。
・有給休暇の付与日数の管理
・取得状況の把握
・残日数の計算
・時効管理(2年)
・年5日の取得義務への対応
派遣先は、日々の業務指示や勤怠状況の確認を行う立場ではありますが、有給休暇の付与や管理の主体ではありません。
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■ なぜ派遣元が有給休暇を管理するのか
この点を理解するためには、労働基準法における「使用者」という考え方を押さえる必要があります。
労働基準法では、有給休暇は「使用者」が労働者に対して付与し、管理するものとされています。ここでいう使用者とは、賃金を支払い、労働契約を締結している相手、つまり雇用主のことです。
派遣社員の場合、労働契約を結んでいるのは派遣会社です。たとえ実際の勤務場所が派遣先であっても、法律上の使用者は派遣元になります。そのため、次のような判断は派遣元が法律に基づいて行う必要があります。
・有給休暇が発生する要件を満たしているか
・付与日数は何日か
・取得可能な残日数はいくつか
派遣先が独自に「うちは忙しいから有給は不可」と判断したり、「短期だから有給は出ない」と決めたりすることはできません。
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■ よくある誤解① 派遣先の了承がないと有給は取れない?
現場で特に多いのが、「派遣先の了承がないと有給休暇は取れない」という誤解です。
確かに、実務上は業務に支障が出ないよう、派遣先と日程調整を行うことが一般的です。しかし、これはあくまで業務上の調整であり、有給休暇を取得する権利そのものを派遣先が握っているわけではありません。
正しい流れとしては、
1.派遣社員が派遣先と休暇日程の相談・調整を行う
2.派遣元に対して有給休暇の申請を行う
という形になります。派遣先との調整は大切ですが、「派遣先が許可しなければ取得できない」という理解は誤りです。
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■ よくある誤解② 派遣先の就業規則が優先される?
「派遣先の就業規則では有給が取りにくいから、従わなければならない」という声もよく聞かれます。
しかし、有給休暇に関して適用されるのは、派遣元の就業規則や労働条件です。派遣先の就業規則は、派遣社員の労働条件を直接決めるものではありません。
派遣先の社内ルールが厳しかったとしても、それを理由に派遣社員の有給休暇取得を制限することはできません。この点を派遣先企業が正しく理解していないと、知らず知らずのうちに法令違反につながるリスクもあります。
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■ よくある誤解③ 派遣だから有給休暇はない?
「派遣社員には有給休暇がない」と思い込んでいる方も、いまだに少なくありません。
結論から言えば、派遣社員であっても、一定の要件を満たせば正社員と同様に有給休暇は発生します。
具体的には、
・雇い入れの日から6か月継続勤務していること
・全労働日の8割以上出勤していること
この2つの要件を満たせば、有給休暇は当然に付与されます。雇用形態が派遣であることを理由に、有給休暇が認められないことはありません。
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■ 派遣元・派遣先・派遣社員それぞれの注意点
派遣社員の有給休暇をめぐるトラブルは、三者の役割認識のズレから生じることがほとんどです。
【派遣元が注意すべきポイント】
・有給休暇の付与日、残日数を明確に管理する
・派遣社員に対して制度を丁寧に説明する
・年5日の取得義務を確実に履行する
【派遣先が注意すべきポイント】
・有給休暇は法律上の権利であると理解する
・人手不足を理由に取得を妨げない
・業務調整に協力する姿勢を持つ
【派遣社員が意識したいポイント】
・申請先は派遣元であることを理解する
・早めに日程調整を行い、派遣元に相談する
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■ 年5日の有給休暇取得義務も派遣元の責任
2019年から導入された「年5日の有給休暇取得義務」についても、派遣社員は例外ではありません。
この義務を管理するのも派遣元です。派遣先任せにしていると、知らないうちに未取得となり、派遣元が法令違反を問われるリスクがあります。
派遣元としては、派遣先との連携を取りながら、計画的な取得を促す体制づくりが重要になります。
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■ 社会保険労務士ができるサポート
派遣社員の有給休暇管理は、労働基準法だけでなく、労働者派遣法や関連ガイドラインも関係するため、実務判断が難しい分野です。
社会保険労務士は、
・有給休暇管理の仕組みづくり
・帳簿や管理方法の整備
・派遣先との役割分担の整理
・派遣社員からの相談対応
といった形で、派遣元・派遣先双方をサポートすることができます。
派遣社員の有給休暇をめぐるトラブルは、「知らなかった」「思い込みだった」というケースが大半です。正しい知識を持ち、早めに専門家へ相談することで、無用なリスクを防ぐことができます。
派遣という働き方が当たり前になった今だからこそ、有給休暇の正しい管理と運用を、改めて見直してみてはいかがでしょうか。
当事務所へのご相談は初回無料です。ホームページお問合せよりご連絡ください。
📝人材ビジネスナビに1月分の記事を執筆しました 2026.01.15
テーマ:派遣事業報告書の書き方(第1面編)
