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NEW 雇止めトラブルを防ぐ!派遣会社のための無期転換・3年ルール対応策   2025.08.29

1. **導入:派遣会社が直面する「雇止め」と「無期転換」の課題** 

近年、派遣会社を取り巻く環境は大きく変化しています。特に「雇止め」と「無期転換ルール」は、労働契約法や派遣法の改正により、派遣会社が避けて通れない重要課題となっています。派遣社員を雇用する際、「期間満了だから契約終了」と単純に考えてしまうと、後に「不当な雇止め」と判断されるリスクが高まります。実際に、契約更新を期待できる状況での雇止めは違法とされ、訴訟に発展するケースも増えています。

 

一方で、2013年に施行された「無期転換ルール」により、同一の使用者との有期契約が通算5年を超えると、労働者からの申込みで無期雇用に転換する権利が発生します。これを避けようとした更新拒否も「脱法的な雇止め」として問題視されやすくなりました。さらに2024年4月以降は、契約書に「更新上限」や「無期転換後の労働条件」を明示することが義務づけられ、派遣会社の契約管理はより複雑になっています。

 

派遣社員の雇用安定を尊重しつつ、法的リスクを避けるためには、雇止めや無期転換のルールを正しく理解し、契約管理・運用を徹底することが欠かせません。派遣会社にとっては、信頼を守りながら安定的な事業運営を行うための大きな課題といえるでしょう。

 

2. **労働契約法改正と雇止め法理の明文化** 

2012年の労働契約法改正は、「雇止め」に関する法理を明文化した大きな転換点でした。それまで雇止めの有効性は判例法理で判断されていましたが、改正により労契法19条として条文化され、派遣会社を含む使用者側は一層慎重な対応を求められるようになりました。

 

具体的には、①期間の定めのある契約であっても、実質的に期間の定めがないと同視できる場合(実質無期型)、②契約の更新を合理的に期待できる状況がある場合(期待保護型)には、使用者が更新拒否するには合理的な理由と社会的相当性が必要とされています。

 

判例でも東芝柳町工場事件や日立メディコ事件などで雇止めの判断枠組みが示されており、これらを踏まえて改正法は「雇止め法理」を明確に位置づけました。その結果、「契約期間が満了すれば当然に終了」といった従来の認識は通用しにくくなり、更新可否を判断する際には労働者の勤務態度、能力、会社側の指導体制、他の社員との公平性など多面的な事情を考慮しなければなりません。

 

派遣会社にとっては、この明文化により「更新しない」という判断のハードルが高くなったことを意味します。適切な記録や教育指導の履歴を残さなければ、雇止めが無効とされるリスクがあるため、日常の労務管理の重要性が一層増しています。

 

3. **無期転換ルールの基本と2018年以降の実務影響** 

無期転換ルールは、2012年の労働契約法改正で導入され、2013年4月から施行されました。その仕組みは、同一の使用者との間で有期労働契約を繰り返し締結し、その通算契約期間が5年を超えた場合、労働者が申込みをすることで期間の定めのない労働契約(無期雇用)に転換できるというものです。実際に無期転換権が発生し始めたのは2018年4月であり、この時期から派遣会社を含む多くの企業で対応が急務となりました。

 

このルールにより、契約の度に「無期転換申込権があること」や「無期転換後の労働条件」を明示することが求められ、契約書や労働条件通知書の記載が複雑化しました。また、労働者が申込権を行使する直前に契約更新を拒否する、いわゆる「無期転換逃れ」の雇止めは不当とされ、訴訟に発展する例も見られます。これにより、派遣会社は契約管理を従来以上に厳密に行わなければならなくなりました。

 

さらに、クーリング期間(6か月以上空ければ通算しない)があるものの、実務上は空白期間を設けること自体が難しいケースも多く、制度を形式的に回避することは現実的ではありません。無期転換ルールは派遣社員の雇用安定を図る趣旨であるため、派遣会社としては制度を前向きに捉え、安定雇用と企業経営の両立を模索する姿勢が求められます。

 

4. **2024年4月からの労働条件明示義務の追加点** 

2024年4月から、労働基準法施行規則が改正され、有期労働契約を結ぶ際の「労働条件明示義務」が大幅に強化されました。派遣会社にとって特に重要なのは、これまで以上に契約更新や無期転換に関する情報を労働者に明確に伝える必要がある点です。

 

具体的には、

①契約更新の上限(期間や回数)の有無と内容、

②無期転換申込機会があること、

③無期転換後の労働条件、

これらを更新の度に明示する義務が追加されました。

 

これにより、派遣会社は「いつまで更新可能か」「無期転換を申し込むとどのような条件になるか」を契約書や労働条件通知書で具体的に示さなければなりません。従来のように曖昧な表現や口頭での説明では不十分であり、労働者に誤解を与えれば後のトラブルにつながります。また、更新上限を新たに設定したり短縮する場合には、その理由を事前に説明する義務も課せられています。

