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NEW 未払い賃金で監督指導急増!派遣会社が見直すべき労使協定と労務管理   2025.09.17

## 1. 令和6年、賃金不払の監督指導が過去最多水準に

厚生労働省が公表した「令和6年 賃金不払に関する監督指導結果」によると、2024年に労働基準監督署が取り扱った賃金不払の事案は **22,354件** にのぼりました。 

前年より **1,005件増** と大幅な増加です。対象労働者は **185,197人**、未払い総額は **172億1,113万円** に達しています。 

 

さらに注目すべきは、そのうち **約96%が支払い指導によって解決された** という点。つまり「払っていなかった」という事実が確認され、使用者側が是正したことを意味します。 

これは「未払い賃金のリスクはどの企業にも現実に存在する」ということを示しています。

 

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## 2. 未払い賃金が発生する典型的な背景

賃金不払と聞くと「悪質な企業だけの問題」と思われがちです。ですが、実際には **計算方法の誤りや認識のずれ** が大半の原因を占めます。 

 

例えば、 

- 労働時間の端数処理が曖昧になっていた 

- 割増賃金(残業・深夜・休日)の計算式を誤っていた 

- 就業規則や労使協定の内容と実際の支給額に差があった 

こうした“小さなズレ”が積み重なり、結果的に「未払い」と判断されます。 

 

派遣会社は複数の派遣先で就労する労働者を抱えるため、労働時間管理や賃金計算の煩雑さが増し、他業種よりもリスクが高いと言えるでしょう。

 

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## 3. 派遣会社に特有のリスクポイント

監督指導において、派遣会社が指摘を受けやすいのは以下の点です。

 

### (1) 労使協定方式の誤解

派遣会社は「同一労働同一賃金」の観点から、派遣労働者の賃金を **労使協定方式** で決めることが認められています。 

しかし、労使協定で定めた水準より低い賃金を支給した場合、即「未払い」と判断されます。 

「ほぼ同じ金額だから大丈夫」という感覚は通用しません。1円でも不足すれば不払扱いです。

 

### (2) 労働時間の把握不足

派遣先のシステムに依存し、派遣元での確認が甘くなるケースがあります。打刻忘れや休憩時間の扱いなど、わずかな齟齬でも労働基準監督署は厳しくチェックします。

 

### (3) 割増賃金の誤計算

残業手当や深夜割増を「固定残業代」として包括している場合でも、法定通りの計算になっていないと指摘されます。派遣先が支払う料金と派遣元の計算が一致していないケースも少なくありません。

 

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## 4. 「賃金の消滅時効3年」の重さ

賃金請求権の消滅時効は当面の間「3年」とされています。 

つまり、監督署の調査で未払いが発覚した場合、**過去3年分** をまとめて支払う必要があります。 

 

例えば、月額1万円の未払いがあったとします。 

3年間・10人分となれば、総額360万円。 

割増賃金や延滞金が加われば、さらに大きな負担となります。 

 

派遣会社にとっては、この金額は決して小さくありません。事業継続そのものに影響するリスクです。

 

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## 5. 派遣会社が今すぐ点検すべき労務管理

では、具体的に何を確認すべきでしょうか。ポイントは次の3つです。

 

1️⃣ **労使協定の内容と実際の支給額の突合** 

職種の選定や協定賃金が正しく反映されているかを定期的に確認する。 

 

2️⃣ **労働時間の管理フローを二重チェック** 

派遣先からの勤怠データと、派遣元の記録を照合し、差異があれば即修正する。 

 

3️⃣ **割増賃金計算式の棚卸し** 

システム任せにせず、法定基準と照らし合わせて正しく算出できているかを確認する。 

 

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## 6. 未払い賃金を防ぐための実務改善

ここからは、実際に派遣会社で導入されている改善策をいくつか紹介します。

 

- **チェックリストの作成** 

労使協定締結から賃金支給までの流れを可視化し、担当者が確認できる体制を整える。 

 

- **給与システムの定期メンテナンス** 

計算ロジックが最新の法令に対応しているか、外部の専門家に確認してもらう。 

 

- **管理者研修の実施** 

現場の担当者が「割増の基準」「休憩のカウント方法」を理解していなければ、システムだけでは不十分。 

 

こうした小さな積み重ねが、数百万円規模のトラブルを防ぎます。

 

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## 7. 監督署が注視する視点

監督署の調査は「意図的に不払をしたかどうか」ではなく、「法令に沿って支払われているかどうか」に焦点を当てています。 

つまり、「悪気はなかった」は理由になりません。 

形式上の書類、実際の計算、労使協定の内容が一致しているかが問われます。 

 

派遣会社は特に「労使協定方式の理解度」が差を生むポイント。監督署も重点的にチェックする傾向にあります。

 

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## 8. 経営に直結するリスクとして捉える

未払い賃金が発生すると、単に「お金を支払えば済む」問題ではありません。 

 

- 労働者との信頼関係の喪失 

- 派遣先からの信用低下 

- 行政指導による reputational damage(評判リスク) 

 

これらは経営に直接響きます。特に派遣ビジネスは「人材と信頼」が資産です。 

一度失った信頼を取り戻すには、時間もコストもかかります。

 

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## 9. 社労士として見てきた現場の声

私自身、これまで多くの派遣会社から労務相談を受けてきました。 

その中で実感するのは「問題が表面化する前に相談してくれていれば防げたのに」というケースの多さです。 

 

例えば、 

- 協定書の文言を微調整するだけでリスクを下げられた 

- 勤怠システムの設定を直すだけで誤計算が解消できた 

- 年1回の棚卸しで重大トラブルを回避できた 

 

こうした事例は少なくありません。 

「ちょっとした点検」が将来の大きな損失を防ぎます。

 

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## 10. まとめ:今こそ「労務管理の再点検」を

令和6年の監督指導結果は、派遣会社にとって「他人事ではない」ことを強く示しました。 

 

- 未払い賃金の監督指導は増加傾向 

- 協定のわずかな誤差も「不払」と判断される 

- 消滅時効は3年分、経営に直結する金額リスク 

 

これらを踏まえれば、いま取り組むべきは **労使協定・労働時間管理・割増計算の徹底点検** です。 

 

「うちの会社は大丈夫かな?」と少しでも思われたら、ぜひ社内で確認を進めてみてください。 

信頼を守るための労務管理は、コストではなく投資です。

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

※参考リンク)

厚生労働省「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果(令和6年)を公表します」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_60431.html

NEW 派遣会社が知っておくべき最低賃金引き上げと国の新支援策とは?   2025.09.16

## 1. はじめに:最低賃金引き上げの背景 

 

ここ数年、日本の最低賃金は毎年のように引き上げが続いています。 

政府は「2030年代半ばまでに全国平均で時給1,500円を目指す」との方針を掲げており、企業にとって賃上げは避けられない大きな流れとなっています。 

 

人手不足が深刻化するなか、最低賃金の引き上げは「人材確保のための必須条件」ともいえる状況です。 

しかし一方で、中小企業にとっては「人件費増による経営負担」という大きな課題も突きつけられています。 

 

このような環境変化の中で、派遣会社もまた例外ではありません。派遣スタッフの賃金は最低賃金の影響を直接受けるため、派遣料金の見直しや取引先企業との交渉が必須となってきます。 

 

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## 2. 経産省が発表した「生産性向上支援センター」とは 

 

経済産業省は2025年4月から、全国47都道府県に「生産性向上支援センター(仮称)」を設置すると発表しました。 

これは中小企業が直面する賃上げ負担に対応するため、経営改善やデジタル化を通じて「生産性向上」を後押しする取り組みです。 

 

各センターは、すでに各地にある「よろず支援拠点」に併設される予定で、中小企業診断士などの専門家が常駐し、相談対応やツール活用の支援を行います。 

 

対象業種は飲食・宿泊業をはじめ、人件費の影響を受けやすい業界ですが、幅広い中小企業が利用可能となる見通しです。 

 

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## 3. なぜ中小企業の生産性支援が重要なのか 

 

最低賃金が引き上げられると、単純に「賃金を上げる」だけでは企業の体力は持ちません。 

そこで必要になるのが「生産性向上」、すなわち「限られた人員と時間でより多くの成果を生み出す仕組みづくり」です。 

 

たとえば、ITツールの導入による事務作業の効率化、業務フローの見直し、従業員教育によるスキルアップなどが挙げられます。 

国の支援センターは、こうした改善策を中小企業が進めやすくするための伴走支援を行うのです。 

 

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## 4. 派遣業界への直接的な影響 

 

派遣会社にとって最低賃金の引き上げは、すぐに「派遣スタッフの賃金改定」として跳ね返ってきます。 

特に地域によっては、これまで最低賃金ギリギリで働いていたスタッフの時給を引き上げざるを得ず、利益率が圧迫されるケースが増えるでしょう。 

 

さらに、派遣法上「同一労働同一賃金」が適用されるため、派遣先の従業員とのバランスも考慮しなければなりません。 

結果として「派遣料金の見直し」「取引先への説明と交渉」が避けられなくなるのです。 

 

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## 5. 派遣先との単価交渉に必要な視点 

 

単価交渉は、派遣会社にとって常にセンシティブなテーマです。 

最低賃金の引き上げを理由に派遣料金を上げたいと考えても、派遣先企業からは「コスト増は困る」という反応が返ってくる可能性があります。 

 

ここで重要になるのは「根拠と説明」です。 

- 最低賃金の法改正という“外部要因”であること 

- 賃上げがスタッフの定着率や質の向上につながること 

- 他社動向や国の施策を踏まえた妥当性 

 

これらをデータとストーリーで示すことで、派遣先企業も納得しやすくなります。 

 

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## 6. デジタル化と業務効率化の重要性 

 

派遣会社自身も「生産性向上」を避けて通れません。 

人材管理や労務処理、請求業務など、多くの事務作業を抱える業界だからこそ、デジタル化による効率化が成果を大きく左右します。 

 

たとえば、 

- 勤怠管理システムの自動化 

- 電子契約やクラウド文書管理 

- AIによるマッチング支援ツール 

 

これらを導入することで「人件費増=利益減」の構図を少しでも緩和することができます。 

 

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## 7. 新センターの間接的なメリット 

 