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無期転換ルール放置で違反指摘が急増|派遣会社が今すぐ確認すべき全国共通の注意点【派遣業特化】 2026.01.15
はじめに
派遣業だからこそ無期転換ルールが問題になりやすい
近年、日本全国で「無期転換ルール」をめぐる是正指導や労務トラブルが急増しています。中でも派遣会社は、無期転換ルールの影響を最も受けやすい業種と言っても過言ではありません。
派遣業では、
- 有期雇用が原則
- 同一スタッフが長期間就業するケースが多い
- 派遣先都合で契約更新が繰り返されやすい
といった構造的特徴があります。そのため、「気づいたら通算5年を超えていた」「派遣先との契約を優先していたら違反を指摘された」という相談が、全国の社会保険労務士事務所に日常的に寄せられています。
本記事では、派遣業に特化し、無期転換ルールの基本から、派遣会社に多い違反パターン、派遣法との関係、実務対応のポイントまでを社会保険労務士の視点で詳しく解説します。
派遣会社にも確実に適用される無期転換ルールの基本
無期転換ルールは、労働契約法第18条に基づき、
同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えた場合、労働者の申込みにより無期労働契約へ転換できる
という制度です。
ここで重要なのは、派遣社員であっても「使用者」は派遣元会社であるという点です。派遣先が変わっても、派遣元との有期雇用契約が継続していれば、契約期間は通算されます。
- 派遣先が複数あっても通算
- フルタイム・短時間を問わない
- 都市部・地方の別なく全国共通
「派遣先が違うからリセットされる」という認識は、明確な誤りです。
派遣業で無期転換ルール違反が増えている理由
派遣会社で違反が増えている背景には、業界特有の事情があります。
契約管理が派遣先基準になりがち
派遣契約の更新時期に合わせて、雇用契約も更新している派遣会社は少なくありません。その結果、派遣先との契約管理は厳密でも、派遣元としての雇用契約通算管理が不十分になりがちです。
営業・現場優先で労務管理が後回し
人手不足の派遣業界では、営業対応や派遣先フォローが優先され、労務管理は「問題が起きてから対応」というケースが多く見られます。
派遣社員側の権利意識の高まり
インターネットやSNSの普及により、「無期転換」という言葉を派遣社員自身が知るようになり、労働局への相談件数が全国的に増えています。
派遣会社に特に多い無期転換ルールの誤解
誤解①:5年で自動的に無期派遣になる
無期転換は自動ではなく、派遣社員からの申込みが必要です。
しかし、申込みを避けるために
- 更新を打ち切る
- 突然派遣終了にする
といった対応をすると、不当雇止めとして争われるリスクがあります。
誤解②:更新上限を設ければ無期転換を防げる
派遣業では「更新上限3年」「5年まで」といった管理がよく行われますが、実態として更新が繰り返されていれば、形式的な上限設定は無効と判断される可能性があります。
誤解③:派遣法の3年ルールと同じもの
無期転換ルールと派遣法の3年ルールは別の制度です。
- 派遣法:同一派遣先での就業期間制限
- 無期転換:派遣元との雇用契約期間
この違いを混同している派遣会社は非常に多く、トラブルの原因になっています。
全国で実際に起きている派遣業の違反指摘事例
事例①:派遣先変更を繰り返し5年超えに気づかなかったケース
地方の派遣会社で、同一スタッフを複数の派遣先に配置転換しながら長期間雇用していた事例です。
派遣先が変わるたびに契約を作り直していたため、通算期間を把握しておらず、労働局調査で無期転換申込権の説明不足を指摘されました。
事例②:無期転換を避けるため派遣終了→申告
首都圏の派遣会社では、5年到達前に派遣先契約を終了し、そのまま雇用契約も終了。
派遣社員が「無期転換を避けるための雇止めではないか」と労働局へ申告し、派遣会社側の説明体制が問題視されました。
これらは、日本全国の派遣業界で決して珍しくないケースです。
派遣会社が負う無期転換ルール違反のリスク
派遣業における無期転換ルール違反は、単なる是正指導にとどまりません。
- 派遣社員からの信頼低下
- 派遣先企業からの契約見直し
- 行政指導履歴による事業運営リスク
派遣業は「信用」が生命線であり、一度のトラブルが経営に大きく影響します。
無期転換後の派遣社員はどう扱うべきか
無期転換後も、必ずしも正社員にする必要はありません。
派遣業では一般的に、
- 無期雇用派遣社員
- 勤務地・職種限定型
といった形で制度設計されるケースが多く見られます。
重要なのは、
- 賃金
- 派遣待機時の扱い
- 配置転換の範囲
を事前に明確にしておくことです。
派遣会社が今すぐ整えるべき3つの実務対策
① 派遣元としての通算契約期間管理
派遣先ではなく、「派遣元との雇用期間」を軸に管理する仕組みが不可欠です。
② 無期転換申込権の説明体制構築
5年到達前に、書面と面談で説明することで、後の紛争を防げます。
③ 無期雇用派遣社員制度の明確化
制度が曖昧なまま無期転換を迎えることが、最も危険です。
無期転換対応は派遣会社の競争力になる
無期転換ルールに正しく対応している派遣会社は、
- 派遣社員の定着率向上
- 派遣先からの評価向上
- 安定した人材供給
といった強みを持つことができます。
まとめ:派遣業こそ無期転換ルールを経営戦略に
無期転換ルールは、派遣会社にとって避けて通れない全国共通の制度です。
放置すればリスク、整備すれば強みになります。
派遣業特有の実務を理解した上で、早期に制度設計を行うことが、将来のトラブル防止と安定経営につながります。
「自社の運用は問題ないか」「派遣法との整理ができているか」と感じたら、派遣業に精通した社会保険労務士へ早めに相談することをおすすめします。
