マージン率等の情報提供」は作成して終わりじゃない!派遣会社が押さえるべき公開義務とは
2025.10.08
今回は、派遣会社の皆さまにとって毎年欠かせない業務、
「派遣事業報告書」および「マージン率等の情報提供」について、
特に“インターネットでの公開義務”をテーマにお話しします。
実務の現場では、「マージン率等の情報提供書を作ったから終わり」と思っている方がまだまだ多いのが現状です。
しかし、実はそれだけでは義務を果たしたことにはなりません。
今回は、その理由と、正しい対応方法を具体的に解説します。
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## 1. 「マージン率等の情報提供」って何のためにあるの?
まず最初に、「マージン率等の情報提供」とは何かをおさらいしましょう。
派遣会社は毎年、派遣労働者の数や派遣料金などをまとめた「派遣事業報告書」を労働局に提出します。
その内容の一部を基に、「マージン率」や「教育訓練の実施状況」などをまとめた資料を社外に公開する義務があります。
この「情報提供」は、派遣労働者や派遣先企業に対して、
派遣会社がどのような運営をしているのかを透明に示すための仕組みです。
たとえば、
・派遣料金のうちどれくらいが派遣スタッフ本人の賃金として支払われているのか
・教育訓練や福利厚生の内容はどうなっているのか
といったことを、社会に対して明らかにするためのものです。
つまり「情報提供」は“信頼の証”。
これを正しく行うことで、派遣会社としての信用力が上がり、
結果的に派遣先・派遣スタッフから選ばれる会社になっていくのです。
---
## 2. 「作って終わり」はNG!“提供”とは「広く一般に公開すること」
では、「情報提供」を作成したあと、どうすればいいのでしょうか。
「派遣報告書控えと一緒に保管しておけばいいのでは?」
そう思っている方も少なくないはずです。
しかし、それでは“情報提供”とは言えません。
厚生労働省の定義する「情報提供」とは、
単に資料を作成して持っているだけではなく、
「誰でも自由に見られるようにすること」を意味します。
つまり、「広く一般に」公開することが求められます。
具体的には、
・自社社員だけが閲覧できる共有フォルダ
・派遣先への限定メール送信
・社内掲示板への掲載
――これらはいずれも「情報提供」とはみなされません。
対象は“世の中のすべての人”。
派遣スタッフ、派遣先企業、求職者、そして第三者までも、
誰もが自由に閲覧できるようにする必要があるのです。
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## 3. 「インターネットでの公開」が原則になった理由
ここでポイントとなるのが、「どのように情報を提供するか」です。
以前は、
「自社オフィスに書類を備え付ける」など、紙での提供も認められていました。
しかし現在は、厚生労働省の方針として「原則インターネットによる公開」が求められています。
派遣報告書の控え(第5面)にも、
「情報提供の方法」として次の3つの選択肢があります。
- インターネット
- 書類の備え付け
- その他
一見、どれを選んでもよいように見えますが、
実際には「原則としてインターネットの利用による情報提供が必要」と明記されています。
つまり、この欄はアンケートではなく“正解のある問題”。
「インターネット」に〇を付けるのが正しい対応なのです。
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## 4. 「HPがない会社はどうすればいいの?」という疑問
「うちはホームページを持っていない。公開のためにHPを作らなきゃいけないの?」
――そんな疑問を持つ方も多いと思います。
結論から言うと、ホームページがなくても大丈夫です。
厚生労働省が提供している「人材サービス総合サイト」を使えば、
無料でインターネット上に情報を掲載することができます。
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## 5. 「人材サービス総合サイト」での掲載手順
では、その具体的な方法を見ていきましょう。
① まずは、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」にアクセスします。
👉 https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/JinzaiWeb/
② トップページにある「掲載の申込を行う場合」から、
「労働者派遣・職業紹介事業共通」をクリックします。
③ 画面が開いたら、
「マージン率等の情報提供」の内容を入力します。
あるいは、PDF化した資料をアップロードする方法も可能です。
(PDF添付のほうが簡単でおすすめです。)
④ 会社の情報(派遣許可番号、派遣元責任者氏名など)を入力し、「申込」をクリック。
⑤ 厚生労働省の職員が内容を確認し、問題がなければ公開されます。
