派遣会社で急増中の36協定トラブル:全国の是正勧告事例から学ぶポイント
2025.11.20
■ はじめに:いま、日本全国の派遣会社で起きている“36協定トラブル”
ここ数年、日本全国の派遣会社で「36協定の誤記入」が原因となる是正勧告が増えています。
働き方改革以降、労働基準監督署(以下:監督署)のチェック体制は以前と比べて大幅に厳格化。
私自身、社会保険労務士として全国の派遣会社を支援する中で、こうした“ちょっとしたミス”がきっかけで調査が長期化したり、追加の書類提出を求められたりするケースが非常に増えていると感じています。
しかも、誤記入の多くは「わざとではなく、ただの勘違い」。
しかし監督署から見れば、“形式的に正しくない=適正ではない”と判断されることもあり、結果として是正勧告の対象になってしまうのです。
本記事では、日本全国の派遣会社で実際に起きている誤記入のポイントや、監督署が注目している点、運用上の注意点をまとめて解説します。
忙しい現場でも実践できる“ミスを減らす運用のコツ”も併せて紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
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■ 日本全国で多発する「36協定誤記入」の重要ポイント
### 1. 特別条項の記載漏れが圧倒的に多い
全国どの地域でも多いのが、
・特別条項のチェック漏れ
・特別条項の発動要件の誤記
・延長できる回数が空欄
といったミスです。
特別条項は書き慣れていないとどうしても理解が曖昧になりがちですが、監督署は特に細かくチェックします。
とくに「特別条項に関する記載と実際の運用の不一致」は重大な指摘対象。
たとえば、「年6回まで」と書いているのに、実際にはそれ以上に適用していた場合などは、ほぼ確実に是正が入ります。
### 2. 労使代表の選出手続きの誤り
これも日本全国どこでも“毎年のように出る”誤記入ポイントです。
・労使代表の選出方法が正しくない
・選出の証拠が残っていない
・代表者の署名日が協定日より後になっている
など、「形式」の部分でつまずくケースが多発しています。
特に派遣会社は事務所が複数あったり、スタッフが入れ替わりやすいことから、
“毎年同じ代表者に署名してもらう”
という形で固定化してしまい、後で問題になることがよくあります。
### 3. 派遣特有の「誰に適用するのか」で誤解が起きやすい
派遣スタッフが複数の派遣先で働くケースでは、
「36協定の適用範囲」
で誤記が起こりやすい傾向があります。
・派遣元単位で締結すべきところを派遣先単位で記入してしまう
・対象者の範囲を曖昧に書いてしまう
こうした“構造的な誤解”は全国的に非常に多いです。
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■ 日本全国で実際に起きているケーススタディ(社労士の現場から)
ここからは、全国の派遣会社で実際に起きた典型的なケースを紹介します。
### 【ケース1】 特別条項の「限度時間」を誤記して是正勧告
ある派遣会社では、36協定の特別条項部分に「延長できる時間数」を記入し忘れて提出してしまいました。
監督署から「内容が成立していない」と判断され、修正指導と追加報告が必要となりました。
### 【ケース2】 労使代表の選出手続きを省略してしまった
派遣会社では毎年同じスタッフを労使代表としていたのですが、選出の証拠(選挙実施や案内通知)が残っておらず、監督署から「選出手続きのやり直し」を求められたケースがありました。
### 【ケース3】 派遣先ごとに36協定を作成してしまった
地方の派遣会社では、派遣先の担当者に言われるまま「派遣先ごとに36協定を作成」してしまい、監督署調査で修正を求められました。
派遣元での締結が必要であることを理解できていなかったことが原因です。
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■ 36協定誤記入による注意点と、よくある質問(FAQ)
全国の派遣会社から寄せられる質問の多くは、以下のようなものです。
### Q1. 書式を少し変えたらダメですか?
A. 基本的に、厚労省の様式に従うのが安全です。
独自様式でも可能ですが、記載漏れ・誤記のリスクが跳ね上がります。
### Q2. 特別条項は毎年つけたほうがいい?
A. “毎年つける”というより、“必要な場合につける”ことが重要です。
実態に合っていない特別条項は逆にリスクになります。
### Q3. 誤記入していた場合、すぐ修正すべき?
A. はい。誤記を見つけたら、できるだけ早く届出のやり直しを行いましょう。
監督署調査の前に対応しておけば、指摘の重みが全く変わります。
### Q4. 派遣スタッフにも36協定を案内すべき?
A. 内容の周知は義務です。周知方法が曖昧だと是正対象になります。
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■ 日本全国での「適正管理のメリット」
36協定を“正しく作成し、正しく運用”すれば、派遣会社には大きなメリットが生まれます。
### 1. 監督署調査がスムーズに進む
誤記入があると、調査は長期化します。
逆にしっかり管理された36協定は、調査の短縮に直結します。
### 2. 労働時間管理の精度が上がる
36協定は単なる書類ではなく、労働時間の上限をコントロールする重要なツール。
正しく管理することで、残業の把握や健康管理も行いやすくなります。
### 3. 派遣先からの信頼が高まる
派遣先企業は労務リスクを嫌います。
36協定の整備・運用がしっかりしていると、「安心して任せられる会社」という評価につながります。
### 4. 全国どこでも通用する運用ルールになる
労務管理は地域差が出にくい分野です。
全国展開している派遣会社にとって、統一的なルールを作ることは大きな強みになります。
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■ まとめ:36協定の誤記入は“仕組み”で防げる
日本全国の派遣会社で増加している36協定の誤記入問題。
その多くは、
「知識不足ではなく、運用の仕組み不足」
によって起きています。
・労使代表の選出手続き
・特別条項の記載
・対象範囲の明記
・周知方法
これらを1つずつ仕組み化すれば、誤記入のリスクは大幅に低減できます。
私自身、全国の派遣会社を支援する中で、
“たった一枚の協定書が企業運営全体の信用に大きく関わる”
ことを何度も見てきました。
だからこそ、今のうちに見直しを行う価値があります。
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■ 社会保険労務士に相談するメリット(全国対応)
・全国の監督署の傾向を把握したアドバイスが受けられる
・自社に合った36協定の作成・運用方法を整えられる
・誤記入リスクを減らすチェック体制を構築できる
・36協定以外の労務リスクもまとめて改善できる
オンライン対応も可能なので、地域に関係なくサポートを提供できます。
36協定の誤記入が気になる方は、一度専門家に相談していただくと安心です。
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ご相談の際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
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当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。
セミナー開催実績例
- 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
- 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
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「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」 - 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
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当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。
講演実績
日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修
「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」
【参加者様からのお声】
- 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
- 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
- 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
- マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。
一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」
【参加者様からのお声】
- メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
- 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
- メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
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- 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
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「介護雇用管理研修」業務委託登録講師 - 株式会社フィールドプランニング 様 主催
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安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ
研修について
当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。
研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)