当事務所へのご相談は初回無料です。ホームページのお問合せよりご連絡ください。
【派遣元責任者必読】日本全国対応の派遣会社が行うべきキャリアアップ計画書の作り方|社会保険労務士が実務目線で解説 2026.01.13
はじめに:キャリアアップ計画書は「派遣元責任者の責任」である
派遣元責任者として業務を行う中で、
「キャリアアップ計画書は本社が作っているから大丈夫」
「形式は整っているので問題ないはず」
と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、労働局や労基署の調査において、実際に説明を求められ、運用状況を確認されるのは派遣元責任者です。
キャリアアップ計画書は、単なる本社書類ではなく、派遣元責任者が理解し、説明し、運用していることが前提の制度です。
特に日本全国対応の派遣会社では、
- 地域ごとに派遣先が異なる
- 職種が多岐にわたる
- 派遣元責任者ごとの理解度に差が出やすい
といった事情から、キャリアアップ計画書が「形骸化」しやすい傾向があります。
本記事では、派遣元責任者の立場に立って、日本全国対応の派遣会社が実務で困らないキャリアアップ計画書の作り方と運用ポイントを、社会保険労務士の視点から解説します。
日本全国対応の派遣会社が行うべきキャリアアップ計画書の重要ポイント
派遣元責任者が理解すべきキャリアアップ計画書の位置づけ
キャリアアップ計画書は、労働者派遣法第30条の2に基づき、派遣元事業主に作成義務が課されている法定書類です。
そして、その実施・説明・管理を担うのが派遣元責任者です。
派遣元責任者として最低限理解しておくべきポイントは以下のとおりです。
- なぜキャリアアップ計画書が必要なのか
- 派遣社員にどのように説明すべきか
- 調査時にどこを確認されるのか
「書類がある」だけでは不十分で、「説明できるか」「実施しているか」が問われます。
日本全国対応の派遣会社で特に重要になる視点
全国対応の派遣会社では、派遣元責任者が複数配置されていることが一般的です。
そのため、キャリアアップ計画書について、
- 拠点ごとに説明内容が違う
- 派遣元責任者が内容を把握していない
- 派遣社員から質問されても答えられない
といった事態が起こりやすくなります。
派遣元責任者として重要なのは、「全国共通の枠組み」を理解したうえで、現場に落とし込むことです。
社会保険労務士の視点から見た「使える」計画書
実務で評価されやすいキャリアアップ計画書には、次の特徴があります。
- 初級・中級・上級など段階が明確
- 各段階ごとに「何ができるようになれば次に進めるのか」が明文化されている
- OJT(派遣先)とOFF-JT(研修・eラーニング等)の区別がされている
派遣元責任者としては、「派遣社員に説明して納得してもらえるか」という視点で内容を確認することが重要です。
日本全国対応の派遣会社が行うべきキャリアアップ計画書の注意点
派遣元責任者が陥りやすい典型的なミス
派遣元責任者向けの相談で特に多いのが、次のようなケースです。
- キャリアアップ計画書を一度も派遣社員に説明していない
- 内容を読んだことがない
- 調査時に初めて中身を確認した
これらはすべて、是正指導につながりやすいリスク行動です。
派遣元責任者は「管理職」ではなく、「法令上の責任者」であるという認識が不可欠です。
全国一律運用で問題になりやすいポイント
日本全国対応の派遣会社では、次の点が特に指摘されやすくなります。
- 実施予定の研修が現実的でない
- 派遣先業務とキャリア段階が合っていない
- 派遣社員が制度を知らない
派遣元責任者としては、「実際にこの拠点で運用できるか?」という目線で計画書を確認することが重要です。
社会保険労務士が現場でよく受ける質問
Q. 派遣先でのOJTだけではだめですか?
A. OJTのみでは不十分と判断される可能性があります。OFF-JTを組み合わせる設計が必要です。
Q. 派遣元責任者が説明しなければいけませんか?
A. はい。派遣元責任者が説明できる体制が望ましいとされています。
Q. 全派遣社員に同じ説明で問題ありませんか?
A. 基本説明は共通で構いませんが、職種に応じた補足があるとより適切です。
日本全国でキャリアアップ計画書を適切に運用するメリット
派遣元責任者の業務負担を軽減する効果
キャリアアップ計画書を正しく運用すると、
- 派遣社員からの不安・不満が減る
- 説明対応がスムーズになる
- トラブル予防につながる
結果として、派遣元責任者の精神的・実務的負担が軽減されます。
全国どの拠点でも共通して得られる効果
地域に関係なく、
- 派遣社員の定着率向上
- 派遣先からの信頼向上
- 行政調査への耐性強化
といった効果が期待できます。
まとめと結論(派遣元責任者向け)
キャリアアップ計画書は、派遣元責任者にとって
「知らなかった」では済まされない制度です。
- 内容を理解する
- 派遣社員に説明できる
- 実施状況を把握する
この3点を押さえることで、調査対応・現場対応の両方が格段に楽になります。
社会保険労務士に相談する理由(日本全国対応)
派遣元責任者として、
- 計画書の内容に自信がない
- 調査対応が不安
- 本社に改善提案をしたい
という場合、社会保険労務士への相談は非常に有効です。
日本全国対応の派遣会社であれば、オンライン対応可能な社会保険労務士に相談することで、拠点を問わず統一的なアドバイスを受けることができます。
派遣元責任者として安心して業務を行うためにも、キャリアアップ計画書は「専門家と一緒に整える」ことを強くおすすめします。
初回のご相談は無料です。ホームページのお問合せよりご連絡ください。