ただし、即日反映ではなく、反映まで数週間~数か月かかることもあるため、余裕を持って申請しておきましょう。
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## 6. 掲載後の確認方法
公開されたかどうかは、次の手順で確認できます。
1️⃣ 「人材サービス総合サイト」のトップページで「検索を行う場合」をクリック
2️⃣ 「労働者派遣事業」を選択
3️⃣ 県名や社名を入力して検索
4️⃣ 検索結果に自社名が表示されたら「詳細情報」をクリック
ここに、自社が申請した「マージン率等の情報提供」が掲載されていれば完了です。
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## 7. 自社HPで公開する場合の注意点
もちろん、自社ホームページで公開する方法もOKです。
ただし、注意が必要なのは「誰でも見られる状態」にしておくこと。
たとえば、
- IDやパスワードを入力しないと見られない
- 社員専用ページに掲載している
といったケースは「情報提供」として認められません。
一番確実なのは、
① 自社HPに掲載する
② 人材サービス総合サイトにもそのURLを登録する
この2ステップです。
実際に、労働局から「自社HPだけでなく、人材サービス総合サイトにも掲載してほしい」と依頼されることもあります。
URLを入力するだけで済むので、両方やっておくのが安心です。
---
## 8. 情報更新を忘れないで!
「一度掲載したら終わり」と思っていませんか?
実は、ここにも落とし穴があります。
マージン率等の情報提供は、毎年の派遣事業報告書に基づいて作成するもの。
したがって、毎年の更新が必要です。
実際、数年前のデータをそのままにしている会社も少なくありません。
しかし、これは労働局の調査で指摘されることがあります。
報告書の作成・提出後は、
「控えの返却」→「マージン率等の情報提供作成」→「公開」までを
一連の流れとして、スケジュールに組み込んでおきましょう。
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## 9. 派遣スタッフへの周知も忘れずに
インターネットに掲載しただけでは、“社内周知”としては不十分です。
派遣スタッフに対しても、
「公開した旨」と「URL」をメール等で伝えることが望ましいです。
「どこに載っているかわからない」では意味がありません。
スタッフの方々にとっても、
「自分の働いている会社は透明性がある」と感じられることが大切です。
これは単なる義務対応ではなく、
企業イメージや信頼性を高めるうえで非常に有効です。
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## 10. まとめ:「公開」までが業務。透明性こそ信頼の第一歩
ここまでを整理すると、派遣報告書関連の流れは次のようになります。
1️⃣ 派遣報告書に必要な情報を集計(5月頃まで)
2️⃣ 派遣事業報告書を労働局へ提出(6月1日〜30日)
3️⃣ 労働局からの照会に対応
4️⃣ 控え返却後、「マージン率等の情報提供」を作成
5️⃣ 人材サービス総合サイトまたは自社HPで公開
この「⑤」までが一連の業務です。
ここまで完了して、ようやく「派遣報告書業務が終わった」と言えます。
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派遣業務は年に一度の定期的な対応ですが、
ちょっとした勘違いや見落としが「法令違反」につながることもあります。
しかし、手順を理解してしまえば決して難しくはありません。
「マージン率等の情報提供」を正しく公開することは、
単なる義務ではなく、
「誠実に事業を運営しています」という会社の姿勢を社会に示すチャンスです。
透明性を大切にし、
派遣スタッフ・派遣先・行政のすべてから信頼される会社を目指しましょう。
お困りの際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。
初回のご相談は無料です。
※参照記事リンク)
https://jinzai-biz.com/private_article/10741/
※参照)厚生労働省「派遣会社のマージン率等について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00013.html
#派遣業界 #マージン率 #社会保険労務士 #人材サービス総合サイト #労働局対応 #コンプライアンス #派遣事業
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講演実績
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泉文美 講師紹介ページ
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研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)