経産省の新センターは直接的に派遣会社を対象とはしていません。 

しかし、派遣先である中小企業が支援を受けて経営力を高めれば、結果的に「派遣料金を受け入れる余地」が広がります。 

 

つまり、派遣会社にとっては「派遣先と一緒に国の支援を活用する」という姿勢が大切です。 

「御社も生産性向上支援センターを利用されてはどうですか?」と情報を共有することで、派遣先との信頼関係が強まる効果も期待できます。 

 

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## 8. 社労士が考えるリスクとチャンス 

 

社労士として現場を見ていると、派遣会社にとって「リスク」と「チャンス」は表裏一体です。 

 

リスク: 

- 利益率の低下 

- 契約単価交渉の難航 

- 人材流出リスクの増大 

 

チャンス: 

- 派遣スタッフの定着率アップ 

- 派遣先との信頼関係強化 

- デジタル化による業務改善と差別化 

 

賃上げを単なる負担としてとらえるのではなく、「業界全体の底上げ」として取り組めるかどうかが、これからの派遣会社の成長を左右するポイントです。 

 

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## 9. 派遣会社が今から準備すべき3つの行動 

 

1️⃣ **賃金改定ルールの確認** 

最低賃金の地域差や派遣スタッフごとの影響を把握し、早めに対応方針を決めることが大切です。 

 

2️⃣ **単価交渉のデータ整備** 

賃金改定や社会保険料負担の増加分を数値化し、派遣先への説明資料を用意しておきましょう。 

 

3️⃣ **自社の労務・業務効率化** 

勤怠管理や給与計算のデジタル化を進め、少ない人員でも運営できる体制を整えることが必須です。 

 

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## 10. まとめ:賃上げ時代を「選ばれる派遣会社」への転機に 

 

最低賃金の引き上げは、派遣会社にとって避けられない現実です。 

しかし、国の支援策や派遣先企業との協働を通じて「ただのコスト増」ではなく「信頼関係を強化し、選ばれる派遣会社になるための転機」ととらえることができます。 

 

賃上げの波をどう乗り越えるかは、派遣会社の戦略次第です。 

一歩先を見据え、国の支援を活用しながら、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

※参照記事)https://news.yahoo.co.jp/articles/683d7f3a4400a511a84e19fc9558d686b33582ea

特定技能の誤用が招く不法就労|派遣会社が知っておきたい注意点   2025.09.12

### 1. 外国人派遣をめぐる逮捕事例が発生

2024年9月、人材派遣会社とクリーニング工場の経営者らが入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕されました。 

農業の特定技能を持つ外国人を工場に派遣し、資格外の労働をさせたとされています。 

調査では、約120人を違法に派遣し、仲介料などで7,000万円を得ていたとみられています。 

 

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### 2. 人手不足が背景にある現実

クリーニング工場側は「深刻な人手不足だった」と説明。 

一方、派遣会社社長は「農業の仕事がない時はクリーニングで働けると思った」と語りました。 

制度の誤解と現場の逼迫が重なり、不法就労につながったケースです。 

 

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### 3. 特定技能制度の基本をおさらい

特定技能とは、一定の専門性・技能を持つ外国人が人手不足分野で就労できる制度です。 

重要なのは「資格ごとに従事できる業務が厳格に決まっている」という点。 

農業の特定技能を持つ人材を工場に回すことは認められていません。 

 

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### 4. 資格外活動のリスクとは

在留資格と異なる業務に従事させると、それは「資格外活動」となります。 

資格外活動許可がなければ不法就労となり、派遣会社・受け入れ先双方が処罰対象になります。 

刑事罰だけでなく、企業の信用失墜につながる点が最大のリスクです。 

 

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### 5. 派遣会社が特に注意すべきポイント

派遣会社としては以下を徹底する必要があります。 

- 在留カードの確認を必ず行う 

- 就労可能な業務内容を正しく理解する 

- 他業種への一時的な回しは絶対に避ける 

 

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### 6. 違法派遣がもたらす経営リスク

一度でも不法就労助長の疑いをかけられると、取引先からの信頼は一気に失われます。 

さらに行政処分や刑事罰が科され、事業継続が困難になることもあります。 

 

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### 7. 適法運用が信頼を生む

「少し柔軟に」という現場判断が、長期的には最大の損失になります。 

逆に、制度を正しく守る会社は取引先から「安心して任せられる」と評価され、結果的にビジネスの安定につながります。 

 

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### 8. コンプライアンス強化のための実務対応

派遣会社ができる対策は明確です。 

- 二重チェック体制を整備する 

- 定期的な法令研修を実施する 

- 外部専門家による監査を導入する 

 

こうした仕組みが、不測のリスクを防ぐ有効な手段になります。 

 

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### 9. 派遣業界における今後の課題

人手不足が深刻化するなか、外国人材の活用は今後ますます増えます。 

だからこそ、制度理解とコンプライアンス体制の整備が業界全体での課題です。 

 

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### 10. まとめ:派遣会社に求められる姿勢

人手不足を理由に制度を誤用すれば、取り返しのつかない事態になります。 

「人手不足だからこそ、適法に運用して信頼を積み重ねる」。 

この姿勢が、派遣会社の持続可能な成長に直結します。 

 

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👉派遣会社として外国人雇用に不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。 

ルールを守りながら人材を活かすことで、企業も外国人も安心できる環境が築けます。 

 

 

 

 

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タイトル:特定技能の誤用が招く不法就労|派遣会社が知っておきたい注意点 

 

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### 1. 外国人派遣をめぐる逮捕事例が発生 

 

2024年9月、国内の人材派遣業界に衝撃的なニュースが報じられました。 

山梨県の人材派遣会社と、取引先であるクリーニング工場の経営者らが、入管法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕されたのです。 

 

彼らは、農業分野で「特定技能」の在留資格を持つ外国人をクリーニング工場に派遣し、本来認められていない業務に従事させていました。調べによると、派遣された人数は約120人、仲介料などとして7,000万円にのぼる収益を得ていたとされています。 

 

ニュースだけを見ると、「なぜそんな危険なことを?」と思うかもしれません。 

しかし、現場の声を拾うと「農業の仕事がない時にクリーニング業で働いても大丈夫だと思った」「人手不足で背に腹は代えられなかった」という、ある意味“切実な”事情が背景にあったことも見えてきます。 

 

派遣会社にとっては他人事ではありません。制度の誤解や安易な判断が、大きなリスクへと直結することを示した象徴的な事例といえるでしょう。 

 

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### 2. 人手不足が背景にある現実 

 

派遣業界に携わる方なら、多かれ少なかれ感じているのが「深刻な人手不足」です。 

特に製造業やサービス業では、慢性的に人材が集まりにくく、現場の負担は年々増しています。 

 

クリーニング工場の取締役は「深刻な人手不足だった」と供述しており、この言葉は現場の実情をよく表しています。 

一方、派遣会社の社長は「農業の仕事がない時期は他業種で働けると考えた」と説明しました。 

つまり、“繁閑対応”として人材を柔軟に回したつもりだったのです。 

 

しかしこの「柔軟な判断」こそが、制度違反に直結してしまいました。 

人手不足の状況が長く続くなかで、ルールよりも現場対応を優先してしまうことは珍しくありません。 

ですが、外国人雇用に関しては「法律で定められた範囲を一歩でも踏み外せば不法就労」という厳格な現実があります。 

 

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### 3. 特定技能制度の基本をおさらい 

 

ここで、特定技能制度をあらためて整理しておきましょう。 

 

特定技能とは、日本での人手不足が特に深刻な14分野(農業・介護・外食・宿泊・建設など)において、一定の技能を持つ外国人が就労できる在留資格です。 

ポイントは「資格ごとに従事できる業務が厳格に定められている」ということ。 

 

たとえば「農業」の特定技能を持つ方は、農業関連の仕事にしか就けません。 

仮に「工場の仕事が農業に近いから大丈夫だろう」といった解釈は一切認められません。 

逆に、同じ外国人でも「特定技能(外食)」を持っていればレストランで働けますが、農業や工場に行くことはできないのです。 

 

資格は「業種ごと」にきっちり線引きされているため、他業種への“回し”は完全にアウトです。 

これが特定技能制度の大前提であり、派遣会社が最も理解しておくべき基本ルールなのです。 

 

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### 4. 資格外活動のリスクとは 

 

今回の事件で問題になったのは「資格外活動」に当たる点です。 

 

外国人が持つ在留資格と異なる分野で働くことを「資格外活動」と呼びます。 

入管に事前申請し、特別な許可を得れば可能な場合もありますが、原則として別業種への従事は認められません。 

 

もし無許可で資格外活動を行えば、それは「不法就労」となり、本人だけでなく派遣会社や受け入れ先企業も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。 

 

罰則は重く、個人はもちろん法人としての処罰もあり得ます。 

加えて、行政指導や取引先からの契約解除といった社会的制裁も免れません。 

派遣業は信用がすべてのビジネスモデルですから、一度失った信頼を取り戻すのは容易ではありません。 

 

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### 5. 派遣会社が特に注意すべきポイント 

 

派遣会社が同じ過ちを避けるためには、以下の点を必ず押さえる必要があります。 

 

- **在留カードの確認を徹底する** 

表面的な情報だけでなく、在留資格の種類と就労可能範囲を必ずチェックしましょう。 

 

- **業務内容の範囲を正確に把握する** 

求人票や現場の実務内容が、在留資格で認められた範囲と一致しているかを確認することが重要です。 

 

- **繁閑対応での“他業種回し”は絶対にしない** 

農業資格を持つ人を工場に回す、介護資格を持つ人を飲食店に回す、こうした対応は一発でアウトです。 

 

- **現場任せにせず管理部門で二重チェックを行う** 

現場が混乱していると、安易な判断が出やすくなります。管理部門が最終確認を行う仕組みを必ず整備しましょう。 

 

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### 6. 違法派遣がもたらす経営リスク 

 

違法派遣は「法律違反」というだけではなく、経営そのものを揺るがすリスクを伴います。 

 

- **信用の失墜** 

取引先は当然ながらコンプライアンス違反を嫌います。違反が一度でも発覚すれば契約解除は避けられません。 

 

- **行政処分・刑事罰** 

派遣元も派遣先も責任を問われ、経営者が逮捕されるリスクすらあります。 

 