派遣社員の定着率を上げるために日本全国の派遣会社が取り組むべき労務施策 2026.01.12
― 社会保険労務士の視点から考える定着率向上の実務 ―
派遣社員の定着率が派遣会社経営に与える影響
日本全国の派遣会社に共通する課題の一つが、派遣社員の定着率です。
人手不足が続く現在、派遣社員の確保は年々難しくなっており、「採用できても定着しない」という声を多く耳にします。
派遣社員の離職が続くと、
- 採用・教育コストの増加
- 派遣先からの評価低下
- 現場の業務効率の悪化
など、経営面・労務面の双方に影響が及びます。
そのため、派遣社員の定着率向上は、単なる人事課題ではなく、派遣会社の安定経営に直結する重要なテーマといえます。
日本全国での派遣社員の定着率を上げるための労務施策の重要ポイント
労働条件の明確化と丁寧な説明
社会保険労務士として多くの派遣会社を見てきた中で、定着率が低いケースに共通しているのが、労働条件の伝え方に関する問題です。
具体的には、
- 業務内容の範囲が曖昧
- 残業や休日出勤の可能性が十分に説明されていない
- 契約更新の判断基準が不明確
といった点が、派遣社員の不安や不信感につながっています。
雇用契約書や就業条件明示書の内容を形式的に整えるだけでなく、実際の就業実態と一致しているかを定期的に確認することが、定着率向上の第一歩となります。
日本全国での具体的なケーススタディ(社会保険労務士の視点から)
ある全国対応の派遣会社では、派遣社員の早期離職が課題となっていました。
ヒアリングを行ったところ、「派遣先での業務内容変更が頻繁」「評価されている実感がない」といった声が多く見受けられました。
そこで、
- 派遣先との業務内容確認プロセスの見直し
- 派遣社員向けの簡易的な評価・フィードバック制度の導入
- 定期的なフォロー面談の実施
といった労務施策を段階的に導入しました。
その結果、派遣社員の不満が早期に把握できるようになり、定着率の改善につながりました。
派遣社員にとって、「派遣元がきちんと関与してくれている」という安心感は、非常に大きな意味を持ちます。
日本全国での派遣社員の定着率を上げるための労務施策の注意点
法令遵守に加えて「運用」が重要
派遣法や労働基準法を守ることは当然ですが、実務の現場では「制度はあるが運用されていない」というケースも少なくありません。
例えば、
- 有給休暇制度はあるが取得しづらい
- 相談窓口が機能していない
- ハラスメント対策が派遣先任せになっている
といった状態では、派遣社員の不安は解消されにくく、結果として離職につながります。
制度を整えるだけでなく、実際に使われているか、機能しているかを確認する視点が重要です。
社会保険労務士によく寄せられる質問と対応の考え方
派遣社員にも定期的な面談は必要でしょうか。
派遣社員は、職場内で孤立しやすい立場にあります。
定期的な面談を行うことで、小さな不満や違和感を早期に把握でき、離職防止につながります。
派遣先とのトラブルにはどこまで関与すべきでしょうか。
派遣社員にとって、派遣元は最も頼りにできる存在です。
派遣先との関係性を考慮しつつも、派遣元として適切に関与する姿勢が、信頼関係の構築につながります。
日本全国全域での派遣社員の定着率を上げる労務施策のメリット
定着率向上がもたらす中長期的効果
派遣社員の定着率が向上すると、
- 採用活動の負担軽減
- 教育・引き継ぎコストの削減
- 派遣先からの評価向上
といった効果が期待できます。
結果として、派遣会社全体の業務効率や収益性の向上にもつながります。
地域を問わず共通する考え方
日本全国どの地域であっても、派遣社員が重視しているのは、
「安心して働けるか」「きちんと見てもらえているか」という点です。
派遣社員であっても、
- 丁寧な説明
- 適切なフォロー
- 公平な労務管理
が行われていれば、定着率は着実に改善していきます。
まとめ:派遣社員の定着率向上に向けて
派遣社員の定着率を上げるためには、
- 労働条件の明確化
- 継続的なフォロー体制
- 派遣先との連携強化
- 派遣社員目線での労務管理
が欠かせません。
これらを積み重ねていくことが、派遣会社の信頼性向上と安定経営につながります。
社会保険労務士としてできる支援(日本全国対応)
派遣社員の定着率改善には、法令理解と現場実務の両面が求められます。
社会保険労務士は、
- 派遣会社の実情に合わせた労務施策の提案
- 法改正を踏まえた制度設計
- 継続的な労務リスク管理
を通じて、派遣会社の経営を支援します。
派遣社員の定着率でお悩みの際は、専門家への相談も一つの選択肢としてご検討ください。
初回のご相談は無料です。ホームページのお問合せよりご連絡ください。
【2024年10月施行】社会保険適用拡大で51人以上の企業に何が変わる? 2026.01.09
2024年10月から、社会保険の適用範囲がさらに拡大されました。
これまで対象外だったパート・アルバイトなどの短時間労働者についても、一定の条件を満たせば社会保険への加入が義務となります。
「うちは正社員が少ないから関係ない」
「パート中心の会社だから対象外だと思っていた」
こうした声を、派遣会社や中小企業の経営者・人事担当者の方から多く耳にします。しかし今回の改正では、“企業規模の考え方”や“加入判断の基準”を正しく理解していないと、知らないうちに未加入状態になってしまうリスクもあります。
本記事では社会保険労務士の立場から、
・社会保険適用拡大の概要
・「従業員数51人以上」の正しい判断方法
・新たに対象となる短時間労働者の要件
・企業が実務で準備すべきポイント
をできるだけわかりやすく解説します。
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■ 社会保険の適用拡大とは?
