転倒労災が増加中!派遣業界で急務となる「疲労対策」とは
2025.10.22
## 目次
1. はじめに:なぜ今「転倒労災」が増えているのか
2. 数字で見る転倒災害の現状
3. 「高齢化」だけでは説明できない転倒増加の真の要因
4. 日本人の8割が「疲れている」—疲労社会ニッポンの実態
5. 疲労が引き起こす“転倒リスク”と“ヒヤリハット”
6. 派遣現場で疲労が蓄積しやすい3つの背景
7. 疲労を放置することがもたらすリスクとは
8. 社労士が提案する「疲労対策」3つの柱
9. 職場でできる具体的な取り組み事例
10. まとめ:疲労対策は「安全対策」であり「未来への投資」
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## 1. はじめに:なぜ今「転倒労災」が増えているのか
ここ数年、「転倒による労災」が増加しているという報告が相次いでいます。
転倒は一見すると“小さな事故”のように思われがちですが、骨折や長期離脱につながることも多く、企業にとっては大きなリスクです。
派遣業界でも、製造・物流・清掃・介護など、多様な現場でスタッフが働いており、
**「転倒災害」は決して他人事ではありません。**
なぜいま、転倒による労災が増えているのか。
その答えは、意外にも「疲労」というキーワードにありました。
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## 2. 数字で見る転倒災害の現状
厚生労働省の統計によると、2014年には約2万7000件だった転倒災害が、
2024年には3万6000件を超え、**10年間で約1万件も増加**しています。
中央労働災害防止協会(中災防)も、「転倒による労災」が現在もっとも課題となっていると警鐘を鳴らしています。
この増加の背景には、「現場作業員の高齢化」が指摘されることが多いですが、
実はそれだけでは説明がつかないのです。
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## 3. 「高齢化」だけでは説明できない転倒増加の真の要因
確かに高齢化は一因です。
筋力の低下やバランス能力の衰えが転倒リスクを高めることは事実です。
しかし、最近では**20〜40代の転倒災害も増加傾向**にあります。
その原因として無視できないのが、「疲労の蓄積」です。
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## 4. 日本人の8割が「疲れている」—疲労社会ニッポンの実態
一般社団法人日本リカバリー協会の最新調査(2025年)によると、
就労者の82.0%が「疲れている」と回答。
この数字は過去最高であり、わずか1年で30万人以上増えたといいます。
さらに、「すごく疲れている」と答えた人の割合も46.3%に上昇。
もはや**「慢性疲労」が社会全体に蔓延している**状態です。
疲労は単なる「だるさ」ではなく、
集中力・判断力・筋肉の反応速度を鈍らせることで、
作業中のミスや事故を誘発します。
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## 5. 疲労が引き起こす“転倒リスク”と“ヒヤリハット”
疲れていると、人は自分の身体感覚を正確に把握できなくなります。
たとえば、「足を上げたつもりが上がっていない」「段差に気づかずつまずく」など。
これは筋肉の疲労だけでなく、**脳の空間認知機能の低下**によるものです。
また、精神的な疲労がたまると注意力が散漫になり、
「ヒヤリハット」や「インシデント」が起こりやすくなります。
労働安全の分野では有名な**ハインリッヒの法則**があります。
1件の重大事故の裏には、29件の軽傷事故と、300件のヒヤリハットがあるという経験則です。
つまり、疲労を放置することは、**重大災害の予兆を見過ごす**ことにつながります。
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## 6. 派遣現場で疲労が蓄積しやすい3つの背景
派遣スタッフの現場は多様であり、
疲労が蓄積しやすい構造的な要因がいくつも存在します。
### ① シフトの不規則化
早朝・夜勤・二交代制など、生活リズムが乱れやすい勤務体系が多く、
睡眠の質が低下しやすい傾向があります。
### ② 現場異動の多さ
派遣スタッフは現場ごとに環境や作業ルールが異なり、
その都度新しい動きや人間関係に適応する必要があります。
心理的な疲労も蓄積します。
### ③ 慢性的な人手不足
人手が足りない現場では、一人あたりの作業負担が大きく、
「無理をしてでもやりきる」文化が根付きやすくなります。
その結果、疲労のサインを見逃してしまうのです。
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## 7. 疲労を放置することがもたらすリスクとは
疲労を軽視すると、転倒事故だけでなく次のようなリスクを招きます。
- **労災リスクの増加**
- **生産性の低下**(集中力・判断力の低下)
- **離職率の上昇**(心身の限界による離脱)
- **企業イメージの悪化**(安全対策への信頼喪失)
派遣スタッフが安心して働ける環境づくりは、
**派遣元・派遣先双方の責任**でもあります。
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## 8. 社労士が提案する「疲労対策」3つの柱
疲労対策は特別なことではありません。
次の3つの柱を意識するだけで、現場の安全性と生産性は大きく変わります。
### ① 休養・睡眠・リラクセーション支援
長時間労働を是正するだけでなく、
休憩の取り方や睡眠改善の工夫を促す取り組みが効果的です。
例えば「リカバリーデー(回復日)」の導入や、
職場での軽いストレッチタイムなど。
### ② 認知・行動トレーニングによるストレス軽減
疲労の背景には心理的なストレスもあります。
簡単なマインドフルネスやセルフケア研修などを通して、
“自分の疲れに気づく力”を育てることが重要です。
### ③ 上司と部下の対話による職場環境の調整
「最近疲れていない?」と声をかけ合える風土をつくること。
この一言が、事故を防ぐ最初のステップになります。
職場ミーティングで疲労度を共有し、
作業配分を調整する取り組みが有効です。
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## 9. 職場でできる具体的な取り組み事例
- **疲労チェックシートの導入**
定期的にスタッフの体調や気分を確認し、数値化して管理。
- **安全朝礼での“疲労トーク”**
その日のコンディションを一言ずつ共有するだけでも効果あり。
- **小休憩ルールの設定**
集中が切れる前に5分の休憩を挟む。
- **労務相談窓口の明確化**
体調不良やストレスを気軽に相談できる仕組みをつくる。
こうした小さな工夫の積み重ねが、
「疲れに強い職場文化」を育てていきます。
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## 10. まとめ:疲労対策は「安全対策」であり「未来への投資」
疲労は見えにくく、つい後回しにされがちです。
しかし、疲労こそが労災・転倒事故の“静かな引き金”になっています。
派遣業界では、派遣スタッフ一人ひとりの安全と健康が
企業の信頼を支える基盤です。
疲労を可視化し、組織全体で取り組むことは、
単なる「健康管理」ではなく、**「安全マネジメント」そのもの**です。
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社労士として現場を見ていると、
疲労対策に取り組む企業ほど、スタッフ定着率も高く、
現場の雰囲気が良くなる傾向があります。
転倒災害を防ぐ最初の一歩は、
「疲れていないか?」と問いかけることから。
その声かけが、職場を守り、企業の未来を支える力になります。
ご相談の際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
【参照記事】
https://news.yahoo.co.jp/articles/bbb1506ba9753f0ff71b544fcd8318f494c8d313?page=2
【参考リンク】
厚生労働省「両立支援におけるストレスマネジメント」
https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/column/column_03.html
#労災防止 #派遣業界 #疲労対策 #安全衛生 #働き方改革 #社会保険労務士
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【参加者様からのお声】
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- メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
- 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
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研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)