- **従業員への悪影響** 

不安定な雇用環境に従業員が不信感を抱き、離職につながることもあります。 

 

派遣会社は「法令遵守を徹底している」という点そのものが取引先への最大の価値提供であると考えるべきです。 

 

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### 7. 適法運用が信頼を生む 

 

違法リスクを恐れて消極的になる必要はありません。 

むしろ「制度を正しく理解し、適切に運用できているかどうか」が派遣会社の強みになります。 

 

実際、外国人材を適法に管理している派遣会社ほど、取引先から「安心して任せられる」と評価されます。 

法律を守っていること自体が一種のブランディングとなり、競合との差別化要因にもなるのです。 

 

「少しくらいなら大丈夫」という発想は、短期的には便利でも、長期的には必ず損失を招きます。 

コンプライアンスを徹底した会社ほど、結果的に安定的に成長できるのです。 

 

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### 8. コンプライアンス強化のための実務対応 

 

派遣会社ができる現実的な対策をまとめてみます。 

 

1. **二重チェック体制の整備** 

営業担当と管理部門、両方が在留資格と業務内容を確認する仕組みを設けましょう。 

 

2. **定期的な法令研修** 

スタッフやマネージャーに対し、外国人雇用に関するルールを定期的に周知することが大切です。 

 

3. **マニュアル化と情報共有** 

繁閑対応や派遣先変更の際に「何を確認すべきか」を文書化しておくと、属人的な判断を防げます。 

 

4. **外部専門家による監査** 

社会保険労務士などの専門家に定期的にチェックしてもらうことで、客観的なリスク把握が可能になります。 

 

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### 9. 派遣業界における今後の課題 

 

日本の労働市場は少子高齢化によって人手不足が構造的に続いています。 

そのため、外国人材の受け入れは今後さらに増えるでしょう。 

 

しかし同時に、制度が複雑であるがゆえに、誤用や違反のリスクも高まります。 

「知らなかった」「現場が勝手にやった」という言い訳は通用しません。 

 

業界全体としても、外国人材を適切に受け入れる仕組みづくりが急務です。 

これは派遣会社だけでなく、受け入れ先企業や行政も含めた共通の課題といえるでしょう。 

 

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### 10. まとめ:派遣会社に求められる姿勢 

 

今回の事件は、派遣業界にとって大きな教訓です。 

「人手不足だから仕方ない」という発想は、結果的に会社の存続すら危うくします。 

 

だからこそ大切なのは、 

**「人手不足だからこそ、適法に運用して信頼を積み重ねる」**という姿勢です。 

 

派遣会社が外国人材を扱う際は、制度理解と管理体制の強化が不可欠です。 

法令順守は単なる義務ではなく、事業を守り成長させるための“最大の戦略”でもあります。 

 

もし「うちの会社は大丈夫だろうか?」と少しでも不安があるなら、今が立ち止まって見直す絶好の機会です。 

外部の専門家に相談することで、リスクを早めに把握し、安心できる体制を整えることができます。 

 

人手不足と向き合う派遣会社にとって、外国人材の活用は大きなチャンスです。 

だからこそ、正しく制度を理解し、適法に運用することが、未来の安定と信頼を築く最短ルートになるのです。 

 

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👉外国人雇用のルールや派遣労務管理に不安がある方は、ぜひ専門家にご相談ください。 

ルールを守りながら外国人材を活用することは十分に可能です。 

安心して働ける環境を整えることが、会社の成長と人材の定着、そして業界全体の信頼につながります。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

※参照記事)

https://news.yahoo.co.jp/articles/803228aefeb11984060cb0b59654b83ebe7f773a

 

労働者派遣業の倒産が過去最多ペース!派遣会社が生き残るための戦略とは   2025.09.09

## 1. 労働者派遣業の倒産が急増している現状

 

2025年1月から8月までに発生した労働者派遣業の倒産は59件。 

前年同期比で55%以上の増加となり、このままのペースが続けば通年で90件前後に達すると予測されています。 

 

※参照記事)https://news.yahoo.co.jp/articles/741c2f142d4eaaaf16e761ce42b0098146e0bed0

 

これは2014年の85件を超え、**過去最多の倒産件数**となる可能性が非常に高いのです。 

 

派遣会社を経営する皆さまにとって、この数字は決して他人事ではありません。 

「なぜこれほど倒産が増えているのか」「自社は大丈夫なのか」と不安を抱く経営者も多いのではないでしょうか。 

 

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## 2. 過去最多ペースの背景にある要因

 

倒産増加の背景には、いくつもの要因が複雑に絡み合っています。主な要因を整理すると次の通りです。 

 

- **人材確保の難しさ**:労働人口が減少するなかで、派遣スタッフの採用自体が困難。 

- **賃上げによる人件費上昇**:物価高や政府の方針による賃上げ機運の広がり。 

- **コロナ禍からの借入負担**:ゼロゼロ融資などによる過剰債務が返済フェーズに。 

- **人材ミスマッチの拡大**:確保できた人材が派遣先のニーズに合わず、契約打ち切りやクレームにつながる。 

 

これらが重なり、資金繰りや収益構造を圧迫し、倒産に至るケースが増えているのです。 

 

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## 3. 地方圏にも広がる倒産の波

 

倒産は首都圏だけの問題ではありません。 

帝国データバンクの調査では、東北・近畿・九州などの地方でも過去最多水準を記録しています。 

 

地方圏の派遣会社は、母体となる企業規模が小さいことが多く、資本体力に限界があります。 

そのため、人材不足や単価競争の影響を受けやすく、首都圏以上に経営環境は厳しいといえるでしょう。 

 

「東京の話だから関係ない」とは、もはや言えない状況なのです。 

 

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## 4. 零細企業だけでなく中堅規模も苦境

 

倒産件数を負債規模別にみると、5000万円未満の零細企業が最多ですが、1億円以上の倒産も全体の約3割を占めています。 

 

つまり、年商数億〜十数億円規模の派遣会社も決して安全ではありません。 

「うちはそこそこ規模があるから大丈夫」と考えるのは危険です。 

 

むしろ中堅規模の会社ほど、規模拡大に伴う固定費増加や人材確保コストが重くのしかかり、経営の柔軟性を失いやすい面があります。 

 

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## 5. 人材確保を巡る競争の激化

 

企業の人手不足は深刻で、派遣人材への需要はむしろ高まっています。 

帝国データバンクの調査では、「人材派遣・紹介」業界における人材不足感は全業種でトップ。 

 

つまり「需要はあるのに供給できない」というジレンマに陥っているのです。 

 

この状況では、派遣会社同士の人材獲得競争は激化する一方。 

求人広告費が増加し、紹介料や待遇改善も求められるため、コストが膨らみます。 

 

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## 6. 質の低下による派遣先からのクレーム

 

人材確保を優先するあまり、スキルや適性を十分に確認せずに派遣してしまうケースも増えています。 

 

結果として、派遣先からの不満やクレームにつながり、契約更新を断られることも。 

「派遣人数を揃えたのに収益が伸びない」という悪循環に陥るリスクが高まっています。 

 

ここで大切なのは、「数」ではなく「質」をいかに担保するかという視点です。 

 

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## 7. 社労士から見た「二重のプレッシャー」

 

社会保険労務士として現場を見ていると、派遣会社には二重のプレッシャーがかかっていると感じます。 

 

- 一方で「人を確保しなければならない」プレッシャー 

- もう一方で「収益を確保しなければならない」プレッシャー 

 

この板挟みの中で、待遇改善をしても利益が出ず、逆にサービス品質が下がって信頼を失う…というケースは少なくありません。 

 

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## 8. 派遣会社が取り組むべき労務戦略

 

では、この厳しい環境で派遣会社はどう生き残ればよいのでしょうか。 

私が提案する労務戦略は次の通りです。 

 

### ① 派遣先との単価交渉をデータに基づいて行う 

労務コスト上昇を数字で示し、値上げの必要性を理解してもらう。 

 

### ② 人材定着を促す仕組みを整える 

キャリア形成支援や評価制度の導入で、スタッフが「長く働きたい」と思える環境をつくる。 

 

### ③ 採用から定着までのプロセスを見直す 

求人広告に頼るだけでなく、リファラル採用や教育研修で質を高める。 

 

### ④ コスト管理と労務リスク対策を徹底する 

時間外労働管理、社会保険適正化など、ムダなコストを抑える。 

 

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## 9. 「選ばれる派遣会社」になるために必要な視点

 

これからの派遣会社は、単に「人を派遣する会社」では生き残れません。 

必要なのは、**派遣先にとって信頼できるパートナー**としての存在感です。 

 

そのためには、 

- 人材の質と安定した供給 

- 派遣スタッフにとって魅力的な就業環境 

- 派遣先との長期的な信頼関係 

 

をバランスよく実現することが求められます。 

 

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## 10. まとめ:淘汰の時代はチャンスの時代でもある

 

労働者派遣業は今、かつてないほど厳しい淘汰の時代を迎えています。 

しかし同時に、再編や成長のチャンスも存在します。 

 

需要は確かにあります。 

だからこそ「選ばれる派遣会社」になるための工夫と努力が、これまで以上に求められています。 

 

派遣会社の皆さまにとって、この状況は大きな試練ですが、同時に大きな転機でもあります。 

今こそ、自社の人材戦略と労務体制を見直し、未来につながる経営を築いていきましょう。 

 

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✍ 社会保険労務士として、派遣業界の労務課題や戦略づくりをサポートしています。 

同じような課題を感じている方は、ぜひご意見をお聞かせください。 

 

お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。

派遣会社必見!精神障害・過労死補償の傾向と労務管理のポイント   2025.09.07

## 1. はじめに:派遣会社にとって無視できない「過労死・精神障害」問題

 

令和6年度の厚生労働省発表による「過労死等の労災補償状況」によれば、請求件数や支給決定件数が軒並み増加しており、働く人々の労務リスクは深刻さを増しています。 

とりわけ精神障害に関する補償状況は顕著で、職場におけるパワハラや顧客対応ストレスといった要因が、過労死や自殺にまでつながっている実態が浮き彫りとなりました。 

 