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社会保険とは、主に「健康保険」と「厚生年金保険」を指します。
これまで社会保険は、原則としてフルタイムで働く正社員が対象というイメージを持たれがちでした。
しかし近年は、働き方の多様化により、パート・アルバイト・派遣社員など短時間で働く方が増えています。
こうした背景を踏まえ、短時間労働者にも被用者としてふさわしい保障を行うため、社会保険の適用範囲は段階的に拡大されてきました。
その最終段階とも言えるのが、2024年10月から始まった「従業員数51人以上の企業」への適用拡大です。
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■ 何が変わった?2024年10月の改正ポイント
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今回の改正で最も重要なポイントは次の2点です。
① 対象企業の範囲が拡大
② 短時間労働者の社会保険加入が義務化
これまで社会保険の適用拡大は、
・2016年:501人以上
・2022年:101人以上
と段階的に進められてきました。
そして2024年10月からは、
「従業員数51人以上」の企業まで対象が広がりました。
これにより、これまで対象外だった中小企業や派遣会社でも、社会保険への対応が必須となっています。
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■ 「従業員数51人以上」の正しい考え方
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ここで注意が必要なのが、「従業員数」の数え方です。
一般的に言う従業員数=在籍している人数
と考えがちですが、社会保険の適用判断では少し異なります。
社会保険でいう従業員数とは、
「厚生年金保険の被保険者数」を基準に判断します。
具体的には、次の人数を合計します。
・フルタイムで働く従業員
・週の所定労働時間および月の所定労働日数が、フルタイムの4分の3以上の従業員
雇用形態(正社員・契約社員・パート・派遣など)は問いません。
条件を満たせばすべてカウント対象です。
また、月ごとに人数をカウントし、
「直近12か月のうち6か月以上で50人を超えている場合」
に、特定適用事業所に該当します。
法人の場合は、同一法人番号の全事業所を合算する点にも注意が必要です。
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■ 特定適用事業所になると何が起こる?
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特定適用事業所に該当すると、短時間労働者についても社会保険の加入義務が生じます。
日本年金機構から
「特定適用事業所に関する重要なお知らせ」
が届くケースもありますが、通知が来る前であっても、要件を満たしていれば対象となります。
「知らなかった」「通知が来ていない」は理由にならないため、早めの確認が重要です。
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■ 新たに社会保険の対象となる短時間労働者の要件
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短時間労働者が社会保険に加入するためには、次のすべてを満たす必要があります。
① 週の所定労働時間が20時間以上
※残業は含みませんが、実労働時間が継続的に20時間以上になる場合は要注意です。
② 所定内賃金が月額8万8千円以上
※年収106万円以上が目安
※通勤手当、残業代、賞与などは含みません。
③ 雇用期間が2か月を超える見込みがある
※短期契約でも更新予定があれば対象になる場合があります。
④ 学生ではない
※夜間学生・休学中は対象となります。
派遣会社の場合、派遣スタッフについてもこの基準で判断するため、契約内容と就業実態の両方を確認する必要があります。
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■ 企業側の負担はどう変わる?
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社会保険に加入すると、保険料は労使折半となります。
そのため、企業側の社会保険料負担は確実に増加します。
一方で、
・人材の定着
・採用力の向上
・従業員の安心感の向上
といったプラスの側面もあります。
また、厚生労働省の「社会保険料かんたんシミュレーター」を使えば、負担額の目安を事前に把握することができます。
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■ 適用拡大に向けて企業が行うべき実務対応
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実務対応は、次の流れで進めるのが一般的です。
1. 加入対象者の洗い出し
2. 社会保険料負担の試算
3. 社内方針の検討
4. 従業員への周知・説明
5. 被保険者資格取得届の提出(電子申請可)
特に重要なのは、従業員への説明です。
「手取りが減るのでは?」という不安に対して、将来の年金や手当金のメリットを丁寧に伝えることで、理解を得やすくなります。
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■ 社会保険適用拡大は“負担”だけではない
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社会保険の適用拡大は、企業にとって負担増という側面だけが注目されがちです。
しかし実際には、働き方を見直し、人材戦略を再構築するチャンスでもあります。
労働時間の設計、正社員転換、助成金の活用など、制度を正しく理解すれば選択肢は広がります。
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■ 社労士としてのまとめ
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2024年10月からの社会保険適用拡大は、
「知らなかった」では済まされない重要な制度改正です。
特に
・従業員数のカウント方法
・短時間労働者の要件
は、実務で判断を誤りやすいポイントです。
不安を感じた時点で一度立ち止まり、専門家の視点で整理することが、結果的に企業と従業員双方を守ることにつながります。
制度対応をきっかけに、より安定した職場づくりを進めていきましょう。
もしご相談が必要であればホームページのお問合せよりお気軽にご連絡ください。
初回のご相談は無料です。
【参照リンク】
政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/202209/entry-10068.html
