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不正アクセスで5600人分の情報流出疑い。派遣会社が取るべきリスク対策とは?   2025.10.31

2025年10月、A社が、約5600人分の個人情報が漏洩した可能性を発表しました。 

原因は、社内で利用していた外部システムへの不正アクセス。対象となったのは、現役社員だけでなく、派遣社員や業務委託者、さらには退職者までを含む広範囲なものでした。 

 

幸い、マイナンバーやクレジットカード情報は含まれておらず、現時点で実害は確認されていないとのことです。 

しかし、名前・入退社日・所属情報といった勤務履歴データが流出するだけでも、企業・個人双方にとって重大な信頼問題となりかねません。 

 

本記事では、このニュースを踏まえ、派遣会社が今すぐ見直すべき「情報管理とリスク対策」について、社会保険労務士の立場から解説します。 

 

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## 1️⃣ 派遣会社にとって「個人情報管理」はビジネスの根幹

 

派遣業は「人」を介して「企業」と「労働力」を結びつけるビジネスです。 

その中心にあるのが、登録スタッフの個人情報。履歴書・職歴・資格・健康情報・給与データなど、取り扱う情報は極めて多岐にわたります。 

 

つまり、個人情報の信頼性=企業の信頼性。 

どれだけ優秀な人材を抱えていても、「この会社に登録したら情報が漏れたらしい」という噂が立てば、スタッフ登録が止まり、取引先企業にも影響が及びます。 

 

派遣会社の経営において、「情報管理体制の整備」は営業力や採用力と同じくらい重要な要素だと言えるでしょう。 

 

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## 2️⃣ 「外部委託しているから安心」は最大の落とし穴

 

今回の事例でも明らかになったように、情報漏洩は「自社が直接管理していないシステム」から発生することが多くあります。 

 

派遣会社でも、勤怠管理システム・給与計算ソフト・クラウド型人材管理ツールなど、外部ベンダーに依存しているケースが一般的です。 

そのため、「システム会社に任せているから大丈夫」と思い込み、社内のリスク認識が薄れてしまう傾向があります。 

 

しかし、個人情報保護法上、責任は“委託元企業”にも及びます。 

つまり、外部ベンダーが原因で漏洩したとしても、「委託した会社の管理責任」が問われる可能性があるのです。 

 

契約書の中に「情報管理体制」や「再委託の禁止・制限」が明記されていないと、いざという時に「どちらの責任か」が不明確になり、被害拡大や対応遅れにつながります。 

 

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## 3️⃣ 情報漏洩の原因は「技術」よりも「運用」にある

 

情報セキュリティというと、最新のシステム導入やIT専門家による監査を想像される方も多いですが、 

実際の漏洩事故の多くは、意外にも「人為的なミス」や「運用の甘さ」が原因です。 

 

例えば次のようなケースが典型です: 

- 退職スタッフの情報を削除せず、放置していた 

- ID・パスワードを複数人で共有していた 

- 外部委託先のアクセスログを定期的に確認していなかった 

- 紙ベースの履歴書や契約書を長期間保管していた 

 

これらはいずれも、特別なハッキングスキルを必要としない、単純な「管理の不備」から起こる事故です。 

つまり、最も重要なのは「システムではなく、運用のルールを作ること」なのです。 

 

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## 4️⃣ 派遣会社が今すぐ見直すべき3つのリスク対策

 

ここでは、派遣会社が現実的にすぐ取り組める対策を3つ紹介します。 

 

### ✅① 情報の保存場所とアクセス権限を明確にする 

「誰が、どの情報に、どのタイミングでアクセスできるのか」―― 

この仕組みを明文化することが第一歩です。 

人事担当者や営業担当者など、職務上必要な範囲に限定し、不要な閲覧を制限します。 

 

また、派遣スタッフ情報がクラウド上にある場合、データが国内外どこに保存されているのかも把握しておくことが重要です。 

 

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### ✅② 外部システム会社との契約内容を精査する 

委託契約書には、以下の項目が含まれているかを必ず確認してください: 

- 情報の再委託禁止または制限 

- 不正アクセスや漏洩発生時の報告義務 

- 契約終了時のデータ消去義務 

- 定期的なセキュリティ点検の実施義務 

 

これらが契約に明記されていないと、万一の際に「報告を受けられない」「情報が残存する」といった問題が起こりえます。 

 

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### ✅③ 情報漏洩発覚時の対応フローを整備する 

漏洩が起きたとき、初動対応を間違えると被害が拡大します。 

誰がどのタイミングで、どの機関に報告し、どのように本人通知を行うのか。 

この手順を事前にマニュアル化しておくことで、慌てず適切な対応が可能になります。 

 

個人情報保護委員会への報告や、社内の緊急対応チーム設置も検討すべきポイントです。 

 

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## 5️⃣ 情報漏洩リスクは「全社で共有」するもの

 

情報セキュリティの責任は、情報システム部門だけのものではありません。 

営業、コーディネーター、人事、経営層など、全員が「個人情報を扱っている」という意識を持つことが大切です。 

 