派遣スタッフは派遣元と派遣先の二重構造の中で働くため、相談窓口が不明確になったり、実態把握が遅れたりするリスクが高いのが現状です。 

この統計結果を「他人事」として眺めるのではなく、派遣会社自身の実務に活かすことが、トラブル防止と信頼構築に直結します。 

 

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## 2. 令和6年度の過労死等労災補償の全体像

 

まず全体的な数字を確認してみましょう。 

 

- **請求件数**:4,810件(前年より212件増加) 

- **決定件数**:4,312件(前年より1,033件増加) 

- **支給決定件数**:1,304件(前年より196件増加) 

- **うち死亡・自殺(未遂含む)**:159件(前年より21件増加) 

 

ここ数年はコロナ禍の影響で一時的に労災件数が減少傾向にありましたが、社会が通常運転に戻るにつれて、労働負荷が再び高まり、結果として労災補償件数も上昇していると考えられます。 

 

派遣スタッフにとっても「長時間労働」「精神的ストレス」の両方が依然として大きなリスクであることが、このデータから読み取れます。 

 

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## 3. 精神障害事案の増加とその背景

 

精神障害に関する請求件数は3,780件(前年比205件増)、支給決定件数は1,055件(前年比172件増)となっており、全体の約8割を占める規模で推移しています。 

 

注目すべきは以下の点です: 

 

- 自殺(未遂含む)は202件(前年より10件減) 

- 支給決定された自殺事案は88件(前年より9件増) 

- 認定理由のトップは「パワハラ」224件 

 

精神障害労災は、単に長時間労働だけが原因ではありません。 

職場の人間関係、顧客からの理不尽な要求、仕事内容や人事配置の急な変化など、複数の心理的要因が重なって発症しています。 

 

派遣スタッフは「派遣先に馴染みにくい」「孤立しやすい」傾向があるため、精神的ストレスに弱い立場になりやすいのです。 

 

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## 4. 脳・心臓疾患に見る「長時間労働」のリスク

 

一方、脳・心臓疾患に関する請求件数は1,030件(前年比7件増)、支給決定件数は241件(前年比25件増)でした。 

特に注目されるのは「長時間労働」との関連です。 

 

- 評価期間1か月で「100時間以上120時間未満」の残業が最も多い(18件) 

- 評価期間2~6か月で「80時間以上100時間未満」が最多(63件) 

 

これはまさに「過労死ライン」とされる水準であり、労働時間管理が不十分な現場では、今も命に直結するリスクが放置されていることを意味します。 

 

派遣会社にとって、派遣先に「長時間労働が常態化していないか」をチェックすることは不可欠です。 

 

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## 5. 業種別データから見える「派遣先リスク」

 

業種別にみると、労災補償のリスクは明らかに偏っています。 

 

精神障害では: 

- 医療・福祉:983件(支給決定270件) 

- 製造業:583件(同161件) 

- 卸売・小売:545件(同120件) 

 

脳・心臓疾患では: 

- 運輸・郵便:213件(支給決定88件) 

- 宿泊・飲食:28件 

- 製造業:24件 

 

つまり、医療福祉や運輸業界のように「人手不足が深刻」「労働強度が高い」業種は、派遣スタッフを配置する際に特に注意が必要です。 

 

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## 6. 年齢層ごとの労災傾向

 

年齢別の傾向も見逃せません。 

 

精神障害の請求件数は: 

- 40代:1,041件 

- 30代:889件 

- 50代:870件 

 

脳・心臓疾患の請求件数は: 

- 50代:411件 

- 60歳以上:348件 

- 40代:213件 

 

つまり、**精神障害は40代前後、脳・心臓疾患は50代以降**に多発していることがわかります。 

 

派遣スタッフは幅広い年代に及びますが、年齢に応じて「ストレス要因」や「体力的リスク」が異なるため、配慮の仕方も変える必要があります。 

 

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## 7. 精神障害発症の主要因「パワハラ」との関係

 

精神障害の支給決定理由で最多となったのは「上司等からの身体的・精神的攻撃(パワハラ)」で224件。 

次いで「仕事内容・仕事量の大きな変化」119件、「顧客からの迷惑行為」108件が続きます。 

 

派遣スタッフの場合、派遣先でのハラスメントを派遣元に相談するのはハードルが高く、問題が潜在化しやすい特徴があります。 

したがって、派遣元が積極的に「声を拾いに行く」仕組みをつくることが不可欠です。 

 

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## 8. 派遣元としての労務管理責任

 

労働契約を結んでいるのは派遣元です。したがって、労務管理の責任も派遣元にあります。 

実務上の対応ポイントは以下の通りです。 

 

- 労働条件の明示を正確に行う(残業見込みや職場環境も含む) 

- 派遣スタッフの労働時間を可能な限り把握する 

- メンタルヘルス相談窓口を社内外に設ける 

- 定期的な面談やヒアリングを行い「声なき声」を拾う 

 

形式的な規程だけでなく、実際に機能する体制を整えることが、労災リスクを未然に防ぐカギとなります。 

 

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## 9. 派遣先との連携によるリスク回避策

 

派遣元が一方的に努力しても限界があります。 

派遣先に対しても「労務管理の責任を共有する」という意識を徹底する必要があります。 

 

具体的には: 

- 契約前に労務リスク(残業・職場環境)を確認 

- 就業開始後も定期的にフォローアップ 

- 問題発生時の報告・相談フローを文書化 

- ハラスメント対応のガイドラインを派遣先と共有 

 

これらを実行することで、トラブル発生時に「派遣元の責任」と一方的に問われるリスクを減らせます。 

 

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## 10. まとめ:データを踏まえた労務リスク対策が信頼につながる

 

令和6年度の過労死等労災補償状況からは、以下の重要な示唆が得られます。 

 

- 精神障害事案は増加傾向、特にパワハラや業務量変化が原因 

- 長時間労働による脳・心臓疾患は依然として命に直結するリスク 

- 医療・福祉、運輸業など特定業種は労災リスクが高い 

- 年齢層ごとに発症リスクが異なり、対応も変える必要がある 

 

派遣会社にとって、このデータは単なる統計ではありません。 

日々の派遣スタッフの安全と健康を守る「実務指針」として活用すべきものです。 

 

派遣スタッフの労働環境を適切に管理することは、労災防止だけでなく、派遣先企業からの信頼を高め、安定した取引につながります。 

「数字の裏にある現場の声」に耳を傾けながら、派遣会社としてできることを一つひとつ積み重ねていくことが、これからの人材ビジネスに求められている姿勢だと言えるでしょう。 

 

いつでもご相談を承りますので、ご連絡ください。初回1時間は無料です。

 

※参照記事)厚生労働省「令和6年度「過労死等の労災補償状況」の公表

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59039.html

未払い賃金で逮捕も!?派遣会社が今すぐ確認すべき労務管理   2025.09.05

## 1. はじめに:派遣会社社長逮捕の衝撃ニュースから

 

2024年9月、愛知県豊田市の派遣会社社長が労働基準法違反の疑いで逮捕されました。 

その容疑は「派遣労働者への未払い賃金」。未払いは外国人労働者を中心に159人分、総額7,800万円超にものぼると報道されています。会社はすでに廃業していたものの、事件は刑事事件として立件されました。

 

※参照記事)

https://news.yahoo.co.jp/articles/b6ba3427fee9727323da73a54fdcc8cb42b2cf5b

 

派遣会社を経営する立場にある方にとって、このニュースは決して「他人事」ではありません。 

「未払い賃金」という一見単純な問題が、**会社の存続**はもちろん、**経営者個人の責任追及や逮捕**につながることを示した事例だからです。

 

この記事では、派遣会社が抱えやすい労務リスクを整理し、具体的にどのような対策を取るべきかを社会保険労務士の視点から解説します。

 

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## 2. なぜ未払い賃金が発生したのか

 

派遣会社で未払い賃金が発生する背景には、いくつかの典型的な原因があります。

 

- **労働時間の管理不足** 

タイムカードやシステムを導入せず、実働時間を正確に把握できていないケース。残業代が支払われないまま放置されることも。

 

- **労働契約書の不備** 

契約条件を曖昧にしているため、後になって「残業代を支払うべきか」「休日出勤はどう扱うか」で揉めやすくなる。

 

- **派遣料金と給与支払いのズレ** 

派遣先からの入金は月末締め翌月末払い、給与は月末締め翌月10日払いなど、タイミングが合わないケースが多い。資金繰りが厳しいと「給与が後回し」になりやすい。

 

- **派遣労使協定の未締結** 

派遣労働者の賃金水準を決める「労使協定方式」を整備していない場合、労基署からの是正勧告や指導を受けることがある。

 

これらはどれも、派遣業の現場で頻繁に起きる“あるある”です。 

しかし放置してしまうと、未払いが積み重なり、今回のように刑事事件へと発展してしまうのです。

 

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## 3. 未払い賃金の消滅時効とは

 

「昔の未払いはもう時効だから関係ないだろう」 

そう考える経営者の方も少なくありません。ですが、労基法上の時効は意外と長いのです。

 

- 2020年4月以降の賃金 → **3年間** 

- 2020年3月以前の賃金 → **2年間** 

- 退職金 → **5年間**

 

民法改正により「時効は原則5年」となりましたが、労働基準法が優先されるため、当面は3年が適用されます。 

つまり、3年前までさかのぼって請求されるリスクがあるということです。

 

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## 4. 民法改正と労基法の違いに注意

 

実務の現場では「時効は5年」と誤解しているケースも多いです。 

しかし、労働関係については労基法の特例が適用されるため、**給与の時効は3年**が正解です。 

 

この誤解が解消されないまま放置されると、経営者が「もう時効だろう」と思っていた未払いが、実際には請求可能な状態で残ってしまい、予期せぬトラブルにつながります。

 

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## 5. 外国人派遣労働者に多いトラブル

 

今回の事件で特に注目すべきは、被害者の多くがベトナム人労働者だったことです。 

外国人労働者を雇用する際には、以下のような要因でトラブルが増える傾向があります。

 

- 言語の壁により、労働契約内容を正確に理解していない 

- 日本の労働基準法や権利について知識がない 

- 契約書が外国語で整備されていないため、労使間で認識の齟齬が起きやすい 

 