2026年度派遣同一労働同一賃金労使協定セミナー開催のお知らせ(2/3 14:00-15:00) 2026.01.08
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人材派遣会社に初の事業停止命令|社会保険未加入が招く重大リスク 2026.01.08
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はじめに:ついに「是正指導」では終わらなくなった
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2019年2月、大阪労働局は人材派遣会社に対し、**社会保険未加入を理由とする事業停止命令**を出しました。
これは、労働者派遣法に基づく行政処分として「初の事例」です。
これまで派遣会社の社会保険未加入については、多くの場合「是正指導」や「改善報告」で対応が終わっていました。しかし今回、ついに**4か月間の事業停止**という極めて重い処分が下されたことで、状況は大きく変わったと言えるでしょう。
派遣会社にとって社会保険の適正加入は、もはや「分かってはいるけど後回し」にできるテーマではありません。本記事では、今回の行政処分の内容を整理しつつ、派遣会社が直面する重大なリスクと、今後取るべき対応について社会保険労務士の視点から解説します。
――――――――――――――――――――――
今回の行政処分の概要
――――――――――――――――――――――
今回、行政処分を受けた派遣会社は、**労働者派遣法第9条第1項**に基づき厚生労働大臣から付されていた「許可条件」に違反したと判断されました。
その許可条件の一つが、
「労働保険・社会保険の適用基準を満たす派遣労働者について、適正な加入を行うこと」
というものです。
つまり、
✔ 社会保険の加入要件を満たしている派遣社員がいる
✔ にもかかわらず加入させていなかった
この点が明確な違反とされ、**是正ではなく処分**が選択されたのです。
結果として、大阪労働局は
「労働者派遣事業停止命令(4か月)」
を発令しました。
――――――――――――――――――――――
なぜ「初の行政処分」になったのか
――――――――――――――――――――――
「これまでと同じように指導で終わると思っていた」
多くの派遣会社が、正直そう感じたのではないでしょうか。
しかし近年、厚生労働省は派遣業界に対し、次のような強い姿勢を示しています。
・派遣社員の処遇改善
・同一労働同一賃金への対応
・社会保険の適正加入の徹底
特に社会保険については、
**「派遣事業の許可を維持するための前提条件」**
という位置づけが明確になっています。
今回は、
「指導を繰り返しても改善が見られない」
「派遣法上の許可条件違反が明白」
と判断された結果、見せしめではなく**本気の処分**が行われたと考えられます。
――――――――――――――――――――――
社会保険未加入が派遣会社にもたらす重大リスク
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社会保険未加入のリスクは、単に保険料の問題だけではありません。
① 事業停止・許可取消のリスク
今回のように事業停止命令が出れば、売上はゼロになります。さらに悪質と判断されれば、派遣業の許可取消もあり得ます。
② 労働局からの重点監督対象になる
一度問題が表面化すると、その後は定期的に調査が入るケースも少なくありません。
③ 派遣先企業からの信用低下
「コンプライアンスに不安のある派遣会社」と見なされれば、取引停止につながる可能性もあります。
④ 派遣社員とのトラブル増加
後から未加入が判明し、遡及加入や保険料負担を巡って紛争になるケースもあります。
社会保険未加入は、**経営リスクそのもの**と言っても過言ではありません。
――――――――――――――――――――――
実務で多い「未加入」の典型パターン
――――――――――――――――――――――
社労士として派遣会社の相談を受ける中で、次のようなケースをよく見かけます。
・週20時間以上だが「短期だから」と未加入
・更新を繰り返しているのに加入させていない
・月収8.8万円超なのに条件を正確に確認していない
・「本人が希望しないから加入させていない」
いずれも、**理由としては通用しません**。
社会保険は「本人の希望制」ではなく「法律上の義務」です。
――――――――――――――――――――――
今後、全国に波及する可能性が高い理由
――――――――――――――――――――――
今回の処分は大阪労働局によるものですが、情報は全国の労働局で共有されます。
・同様の事例が他にも存在する
・行政として前例ができた
・「処分できる」という判断基準が明確になった
この3点から考えると、今後は
**「社会保険未加入=行政処分」**
という流れが全国に広がっていく可能性は高いでしょう。
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派遣会社が今すぐ行うべき自己点検ポイント
――――――――――――――――――――――
今すぐ確認していただきたいポイントは以下の通りです。
・加入要件を満たす派遣社員を正確に把握しているか
・契約更新時に加入判定を見直しているか
・短時間・短期間という思い込みで判断していないか
・加入漏れがあった場合の是正フローは決まっているか
「たぶん大丈夫」ではなく、**書類と数字で確認すること**が重要です。
――――――――――――――――――――――
社労士の視点:社会保険対策は経営防衛
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社会保険への加入は、確かにコストがかかります。
しかし、それ以上に重要なのは、
・事業継続
・許可維持
・取引先からの信用
これらを守るための**経営防衛策**だという点です。
適正加入を前提にした人員計画や料金設計を行うことで、長期的には安定した派遣事業運営が可能になります。
――――――――――――――――――――――
まとめ:社会保険未加入は「見逃されない時代」へ
――――――――――――――――――――――
今回の行政処分は、派遣業界全体への強いメッセージです。
「社会保険未加入は、もう見逃されない」
そう受け止めるべきでしょう。
今一度、自社の運用を点検し、必要であれば専門家の力を借りながら、早めに是正していくことが重要です。
派遣事業を長く安定して続けるためにも、社会保険対応を“後回し”にしない経営判断が、これからの時代には求められています。
【参照記事リンク】
就業条件明示書を正しく理解する|派遣法に基づく必須項目と作成のコツ 2026.01.07
1.はじめに
派遣業務を行ううえで、必ず対応しなければならない書類の一つが「就業条件明示書」です。派遣会社にとっては日常的な実務の一部である一方、「とりあえず雛形を使っている」「労働条件通知書と一緒だから問題ないだろう」と、内容を深く確認しないまま運用されているケースも少なくありません。