特に派遣会社では、営業担当が派遣スタッフの履歴書をメール添付で企業に送信するケースも多く見られます。 

しかし、パスワードなしの添付送信や、私用スマホからのデータ送付などは極めて危険です。 

 

社内で統一したルールを設定し、教育を繰り返すことで、リスクを大幅に下げることができます。 

 

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## 6️⃣ 「想定していたかどうか」が信頼を分ける

 

情報漏洩は、どんなに対策をしていてもゼロにはできません。 

重要なのは、「どこまで想定していたか」「どこまで準備していたか」です。 

 

例えば、A社のように被害が確認されていなくても、迅速に公表・遮断対応を行った点は評価できます。 

このように、危機が発生した際の「透明性」「スピード」「誠実さ」が、最終的に企業の信頼を左右します。 

 

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## 7️⃣ 派遣業特有の「多重構造リスク」を意識する

 

派遣業界では、派遣元・派遣先・システム会社・給与代行会社など、複数の事業者が情報を扱う構造になっています。 

この「多重構造」が、情報管理の最大のリスク要因です。 

 

たとえば、派遣元が登録情報をシステム会社に預け、派遣先がその情報を共有する―― 

この間に1つでもセキュリティの弱い箇所があれば、全体が危険にさらされます。 

 

したがって、派遣会社は「自社の中だけでなく、外部も含めた全体のセキュリティ」を把握する必要があります。 

 

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## 8️⃣ 社労士から見た「安全な会社」の共通点

 

実務で多くの派遣会社を支援していると、「情報管理が強い会社」には共通点があります。 

それは、次の3つです。 

 

1️⃣ 経営層がセキュリティを経営課題として扱っている 

2️⃣ 定期的に情報管理チェックリストを更新している 

3️⃣ ミスやトラブルが起きたときに「責める文化」ではなく「共有・改善の文化」がある 

 

つまり、「ルール+風土」がそろって初めて、リスクは低下します。 

 

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## 9️⃣ 中小派遣会社こそ「信頼」で勝負する時代に

 

情報管理への投資は、大企業だけの話ではありません。 

むしろ中小の派遣会社ほど、登録者や取引先からの「信頼」で事業が成り立っています。 

 

「大手だから安心」ではなく、「この会社は誠実に情報を扱っている」という信頼こそが、今後の採用・営業に直結します。 

 

派遣スタッフも、取引先企業も、「安心して任せられる会社」を選ぶ時代です。 

情報保護体制の強化は、もはやコンプライアンス対応ではなく、“競争力の源泉”なのです。 

 

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## 🔟 まとめ:備えは「今」しかできない

 

今回の件は、どの企業にも起こり得る出来事です。 

不正アクセスは防ぎきれなくても、被害を最小限に抑える仕組みを持つことはできます。 

 

今、派遣会社が取るべき行動は次の3つです: 

1️⃣ 管理の「見える化」 

2️⃣ 契約の「明確化」 

3️⃣ 対応の「即時化」 

 

この3つを徹底するだけで、万一の際の信頼失墜リスクを大きく減らせます。 

 

情報管理は「ITの話」ではなく、「人と仕組みの話」です。 

そしてそれは、派遣業における“信頼の土台”です。 

 

このニュースをきっかけに、自社のセキュリティ体制を改めて見直してみてください。 

安心して登録し、安心して働ける環境をつくること――それが派遣会社の最大の責任であり、最大の強みになります。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

 

【参照記事】

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC24A430U5A021C2000000/

 

【サイバーセキュリティの専門家】

合同会社インフォシールド(当事務所のパートナー企業です)

https://infoshield.co.jp/

 

――――――――――――――――――――――――― 

執筆:社会保険労務士 泉文美(派遣業・労務リスクマネジメント専門) 

 

#派遣会社 #個人情報漏洩 #情報管理 #社労士 #リスクマネジメント #コンプライアンス #不正アクセス #労務管理

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セミナー開催実績例
  • 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
  • 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
  • 新規採用をお考えの事業者様向け
    「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
  • 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」

講演について

当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。

講演実績

日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修

「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」

【参加者様からのお声】

  • 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
  • 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
  • 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
  • マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。

一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」

【参加者様からのお声】

  • メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
  • 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
  • メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
  • 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
  • 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
  • 株式会社LEC 様 主催
    「介護雇用管理研修」業務委託登録講師
  • 株式会社フィールドプランニング 様 主催
    「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」業務委託主任講師
  • 神奈川韓国商工会議所様 主催
    経営者セミナー「お役立ち助成金講座
    (雇用の確保と5年ルールへの対応策)」
  • 日本経営開発協会様 御紹介
    株式会社根布工業様 主催
    安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ

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ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。

「働き方改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。

「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」

「SR」 9月号

SR 9月号

ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。

ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。

(第27号 2012年8月6日発売)

元職員が指南する!ハローワークの効果的な利用の仕方

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