このため、外国人労働者を多く雇用している派遣会社ほど、**労働条件通知書や契約書の多言語化**が必要不可欠になります。

 

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## 6. 労働時間管理の重要性

 

労務トラブルの大半は「労働時間の記録」から始まります。 

正確に記録していなければ、残業代の計算はできませんし、未払いの証拠として従業員側に有利に働きます。

 

対応策としては、以下の方法があります。 

- タイムカードやICカードによる打刻 

- 勤怠管理システムの導入 

- 派遣先からの出勤簿との照合 

 

**“誰が見ても正しい”勤務時間記録**を残すことが、未払いトラブルを防ぐ最初の一歩です。

 

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## 7. 契約書の整備がトラブル防止のカギ

 

派遣契約においては「就業条件明示書」と「雇用契約書」が必須です。 

これらが不十分だと、労働者からの請求に反論できない状態に陥ります。

 

特に注意が必要なのは次の項目です。 

- 基本給と各種手当の内訳 

- 時間外・休日・深夜割増の計算方法 

- 支払日と締切日 

- 契約期間と更新ルール 

 

これらを明記しておくことで、トラブル発生時に会社を守る盾になります。

 

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## 8. 派遣労使協定の締結義務

 

派遣会社は「同一労働同一賃金」に対応するため、労使協定を結ぶ必要があります。 

もし未締結のまま放置していると、監督署から是正指導を受ける可能性が高くなります。

 

協定では以下を定める必要があります。 

- 賃金の水準 

- 評価や昇給のルール 

- 労使双方の同意 

 

形式的に作成するのではなく、**実際の派遣実態に即した内容**にすることが重要です。

 

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## 9. 派遣会社が取るべき実務的な対策

 

ここまでを踏まえ、派遣会社が今すぐに取り組むべき対策を整理します。

 

1. **勤務実績に基づいた残業代の計算** 

   勤怠システムを導入し、正確な時間管理を徹底。 

 

2. **契約書の再整備** 

   全従業員と改めて労働契約書を取り交わし、内容を明文化。 

 

3. **給与支払いルールの遵守** 

   「毎月1回以上、一定の期日」に必ず支払うことを再確認。 

 

4. **派遣労使協定の整備** 

   労働者代表と協定を締結し、法的リスクを最小化。 

 

5. **外国人労働者への対応強化** 

   契約書の多言語化、生活相談窓口の設置などで安心できる環境を整える。 

 

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## 10. まとめ:経営を守るために今すぐできること

 

未払い賃金は「資金繰りの一時的な苦しさ」で軽視しがちですが、最終的には**会社の信用と経営者の自由**を奪う大きなリスクとなります。 

 

一方で、労務管理の仕組みを整えれば、 

- 労働者の安心感が増す 

- 派遣先からの信頼が厚くなる 

- 長期的に安定した経営が可能になる 

 

というプラス効果も得られます。 

 

今回の事件は、派遣業に携わるすべての経営者に対する警鐘です。 

「自社の労務管理は大丈夫か?」と今一度見直し、早めに専門家に相談しておくことをおすすめします。 

 

派遣ビジネスは「人」が資本。 

働く人の安心があってこそ、会社も長く続けられるのです。 

 

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✍️ 社会保険労務士として、未払い賃金や労務管理の相談を日々受けています。 

「うちの会社も大丈夫かな?」と少しでも不安を感じたら、ぜひご相談ください。 

初回相談(1時間)は無料ですので、安心してお問い合わせいただけます。

完全失業者数169万人に減少!派遣会社が採用戦略で意識すべきこと   2025.09.02

### 1. 労働力調査2025年7月分の最新結果を整理する

総務省が発表した「労働力調査(基本集計)」2025年7月分の結果は、労働市場が引き続き改善していることを示しました。 

今回のデータで特に目を引くのは「完全失業率」が2.3%に低下した点です。これは6か月連続で減少しており、前年同月比では19万人の失業者減となります。 

 

また、就業者数は6850万人に達し、前年同月より55万人増加。36か月連続の増加です。景気が回復基調にあり、企業の採用活動が積極化していることを裏付ける数字といえるでしょう。 

 

一方で、この「良いニュース」が派遣会社にとっては必ずしも歓迎できる状況ばかりではありません。なぜなら「完全失業率の低下=採用市場に出てくる人材の減少」を意味し、求人を出しても人が集まりにくい状況が一層強まるからです。 

 

ここからは、この数字が派遣ビジネスにどんな影響を与えるのか、そして派遣会社がどんな採用戦略をとるべきなのかを掘り下げていきます。 

 

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### 2. 完全失業率2.3%が意味する現実

完全失業率とは「働く意思と能力はあるが、仕事についていない人の割合」です。 

これが2.3%という数字まで下がるということは、裏を返せば「仕事を探している人自体が少なくなっている」ということ。 

 

派遣会社にとって、この状況は大きな逆風です。 

以前であれば、ハローワークや求人広告を通じて一定数の応募が見込めましたが、現在は同じ方法を取っても思ったほど人が集まらないケースが増えています。 

 

さらに深刻なのは「即戦力層が正社員市場に吸い込まれる」ことです。景気が良くなれば、企業は直接雇用を積極化します。そのため、本来派遣スタッフとして登録していた人が、正社員や契約社員の選択肢を優先するようになるのです。  

 

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### 3. 就業者数増加と派遣市場の関係

就業者数が36か月連続で増加しているということは、日本全体で「働いている人」が確実に増えていることを意味します。 

ただしその中身を見ると、正社員やフルタイム勤務を選ぶ人が多く、派遣や短時間労働を選ぶ人は相対的に減少傾向にあります。 

 

これは派遣会社にとって二重の意味で影響します。 

1つ目は「人材の供給源が縮小すること」。 

2つ目は「派遣会社が取り扱う職種や働き方の見直しが必要になること」です。 

 

たとえば、従来の一般事務や製造ラインの派遣ニーズは依然として強いですが、そこで働きたい人材が少なくなっている。逆に、リモートワークや副業的な短期派遣のニーズが増えてきており、マッチングの難易度が高まっています。 

 

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### 4. 完全失業者数減少がもたらす課題

完全失業者数は169万人まで減少しました。 

数字だけ見れば「良いこと」ですが、派遣会社の立場で考えると「登録者候補の母集団が減った」となります。 

 

これまでは失業状態にある人が派遣会社へ登録し、その後派遣先で働き始める流れが一般的でした。ところが失業者が減ると、この流れそのものが縮小してしまいます。 

 

さらに、正社員採用が活発化すると「派遣登録よりも直接雇用を希望する人」が増えます。その結果、派遣会社は「求人案件はあるのにスタッフが足りない」という状況に直面しやすくなるのです。 

 

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### 5. 採用戦略をどう転換するか

では派遣会社はこの状況でどのような戦略を取ればよいのでしょうか。 

従来型の「求人広告中心の採用」だけでは限界が見えています。 

 

具体的には以下のような方向転換が求められます。 

 

- **採用チャネルの多様化** 

SNSや動画配信を使った発信、既存スタッフからの紹介制度など、従来と異なる入り口を広げること。 

 

- **柔軟な働き方の提示** 

短時間勤務や週3日勤務など、生活と両立しやすい働き方を前面に出すことで、主婦層やシニア層の応募を増やす。 

 

- **働きやすさの見える化** 

派遣先の環境やサポート体制を透明に発信し、「安心して働ける」というイメージを醸成する。 

 

人材獲得競争が激化している今、派遣会社が「選ばれる存在」になることが最大のテーマです。 

 

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### 6. 定着率を高めることの重要性

採用が難しくなる中で、今いるスタッフを大切にすることがこれまで以上に重要になります。 

離職率が高ければ、いくら新規採用を増やしても人材不足は解決できません。 

 

定着率を高めるためには、単なる仕事紹介にとどまらず「キャリアや生活全体をサポートする姿勢」が必要です。 

 

たとえば、 

- 定期的なフォロー面談 

- 相談しやすい窓口の設置 

- トラブルが起きた際の迅速な対応 

 

これらを実践することで、「この派遣会社なら安心して働ける」と感じてもらえるようになります。 

 

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### 7. 教育・研修による差別化

人材が集まりにくいときこそ、派遣会社の「育てる力」が強みになります。 

派遣先企業が即戦力を求めていても、未経験者が多い今の採用市場では対応が難しいこともあります。 

 

そのため、派遣会社が研修や教育を用意し、未経験者を戦力化する仕組みを作ることが重要です。 

 

具体的には、 

- 事務職向けのPCスキル研修 

- 製造業向けの安全教育や資格取得支援 

- サービス業向けの接客マナー講座 

 

こうしたプログラムは派遣スタッフの満足度を高めるだけでなく、派遣先からの信頼を獲得する大きな要素にもなります。 

 

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### 8. 派遣先企業との協力体制を強化する

人材不足の時代、派遣会社単独で採用課題を解決するのは困難です。派遣先企業と連携し、条件面や職場環境を改善していく必要があります。 

 

たとえば、 

- 時給水準を市場相場に合わせる提案 

- 柔軟な勤務シフトの導入 

- 労働環境の改善に向けた助言 

 

派遣先企業にとっても「人が集まらない」ことは経営リスクです。派遣会社が積極的に解決策を示すことで、長期的な信頼関係を築けるでしょう。 

 

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### 9. 今後の雇用トレンドと派遣ビジネスの可能性

今回の調査結果は「人材不足がさらに深刻化する」ことを示しています。 

しかし同時に、働き方の多様化という大きな潮流も進んでいます。 

 

副業やダブルワーク、短時間労働、リモート派遣など、従来のフルタイム勤務とは異なる働き方を希望する層が増えているのです。 

派遣会社がこうした層にアプローチできれば、逆に大きなチャンスとなります。 

 

また、外国人労働者やシニア人材の活用も、今後は重要なテーマになるでしょう。法律や制度を踏まえた適切な運用が求められますが、これも派遣会社の専門性が活かせる分野です。 

 

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### 10. 社労士の視点からのまとめと提言

派遣会社にとって、今回の労働力調査が示す数字は「採用難の加速」という厳しい現実を突き付けています。 

しかし、これは同時に「差別化のチャンス」でもあります。 

 