しかし、就業条件明示書は労働者派遣法に基づく重要書類であり、記載漏れや不備があると、行政指導や派遣スタッフとのトラブルにつながるおそれがあります。本記事では、就業条件明示書の基本的な考え方から、派遣法に基づく必須項目、実務で押さえておきたい作成のコツまでを、社会保険労務士の視点でわかりやすく解説します。
2.就業条件明示書とは何か
就業条件明示書とは、派遣元事業主が派遣スタッフに対して、派遣就業に関する具体的な条件を明示するための書面です。労働基準法第15条による「労働条件の明示」に加え、労働者派遣法により、派遣特有の事項を事前に明らかにすることが義務付けられています。
派遣という働き方は、雇用主である「派遣元」と、実際に就業する「派遣先」が分かれている点が特徴です。そのため、誰が指揮命令を行うのか、どこでどのような業務を行うのかといった点を、派遣スタッフが事前に正確に理解できるようにする必要があります。その役割を果たすのが就業条件明示書です。
3.労働条件通知書との違い
就業条件明示書と混同されやすい書類に「労働条件通知書」があります。労働条件通知書は、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、すべての労働者に対して交付が必要な書面で、賃金や労働時間、契約期間など、雇用契約の基本条件を示します。
一方、就業条件明示書は派遣労働者に特化した書面であり、派遣先の名称や就業場所、指揮命令者、派遣期間など、派遣法で定められた事項を記載しなければなりません。
実務上は、労働条件通知書と就業条件明示書を一体化した書式を用いる派遣会社も多いですが、「派遣法上の必須項目がすべて網羅されているか」という視点での確認が不可欠です。
4.就業条件明示書の交付タイミング
就業条件明示書は、派遣スタッフが派遣就業を開始する前に交付しなければなりません。「初日の朝に渡せばよい」「口頭で説明しているから大丈夫」と考えられがちですが、法令上は書面での明示が原則です。
また、派遣就業開始前に内容を理解してもらうことが重要であり、派遣スタッフから質問があった場合に丁寧に説明できる体制も求められます。交付のタイミングが遅れたり、説明が不十分だったりすると、「聞いていた条件と違う」という不信感につながりやすく、結果として早期離職やクレームの原因になります。
5.派遣法に基づく必須記載事項
就業条件明示書には、派遣法で定められた具体的な記載事項があります。主なものとして、以下が挙げられます。
・派遣先事業所の名称および所在地
・就業場所
・従事する業務内容
・指揮命令者
・就業日および就業時間、休憩時間
・時間外労働の有無
・派遣期間
・賃金の額、支払方法、支払日
・有給休暇に関する事項
・社会保険・労働保険の適用
これらは「書いてあればよい」というものではなく、実態と一致していることが重要です。特に業務内容については、「付随業務を含む」といった曖昧な表現だけで済ませてしまうと、後々トラブルになるケースも見受けられます。
6.同一労働同一賃金に関する明示
近年、派遣会社の実務で特に重要性が高まっているのが、同一労働同一賃金に関する事項です。派遣スタッフの待遇決定方式(派遣先均等・均衡方式か、労使協定方式か)や、賃金に含まれる手当の内容などを明示する必要があります。
この部分は制度が複雑で、派遣スタッフから質問を受けることも多いため、単に書面に記載するだけでなく、分かりやすく説明できることが派遣会社の信頼につながります。
7.苦情処理・相談窓口の明示
就業条件明示書には、派遣スタッフからの苦情や相談に対応する窓口についても記載が必要です。派遣先での人間関係や業務内容に関する悩みは、派遣スタッフ自身では解決が難しい場合もあります。
どこに相談すればよいのかが明確になっていれば、問題が大きくなる前に対応でき、派遣会社としてもリスク管理につながります。形式的な記載にならないよう、実際に機能する体制を整えることが重要です。
8.条件変更時の再明示の重要性
派遣期間中に、就業時間や業務内容、派遣期間などが変更になることもあります。その場合、変更内容を速やかに書面で再明示しなければなりません。
「派遣先と話がついているから」「スタッフも了承しているから」と、書面対応を省略してしまうと、後から条件変更の有無を巡ってトラブルになる可能性があります。就業条件明示書は、一度作って終わりではなく、状況に応じて見直す書類であるという意識が大切です。
9.派遣会社が陥りやすい不備事例
社労士として派遣会社の相談を受ける中で多いのが、「古い様式を使い続けている」「法改正が反映されていない」「派遣契約書との内容が食い違っている」といったケースです。
特に、派遣契約書・労働条件通知書・就業条件明示書の内容に不整合があると、行政調査の際に指摘を受けやすくなります。書類ごとに担当者が分かれている場合ほど、全体を横断的に確認する仕組みが必要です。
10.まとめ:正しい理解と運用が派遣会社を守る
就業条件明示書は、派遣スタッフの安心のためだけでなく、派遣会社自身を守るための重要な書面です。派遣法に基づく必須項目を正しく理解し、実態に即した内容で、適切なタイミングで交付することが、トラブル防止の第一歩となります。
「これで本当に大丈夫だろうか」「法改正に対応できているか不安だ」と感じたときは、社会保険労務士に相談することで、実務に即したアドバイスを受けることができます。日々の派遣業務を安定的に運営するためにも、就業条件明示書の見直しを一度行ってみてはいかがでしょうか。
初回のご相談は無料です。お気軽にホームページ問合せからご連絡ください。
労使協定方式は社労士に任せるべき?派遣会社の実務負担を軽減する方法 2026.01.06
派遣会社の経営者や実務担当者の方から、ここ数年とくに多く聞かれるのが
「労使協定方式、正直よく分からないまま毎年更新している」
「この運用で本当に大丈夫なのか不安」
という声です。
働き方改革関連法の施行以降、派遣事業においては“知らなかった”では済まされない実務が急激に増えました。その代表例が労使協定方式です。
本記事では、派遣会社の顧問対応を数多く行ってきた社会保険労務士の立場から、
- なぜ労使協定方式の運用がこれほど重要なのか
- 派遣会社にどれだけの実務負担がかかっているのか
- なぜ社労士に任せる会社が増えているのか
を、できるだけ分かりやすく解説していきます。
そもそも労使協定方式とは何か
労使協定方式とは、派遣社員の待遇を決める方法の一つです。
派遣法では現在、
- 派遣先均等・均衡方式
- 労使協定方式
のどちらかを選択することが義務付けられています。
多くの派遣会社が選択しているのが労使協定方式です。
理由はシンプルで、
- 派遣先ごとに賃金情報を集める必要がない
- 自社で賃金体系をコントロールしやすい
といったメリットがあるからです。
しかし一方で、労使協定方式を選ぶということは、
「法律で定められたルールをすべて自社で守る責任を負う」
ということでもあります。
労使協定方式で派遣会社に求められる実務の多さ
労使協定方式は、協定書を作って終わりではありません。
実際の運用では、次のような実務が毎年発生します。
- 過半数代表者の適正な選出
- 労使協定書の作成・更新
- 職種ごとの賃金水準チェック
- 一般賃金水準(統計データ)との比較
- 派遣社員への説明・周知
- 賃金改定・労働条件明示
- 書類の保存・管理
これらを一つでも誤ると、労使協定方式が無効と判断されるリスクがあります。
実際、労働局の調査では
「形式は整っているが、運用が不十分」
として是正指導を受けるケースも少なくありません。
特につまずきやすい「過半数代表者」の問題
実務で最も多い相談の一つが、過半数代表者の選出です。
- 管理職を選んでしまっている
- 会社が指名している
- 選出方法の記録が残っていない
これらはすべてNGです。
過半数代表者は、
- 管理監督者でないこと
- 会社の意向によらず民主的に選ばれていること
が必要です。
ここが不適切だと、労使協定そのものが無効と判断される可能性があります。
日々の業務に追われる中で、毎年この手続きを正確に行うのは、現実的に大きな負担と言えるでしょう。
賃金水準チェックは専門知識なしでは難しい
労使協定方式では、
「派遣社員の賃金が、同種の業務に従事する一般労働者の平均以上であること」
が求められます。
そのために使うのが、厚生労働省が公表する統計データです。
しかし実務では、
- どの職種を選ぶべきか
- 地域区分はどこまで反映するのか
- 手当や賞与をどう扱うのか
といった判断が必要になります。
ここを誤ると、
「賃金水準が要件を満たしていない」
として指導対象になる可能性があります。
労働局調査で見られるのは“書類”より“運用”
「協定書はちゃんと作ってあります」
そうおっしゃる派遣会社は多いです。
しかし労働局が確認するのは、
- 協定内容どおりに賃金が支払われているか
- 派遣社員にきちんと説明されているか
- 毎年、適正に更新されているか
といった運用の実態です。
形式的に整えていても、実務が追いついていなければ指摘を受けます。
なぜ顧問社労士に任せる派遣会社が増えているのか
ここ数年、全国的に
「労使協定方式は顧問社労士に任せたい」
という派遣会社が増えています。
理由は明確です。
1. 法改正・通達への対応を任せられる
派遣法は、通達や解釈変更が多い分野です。
常に最新情報を追い続けるのは大きな負担ですが、社労士であればその役割を担えます。
2. 実務ミスによるリスクを減らせる
労使協定方式のミスは、
- 是正指導
- 指導後の対応工数
- 最悪の場合、行政処分
につながります。
専門家が関与することで、これらのリスクを大きく下げることができます。
3. 社内の負担が大幅に軽減される
人事・総務担当者が、本来の業務に集中できるようになるのも大きなメリットです。
社労士は「書類作成代行」ではありません
誤解されがちですが、社労士の役割は
「協定書を作る人」
ではありません。
- 実態に合った運用設計
- 調査を見据えた体制づくり
- 担当者が変わっても回る仕組み
こうした部分まで含めてサポートするのが、派遣会社に関わる社労士の仕事です。
まとめ|労使協定方式は“任せる”という選択も一つ
労使協定方式は、派遣会社にとって避けて通れない制度です。
しかし、
- 毎年の更新
- 複雑な賃金判断
- 調査対応の不安
をすべて自社で抱え込む必要はありません。
顧問社労士を活用することで、
- 法令遵守の安心感
- 実務負担の軽減
- 経営に集中できる環境
を手に入れることができます。
「今の運用で本当に大丈夫だろうか?」
そう感じたときこそ、一度立ち止まって体制を見直すタイミングかもしれません。
派遣事業に強い社労士は、単なる外注先ではなく、長く付き合えるパートナーになります。
初回のご相談は無料です。ホームページお問合せよりご連絡ください。
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セミナー開催実績例
- 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
- 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
- 新規採用をお考えの事業者様向け
「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」 - 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
講演について
当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。
講演実績
日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修
「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」
【参加者様からのお声】
- 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
- 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
- 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
- マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。
一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」
【参加者様からのお声】
- メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
- 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
- メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
- 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
- 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
- 株式会社LEC 様 主催
「介護雇用管理研修」業務委託登録講師 - 株式会社フィールドプランニング 様 主催
「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」業務委託主任講師 - 神奈川韓国商工会議所様 主催
経営者セミナー「お役立ち助成金講座
(雇用の確保と5年ルールへの対応策)」 - 日本経営開発協会様 御紹介
株式会社根布工業様 主催
安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ
研修について
当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。
研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)