採用戦略の転換、スタッフの定着支援、教育研修の充実、派遣先企業との協力強化。 

これらを組み合わせることで、厳しい市場環境の中でも安定した人材供給を実現できるでしょう。 

 

社労士として現場を見てきた経験から言えるのは、単に「採用」だけに目を向けるのではなく、「働きやすさ」と「安心感」を提供することが、派遣会社の未来を左右するということです。 

 

完全失業率が低下し、人材不足が当たり前の時代に突入しています。 

だからこそ、派遣会社が「人を大切にする姿勢」を打ち出すことで、スタッフからも企業からも選ばれる存在になれるのではないでしょうか。 

 

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【まとめ】 

完全失業率の低下は、派遣会社にとって採用環境がより厳しくなることを意味します。 

しかし、発想を転換し、新しい人材層へのアプローチや定着率向上の工夫を重ねることで、むしろ競争優位を築くチャンスでもあります。 

 

数字に一喜一憂するのではなく、その裏にある現実を正しく読み解き、戦略を立て直すこと。 

これが、これからの派遣会社に求められる姿勢だと考えます。 

 

お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。

 

※参照)総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)7月分結果」

https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html 

派遣会社が注意すべき「マージン率等の情報提供」とは?作成時のポイント解説   2025.09.01

派遣会社の皆さま

 

9月もブログを公開しました。実務のお役に立つ内容ですので、ご覧いただけましたら幸いです。

https://jinzai-biz.com/employment_labor/10674/

 

また、下記に「マージン率等の情報提供」のポイントについて、ご説明いたします。

 

### 1. マージン率等の情報提供とは?【基礎知識】 

派遣会社が毎年対応しなければならない業務のひとつに「マージン率等の情報提供」があります。 

これは、派遣労働者や取引先企業が、派遣会社の状況を適切に把握できるようにするための情報公開制度です。 

 

ここでいう「マージン率」とは、派遣料金(派遣先から受け取る金額)のうち、派遣労働者に支払われる賃金を除いた部分の割合を指します。 

この部分には、派遣会社の利益だけでなく、社会保険料の会社負担分、教育訓練費、福利厚生費など、派遣社員をサポートするために必要なコストが含まれています。 

 

つまり、マージン率は単に「どれだけ利益を取っているか」を示す数字ではなく、会社の仕組みやサービスの充実度を反映するものでもあります。 

そのため、数値だけが一人歩きしないよう、正しい理解を前提に公開することが非常に重要です。 

 

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### 2. 法改正で義務化された背景【派遣法のポイント】 

マージン率等の情報公開が義務化されたのは、平成24年の労働者派遣法改正によるものです。 

当時、派遣会社と労働者の間で情報の非対称性が問題視されており、派遣労働者が自分に合った派遣会社を選びやすくするため、情報公開が求められるようになりました。 

 

さらに令和3年4月からは、公開義務がより厳格化されました。これまでは事業所の備え付け資料での閲覧対応も認められていましたが、今では「インターネットを通じて常時確認できる状態」にすることが原則となっています。 

 

これにより、派遣労働者や派遣先企業が気軽に情報を入手できる環境が整えられ、透明性が大きく向上しました。 

派遣会社としては「ホームページに載せるのを忘れていた」という言い訳は通用しなくなっており、対応を怠ると行政指導や監査で指摘を受けるリスクがある点に注意が必要です。 

 

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### 3. マージン率の正しい意味とは?【誤解されやすい点】 

マージン率を「派遣会社の取り分」と誤解している方は多くいます。 

しかし、実際には以下のような項目が含まれています。 

 

- 社会保険料(会社負担分) 

- 雇用保険料、労災保険料 

- 派遣社員の教育訓練費 

- 福利厚生費(健康診断など) 

- 管理運営費(営業活動、人件費、事務所維持費など) 

- そして最終的に会社の利益 

 

このように、派遣会社が健全に事業を運営し、派遣社員を安心して働かせるためのコストが多く含まれています。 

マージン率が20%と聞くと「会社が2割も利益を取っている」と誤解されがちですが、実際に純粋な利益として残るのはごく一部というのが現実です。 

 

したがって、派遣会社としては、公開する際に「マージン率の意味」を丁寧に説明することが重要です。 

単に数字を載せるだけではなく、その背景を理解してもらう工夫をしなければ、誤解を招きやすい情報公開になってしまいます。 

 

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### 4. 低いマージン率=優良会社ではない理由 

派遣先企業や求職者の中には「マージン率が低い会社の方が良心的だ」と考える人もいます。 

しかし、実際にはマージン率の低さと会社の良し悪しは必ずしも一致しません。 

 

例えば、マージン率が低いからといって、教育訓練が十分に行われていない可能性もありますし、社会保険の手厚さに欠ける場合もあります。 

一方で、マージン率がやや高い会社でも、しっかりと研修制度を整え、安定した雇用管理を行っているところも多いのです。 

 

大切なのは「マージン率の数字」そのものではなく、その会社がどのように派遣社員を支えているのかという総合的な視点です。 

派遣会社は、公開の際にこの点をしっかり説明し、「数字だけでは判断できない」というメッセージを伝えることが信頼につながります。 

 

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### 5. 公開義務の範囲【何を載せなければならないか】 

派遣会社が公開しなければならないのは、マージン率だけではありません。 

具体的には以下のような情報が対象となります。 

 

- マージン率 

- 教育訓練の内容と実施人数 

- キャリアコンサルティングの実施状況 

- 派遣労働者数や派遣先数 

- 平均的な派遣料金・賃金 

 

これらをきちんと整理して公開することが求められています。 

特に教育訓練やキャリア形成に関する情報は、派遣労働者にとって非常に重要な判断材料となります。 

 

公開範囲を十分に理解していないと「一部の情報が抜けていた」という事態に陥り、行政からの指導につながることがあります。 

必ず厚生労働省の指針を確認し、必要な項目を網羅して公開しましょう。 

 

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### 6. 公開方法の注意点【ホームページと人材サービス総合サイト】 

公開方法については、次の2点を押さえる必要があります。 

 

① 自社ホームページに掲載する 

→ 自社サイトの「会社情報」や「派遣事業に関する情報公開」ページに、PDFなどで掲載する方法が一般的です。 

 

② 厚生労働省「人材サービス総合サイト」に入力する 

→ 令和3年からは、厚労省が運営する「人材サービス総合サイト」への入力も推奨されています。 

ここに情報を掲載することで、求職者や企業が横並びで比較しやすくなり、信頼性の向上につながります。 

 

両方に対応しておくことで、行政的な要件を満たすだけでなく、利用者へのアピールにもなります。 

 

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### 7. 情報提供でよくあるトラブル事例 

実務の現場では、次のようなトラブルがよく見られます。 

 

- マージン率の計算方法を誤っていた 

- 公開内容の更新を忘れていた 

- 教育訓練の記載が不十分だった 

- ホームページにリンク切れが発生していた 

- 公開はしていたが、分かりにくい場所に掲載していた 

 

こうした不備は、労働局の調査で指摘されるだけでなく、派遣先企業から「コンプライアンス意識が低い」と判断される恐れもあります。 

毎年の更新をルーチン化し、複数の担当者でチェックする仕組みを整えることが重要です。 

 

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### 8. 派遣先・労働者からの信頼につながる工夫 

情報公開は「義務だからやる」だけでは不十分です。 

派遣会社の信頼を高めるためには、以下の工夫が効果的です。 

 

- 公開ページに「マージン率の意味」を説明する補足文をつける 

- 図解やグラフで分かりやすく表現する 

- 教育訓練の内容を具体的に示し、社員の成長支援をアピールする 

- 更新日を明記し、常に最新情報であることを伝える 

 

これらを意識することで、「きちんとした会社だ」と感じてもらいやすくなり、派遣先や求職者からの信頼を得られます。 

 

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### 9. 実務で気をつけたいチェックポイント 

実際に情報提供を行う担当者が押さえるべきチェックポイントは次のとおりです。 

 

- マージン率を正しく計算しているか 

- 公開が義務付けられている全項目を網羅しているか 

- 年度ごとの更新作業を忘れずに実施しているか 

- 公開方法(自社HP+人材サービス総合サイト)の両方に対応しているか 

- 閲覧者が理解しやすい形式で掲載しているか 

 

このチェックリストをもとに作業フローを作成すれば、担当者が変わっても安定した対応が可能になります。 

 

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### 10. まとめと社労士の活用ポイント 

「マージン率等の情報提供」は、派遣会社にとって毎年必ず取り組むべき重要な業務です。 

数字だけを公開するのではなく、その意味を正しく伝え、教育訓練やキャリア形成の取り組みをセットで示すことが信頼につながります。 

 

一方で、実務上は計算方法の誤りや更新漏れといったトラブルも少なくありません。 

こうしたリスクを回避するためには、専門家である社会保険労務士に相談することも有効です。 

 

情報公開は「義務対応」であると同時に、「信頼を見える化するチャンス」でもあります。 

派遣会社の魅力を正しく伝え、労働者や派遣先から選ばれる存在になるために、ぜひ丁寧な取り組みを意識していただければと思います。 

 

もしご相談がありましたら、お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。

雇止めトラブルを防ぐ!派遣会社のための無期転換・3年ルール対応策   2025.08.29

1. **導入:派遣会社が直面する「雇止め」と「無期転換」の課題** 

近年、派遣会社を取り巻く環境は大きく変化しています。特に「雇止め」と「無期転換ルール」は、労働契約法や派遣法の改正により、派遣会社が避けて通れない重要課題となっています。派遣社員を雇用する際、「期間満了だから契約終了」と単純に考えてしまうと、後に「不当な雇止め」と判断されるリスクが高まります。実際に、契約更新を期待できる状況での雇止めは違法とされ、訴訟に発展するケースも増えています。

 

一方で、2013年に施行された「無期転換ルール」により、同一の使用者との有期契約が通算5年を超えると、労働者からの申込みで無期雇用に転換する権利が発生します。これを避けようとした更新拒否も「脱法的な雇止め」として問題視されやすくなりました。さらに2024年4月以降は、契約書に「更新上限」や「無期転換後の労働条件」を明示することが義務づけられ、派遣会社の契約管理はより複雑になっています。

 

派遣社員の雇用安定を尊重しつつ、法的リスクを避けるためには、雇止めや無期転換のルールを正しく理解し、契約管理・運用を徹底することが欠かせません。派遣会社にとっては、信頼を守りながら安定的な事業運営を行うための大きな課題といえるでしょう。

 

2. **労働契約法改正と雇止め法理の明文化** 

2012年の労働契約法改正は、「雇止め」に関する法理を明文化した大きな転換点でした。それまで雇止めの有効性は判例法理で判断されていましたが、改正により労契法19条として条文化され、派遣会社を含む使用者側は一層慎重な対応を求められるようになりました。

 

具体的には、①期間の定めのある契約であっても、実質的に期間の定めがないと同視できる場合(実質無期型)、②契約の更新を合理的に期待できる状況がある場合(期待保護型)には、使用者が更新拒否するには合理的な理由と社会的相当性が必要とされています。

 

判例でも東芝柳町工場事件や日立メディコ事件などで雇止めの判断枠組みが示されており、これらを踏まえて改正法は「雇止め法理」を明確に位置づけました。その結果、「契約期間が満了すれば当然に終了」といった従来の認識は通用しにくくなり、更新可否を判断する際には労働者の勤務態度、能力、会社側の指導体制、他の社員との公平性など多面的な事情を考慮しなければなりません。

 

派遣会社にとっては、この明文化により「更新しない」という判断のハードルが高くなったことを意味します。適切な記録や教育指導の履歴を残さなければ、雇止めが無効とされるリスクがあるため、日常の労務管理の重要性が一層増しています。

 

3. **無期転換ルールの基本と2018年以降の実務影響** 

無期転換ルールは、2012年の労働契約法改正で導入され、2013年4月から施行されました。その仕組みは、同一の使用者との間で有期労働契約を繰り返し締結し、その通算契約期間が5年を超えた場合、労働者が申込みをすることで期間の定めのない労働契約(無期雇用)に転換できるというものです。実際に無期転換権が発生し始めたのは2018年4月であり、この時期から派遣会社を含む多くの企業で対応が急務となりました。

 

このルールにより、契約の度に「無期転換申込権があること」や「無期転換後の労働条件」を明示することが求められ、契約書や労働条件通知書の記載が複雑化しました。また、労働者が申込権を行使する直前に契約更新を拒否する、いわゆる「無期転換逃れ」の雇止めは不当とされ、訴訟に発展する例も見られます。これにより、派遣会社は契約管理を従来以上に厳密に行わなければならなくなりました。

 

さらに、クーリング期間(6か月以上空ければ通算しない)があるものの、実務上は空白期間を設けること自体が難しいケースも多く、制度を形式的に回避することは現実的ではありません。無期転換ルールは派遣社員の雇用安定を図る趣旨であるため、派遣会社としては制度を前向きに捉え、安定雇用と企業経営の両立を模索する姿勢が求められます。

 

4. **2024年4月からの労働条件明示義務の追加点** 

2024年4月から、労働基準法施行規則が改正され、有期労働契約を結ぶ際の「労働条件明示義務」が大幅に強化されました。派遣会社にとって特に重要なのは、これまで以上に契約更新や無期転換に関する情報を労働者に明確に伝える必要がある点です。

 

具体的には、

①契約更新の上限(期間や回数)の有無と内容、

②無期転換申込機会があること、

③無期転換後の労働条件、

これらを更新の度に明示する義務が追加されました。

 

これにより、派遣会社は「いつまで更新可能か」「無期転換を申し込むとどのような条件になるか」を契約書や労働条件通知書で具体的に示さなければなりません。従来のように曖昧な表現や口頭での説明では不十分であり、労働者に誤解を与えれば後のトラブルにつながります。また、更新上限を新たに設定したり短縮する場合には、その理由を事前に説明する義務も課せられています。

 

この改正は、派遣社員を含む有期労働者の雇用安定を強く意識したものです。派遣会社としては、契約書式の見直しや管理体制の整備が急務であり、実務担当者は常に最新の法改正に沿った対応を意識する必要があります。適切な明示は、リスク回避だけでなく労働者からの信頼を得ることにも直結します。

 

5. **雇止め判断に必要なチェックポイント** 

雇止めを検討する際には、「契約期間が終われば自動的に終了」と単純に判断するのは危険です。労働契約法19条では、実質的に無期雇用と同視できる場合や、契約更新を合理的に期待できる場合には、雇止めに合理的な理由と社会的相当性がなければ無効とされます。そのため、派遣会社としては、以下のチェックポイントを押さえておく必要があります。

 

第一に、労働者の能力不足や勤務態度が更新拒否の理由となる場合、その程度が著しいものであるかどうかが問われます。単に平均以下という理由では足りず、業務遂行に支障があるほどでなければなりません。第二に、改善の機会を与えたかどうかです。注意指導や研修、配置転換などを行い、それでも改善が見られなかったことを記録しておくことが重要です。第三に、他の労働者との公平性や会社側の対応の適切さも考慮されます。同じ成績の社員が複数いるのに一人だけ雇止めとする場合などは、不合理と判断されやすくなります。

 

これらの要素を総合的に確認し、記録を残しておくことで、万が一紛争に発展した際にも会社を守ることができます。雇止め判断は慎重に行い、透明性と一貫性を持たせることが派遣会社のリスク回避につながります。

 

6. **退職勧奨と雇止めの違い** 

「退職勧奨」と「雇止め」は混同されやすい概念ですが、法律上も実務上も大きな違いがあります。まず、雇止めは期間の定めのある労働契約が満了した際に、使用者が更新を拒否することで雇用関係を終了させるものです。一方、退職勧奨は、契約期間の有無にかかわらず、会社が労働者に対して「退職してはどうか」と働きかける行為であり、労働者本人の合意によって成り立ちます。つまり、雇止めは会社側の一方的判断が中心であるのに対し、退職勧奨は労働者の意思を尊重するプロセスが不可欠です。

 

注意すべきは、退職勧奨が行き過ぎると「強要」や「不当な圧力」とみなされるリスクがある点です。長時間の説得や威圧的な言動によって自由な意思決定を妨げれば、後に無効や損害賠償請求につながる可能性があります。逆に、適切に行えば、解雇や雇止めと比べて紛争リスクを低減できる柔軟な手段となります。

 

派遣会社にとっては、契約満了時の雇止めと退職勧奨を明確に区別し、状況に応じて適切に使い分けることが重要です。特に退職勧奨を行う際には、記録を残し、自由な意思を尊重したプロセスを徹底することで、不要なトラブルを防ぐことができます。

 

7. **派遣の3年ルールと無期転換の関係** 

派遣会社にとって「派遣の3年ルール」と「無期転換ルール」は、それぞれ独立した制度ですが、実務上は密接に関わっています。まず「3年ルール」とは、派遣労働者が同じ事業所や同じ部署で働ける期間に制限を設ける仕組みです。事業所単位では3年を超えて派遣社員を受け入れる場合に労働組合などへの意見聴取が必要となり、個人単位では同じ派遣社員が同一部署で3年を超えて就労することはできません。一方で「無期転換ルール」は、同一の使用者と有期契約を繰り返し5年を超えた場合、労働者からの申込みで無期雇用に転換する仕組みです。

 

ここで注意すべきは、派遣社員が派遣元(派遣会社)と契約している点です。つまり、派遣先で3年ルールにより配置転換が必要になっても、派遣元との契約期間が5年を超えれば無期転換の対象となります。このため派遣会社は、派遣先の受け入れ制限と派遣元での無期転換権発生の双方を同時に管理する必要があります。派遣先にとっても、契約終了を繰り返すことで「無期転換逃れ」と疑われるリスクがあり、対応を誤れば法的トラブルに発展しかねません。

 

派遣会社が安定した人材サービスを提供するには、この二つのルールを正しく理解し、派遣先との情報共有を徹底することが欠かせません。

 

8. **トラブル事例と最新判決の示唆** 

雇止めや無期転換をめぐるトラブルは近年増加しており、最新の判決も派遣会社や有期契約を扱う企業に重要な示唆を与えています。例えば、青山学院の非常勤講師が雇止めを争った訴訟では、講師側の請求は退けられたものの、裁判所は「更新への合理的期待」が一定程度認められるとの判断を示しました。これは、雇止めが直ちに違法とされるわけではない一方で、契約更新の経緯や労働者の期待が裁判で大きく考慮されることを示しています。

 

また、2018年以降の無期転換権の発生を前にした「駆け込み雇止め」についても、脱法的行為として無効とされるケースが見られます。特に更新を繰り返してきた労働者に対して、無期転換権が生じる直前に一方的に契約を打ち切る行為は、裁判所から厳しく判断されやすい傾向があります。

 

派遣会社にとっての教訓は明確です。契約書や就業規則に基づく形式的な対応だけでは不十分であり、実際の雇用実態や労働者の合理的期待を踏まえた判断が求められるということです。記録の管理や説明責任を果たすことはもちろん、更新や終了の判断を行う際には、社会的相当性が担保されているかを常に確認することが、トラブル回避の鍵となります。

 

9. **派遣会社が取るべき実務対応チェックリスト** 

派遣会社が雇止めや無期転換に関するトラブルを防ぐためには、日常的な実務対応を徹底することが欠かせません。以下は最低限押さえておきたいチェックリストです。

 

①契約書・労働条件通知書の整備です。更新の有無、更新基準、更新上限、無期転換後の労働条件を明示し、法改正に対応した様式を使用する必要があります。

②更新可否の判断基準を社内で明確化し、労働者にもフィードバックする仕組みを作ること。更新拒否を行う場合には合理的理由を文書化しておくことが重要です。

③能力不足や勤務態度を理由にする場合は、注意・指導・研修など改善の機会を与え、その記録を残すこと。

④派遣先との情報共有も欠かせません。派遣の3年ルールや無期転換ルールの発生時期を双方で把握し、誤解や行き違いを防ぐ体制を構築しましょう。

⑤契約終了や退職勧奨を行う場合には、労働者の自由意思を尊重し、説得や説明の過程を適切に記録すること。

 

これらを徹底することで、万一トラブルが生じても会社を守り、同時に労働者からの信頼を得ることができます。派遣会社にとっては、法令遵守と信頼性の確保が事業継続の基盤となるのです。

 

10. **まとめ:リスク回避と信頼獲得のために** 

雇止めや無期転換ルール、さらには派遣の3年ルールは、派遣会社にとって避けて通れない課題です。これらは単なる法律上の義務ではなく、派遣社員の雇用安定と派遣会社の信頼性を左右する重要な要素といえます。不当な雇止めや不透明な契約管理は、労働審判や裁判に発展するリスクを高めるだけでなく、取引先や派遣社員からの信頼を失う大きなダメージにつながります。

 

一方で、契約書や就業規則の整備、更新基準の明確化、適切な記録管理や説明責任を徹底すれば、法的リスクを大幅に低減できます。それだけでなく、派遣社員にとって「安心して働ける会社」として認識されることで、人材の定着や新規採用にも良い影響を与えます。つまり、法令遵守は単なる防御策ではなく、派遣会社にとって競争力の源泉となるのです。

 

まとめますと、リスク回避と信頼獲得は表裏一体です。派遣会社は日々の契約運用に丁寧さと透明性を加えることで、トラブルを未然に防ぎ、同時に労働者や派遣先企業からの信頼を築いていけます。そのためにも、専門家の知見を活かしながら体制を整えることが、今後ますます重要になるでしょう。

 

いつでもお気軽に当事務所までご連絡いただければ幸いです。

お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。

 

※関連ニュース

「青山学院「雇い止め」訴訟で高等部の非常勤講師が敗訴も…「不当判決だが前進」評価 更新契約への“合理的期待”認められる」

https://news.yahoo.co.jp/articles/a48c93c61ed92bd58d7db9944bb7aa1fa84253ff

令和8年度の労使協定方式|派遣会社が知っておくべき賃金水準と実務対応   2025.08.27

## 1. 導入:令和8年度に向けた重要な制度変更

 

令和7年8月25日、厚生労働省から「令和8年度に適用される同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」が公表されました。 

さらに、「労使協定方式における独自統計の協議」についても発表されています。 

 

これは、派遣会社にとっては見逃せない重要な情報です。なぜなら、派遣労働者の待遇決定に直結する「労使協定方式」において、この賃金水準が基準となるからです。 

 

この記事では、社会保険労務士の立場から、令和8年度の最新情報をもとに派遣会社が実務で注意すべきポイントを整理し、対応の方向性を提案します。 

 

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## 2. 労働者派遣法における2つの待遇決定方式とは

 

労働者派遣法では、派遣労働者の待遇決定において以下のいずれかを必ず採用することが求められています。 

 

① **派遣先均等・均衡方式** 

派遣先の通常の労働者と均等・均衡な待遇を確保する方式です。 

たとえば、派遣先企業の正社員と同様の基本給や手当、福利厚生を基準とする形です。 

 

② **労使協定方式** 

派遣元である派遣会社と、過半数労働組合または労働者代表との間で労使協定を締結し、その協定に基づき待遇を決める方式です。 

ただし、この場合には「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」と同等以上であることが条件となります。 

 

つまり、労使協定方式を採用する場合には、厚労省が公表する賃金水準を下回る設定は認められません。 

 

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## 3. 労使協定方式の基本ルール

 

労使協定方式の大きな特徴は「全国一律の賃金水準」を基準とすることです。 

 

例えば「事務職」や「販売職」など職種ごとに設定される平均的な賃金水準があり、それと同等以上の給与水準を確保する必要があります。 

派遣会社が自由に数字を決められるわけではなく、公表された水準を最低ラインとして、労使協定を結ぶことが条件です。 

 

また、協定には以下の内容を盛り込む必要があります。 

- 対象となる派遣労働者の範囲 

- 賃金水準の根拠(公表数値) 

- 賞与や退職金をどう扱うか 

- 教育訓練の方針 

 

単なる給与額の取り決めにとどまらず、派遣労働者の処遇全般に関わる包括的な協定となります。 

 

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## 4. 厚労省が公表した令和8年度の賃金水準

 

今回発表されたのは「令和8年度に適用される一般労働者の賃金水準」です。 

これは、毎年更新されるもので、最新の統計をもとに局長通達という形で公表されます。 

 

この数値は職種ごとに細かく設定されています。例えば、事務系、技術系、販売系などに分かれ、それぞれの平均賃金が示されています。 

 

派遣会社が労使協定方式を採用する場合には、この賃金水準を必ず参照し、給与設計に反映させる必要があります。 

もしもこの水準を下回る設定をしてしまうと、法令違反となり行政指導や改善命令の対象になるリスクがあります。 

 

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## 5. 公表された独自統計の協議とは?

 

「独自統計の協議」というのは、労使協定方式において例外的に厚労省の統計以外のデータを基準とするケースを指します。 

 

例えば、業界団体が独自に行った調査や、特定の職種に特化した統計が存在する場合、労使協定でその数値を採用できるかどうかを厚労省と協議することになります。 

 

令和8年度に向けても、この「独自統計」が使えるかどうかの指針が示されており、業界ごとに検討が進められています。 

派遣会社としては、自社の派遣労働者が従事する職種に応じて、厚労省公表数値と独自統計のどちらを採用するか判断が求められます。 

 

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## 6. 労使協定方式を選ぶメリットとデメリット

 

労使協定方式には、次のようなメリットとデメリットがあります。 

 

**メリット** 

- 全国一律の基準があるため、数値が明確で分かりやすい 

- 派遣先の給与水準をすべて調べる必要がなく、実務がシンプル 

- 派遣先企業との交渉負担が軽減される 

 

**デメリット** 

- 公表された水準が予想以上に高い場合、利益率が圧迫される 

- 協定対象の範囲設定を誤ると、後で是正が必要になる 

- 派遣労働者の期待とのギャップが生じる可能性 

 

つまり「実務の分かりやすさ」と「コスト増加リスク」が表裏一体であると言えます。 

 

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## 7. 派遣先均等・均衡方式と比較した実務上の違い

 

一方、派遣先均等・均衡方式を選ぶとどうなるでしょうか。 

 

こちらは派遣先の正社員や契約社員の待遇を調べ、それと均等・均衡な条件を整える必要があります。 

 

**派遣先均等・均衡方式の特徴** 

- 派遣先の給与規程や手当制度を細かく確認する必要がある 

- 派遣先の協力が不可欠で、情報開示を求める場面が多い 

- 派遣先ごとに条件が変わるため、実務負担は大きくなる 

 

ただし、派遣先が積極的に情報提供してくれる場合には「自社に合わせた柔軟な設定」ができるというメリットがあります。 

 

つまり、派遣先との関係性や規模感によってどちらの方式を選ぶべきかが変わるということです。 

 

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## 8. 派遣会社が実務で注意すべきポイント

 

令和8年度に向け、派遣会社が注意すべきポイントは以下の通りです。 

 

1. 公表された賃金水準を確認し、現行の給与水準との差を把握する 

2. 労使協定方式を選ぶか、均等・均衡方式を選ぶかを再検討する 

3. 労働者代表の選任や協定締結の手続きを適正に進める 

4. 賃金だけでなく教育訓練や福利厚生の扱いについても整理する 

5. 派遣先との関係性を考慮し、必要に応じて交渉を行う 

 

特に、給与水準の改定によりコストが増える場合は「派遣料金の見直し」を派遣先に提案する必要があります。 

 

---

 

## 9. 社会保険労務士が提案する最適な選び方

 

社会保険労務士として感じるのは「方式選択に絶対の正解はない」ということです。 

 

- 大手派遣会社で派遣先が多岐にわたる場合は、労使協定方式で統一する方が管理しやすいケースが多いです。 

- 一方、派遣先が少数かつ密接な関係を築いている場合は、均等・均衡方式を選んだ方がコスト面で有利になる場合もあります。 

 

重要なのは、 

「会社の利益を守りつつ、派遣社員が納得できる待遇を整えること」 

そして、そのために **派遣先との関係構築を怠らないこと** です。 

 

当事務所では、各社の状況に合わせてシミュレーションを行い、最適な方式を選ぶお手伝いをしています。 

 

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## 10. まとめ:令和8年度を見据えた準備と次のアクション

 

令和8年度に適用される新しい賃金水準が公表されたことで、派遣会社は早めの準備が求められます。 

 

- 公表された数値を確認し、自社の給与水準と照らし合わせる 

- 労使協定方式か均等・均衡方式かを改めて検討する 

- 必要に応じて労使協定の更新や派遣先との交渉を進める 

 

派遣労働市場は制度変更に大きく左右されるため、「出遅れないこと」が最大のリスク管理になります。 

 

📌 令和8年度に向けた待遇設計に不安を感じる方へ 

当事務所では、1時間の無料相談を承っています。数字の解説から実務への落とし込みまで、現場に即したアドバイスをご提供いたします。 

 

安心して派遣社員に働いてもらうことが、結果的に派遣会社の信頼と利益を守ることにつながります。 

ぜひ早めに動き出しましょう。 

 

お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。

 

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🔗 参考リンク 

令和8年度適用「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html 

 

「労使協定方式における独自統計の協議」 

https://www.mhlw.go.jp/content/001547255.pdf 

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セミナーについて

当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。

セミナー開催実績例
  • 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
  • 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
  • 新規採用をお考えの事業者様向け
    「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
  • 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」

講演について

当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。

講演実績

日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修

「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」

【参加者様からのお声】

  • 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
  • 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
  • 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
  • マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。

一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」

【参加者様からのお声】

  • メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
  • 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
  • メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
  • 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
  • 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
  • 株式会社LEC 様 主催
    「介護雇用管理研修」業務委託登録講師
  • 株式会社フィールドプランニング 様 主催
    「派遣元・派遣先責任者講習」業務委託主任講師
  • 神奈川韓国商工会議所様 主催
    経営者セミナー「お役立ち助成金講座
    (雇用の確保と5年ルールへの対応策)」
  • 日本経営開発協会様 御紹介
    株式会社根布工業様 主催
    安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ

講演会の講師紹介・講師派遣なら講演依頼.com

研修について

当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。

研修のご依頼例

  • 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
  • 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
  • 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい

執筆のご依頼

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HP記事執筆

ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。

「働き方改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。

「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」

「SR」 9月号

SR 9月号

ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。

ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。

(第27号 2012年8月6日発売)

元職員が指南する!ハローワークの効果的な利用の仕方

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