 

この改正は、派遣社員を含む有期労働者の雇用安定を強く意識したものです。派遣会社としては、契約書式の見直しや管理体制の整備が急務であり、実務担当者は常に最新の法改正に沿った対応を意識する必要があります。適切な明示は、リスク回避だけでなく労働者からの信頼を得ることにも直結します。

 

5. **雇止め判断に必要なチェックポイント** 

雇止めを検討する際には、「契約期間が終われば自動的に終了」と単純に判断するのは危険です。労働契約法19条では、実質的に無期雇用と同視できる場合や、契約更新を合理的に期待できる場合には、雇止めに合理的な理由と社会的相当性がなければ無効とされます。そのため、派遣会社としては、以下のチェックポイントを押さえておく必要があります。

 

第一に、労働者の能力不足や勤務態度が更新拒否の理由となる場合、その程度が著しいものであるかどうかが問われます。単に平均以下という理由では足りず、業務遂行に支障があるほどでなければなりません。第二に、改善の機会を与えたかどうかです。注意指導や研修、配置転換などを行い、それでも改善が見られなかったことを記録しておくことが重要です。第三に、他の労働者との公平性や会社側の対応の適切さも考慮されます。同じ成績の社員が複数いるのに一人だけ雇止めとする場合などは、不合理と判断されやすくなります。

 

これらの要素を総合的に確認し、記録を残しておくことで、万が一紛争に発展した際にも会社を守ることができます。雇止め判断は慎重に行い、透明性と一貫性を持たせることが派遣会社のリスク回避につながります。

 

6. **退職勧奨と雇止めの違い** 

「退職勧奨」と「雇止め」は混同されやすい概念ですが、法律上も実務上も大きな違いがあります。まず、雇止めは期間の定めのある労働契約が満了した際に、使用者が更新を拒否することで雇用関係を終了させるものです。一方、退職勧奨は、契約期間の有無にかかわらず、会社が労働者に対して「退職してはどうか」と働きかける行為であり、労働者本人の合意によって成り立ちます。つまり、雇止めは会社側の一方的判断が中心であるのに対し、退職勧奨は労働者の意思を尊重するプロセスが不可欠です。

 

注意すべきは、退職勧奨が行き過ぎると「強要」や「不当な圧力」とみなされるリスクがある点です。長時間の説得や威圧的な言動によって自由な意思決定を妨げれば、後に無効や損害賠償請求につながる可能性があります。逆に、適切に行えば、解雇や雇止めと比べて紛争リスクを低減できる柔軟な手段となります。

 

派遣会社にとっては、契約満了時の雇止めと退職勧奨を明確に区別し、状況に応じて適切に使い分けることが重要です。特に退職勧奨を行う際には、記録を残し、自由な意思を尊重したプロセスを徹底することで、不要なトラブルを防ぐことができます。

 

7. **派遣の3年ルールと無期転換の関係** 

派遣会社にとって「派遣の3年ルール」と「無期転換ルール」は、それぞれ独立した制度ですが、実務上は密接に関わっています。まず「3年ルール」とは、派遣労働者が同じ事業所や同じ部署で働ける期間に制限を設ける仕組みです。事業所単位では3年を超えて派遣社員を受け入れる場合に労働組合などへの意見聴取が必要となり、個人単位では同じ派遣社員が同一部署で3年を超えて就労することはできません。一方で「無期転換ルール」は、同一の使用者と有期契約を繰り返し5年を超えた場合、労働者からの申込みで無期雇用に転換する仕組みです。

 

ここで注意すべきは、派遣社員が派遣元(派遣会社)と契約している点です。つまり、派遣先で3年ルールにより配置転換が必要になっても、派遣元との契約期間が5年を超えれば無期転換の対象となります。このため派遣会社は、派遣先の受け入れ制限と派遣元での無期転換権発生の双方を同時に管理する必要があります。派遣先にとっても、契約終了を繰り返すことで「無期転換逃れ」と疑われるリスクがあり、対応を誤れば法的トラブルに発展しかねません。

 

派遣会社が安定した人材サービスを提供するには、この二つのルールを正しく理解し、派遣先との情報共有を徹底することが欠かせません。

 

8. **トラブル事例と最新判決の示唆** 

雇止めや無期転換をめぐるトラブルは近年増加しており、最新の判決も派遣会社や有期契約を扱う企業に重要な示唆を与えています。例えば、青山学院の非常勤講師が雇止めを争った訴訟では、講師側の請求は退けられたものの、裁判所は「更新への合理的期待」が一定程度認められるとの判断を示しました。これは、雇止めが直ちに違法とされるわけではない一方で、契約更新の経緯や労働者の期待が裁判で大きく考慮されることを示しています。

 

また、2018年以降の無期転換権の発生を前にした「駆け込み雇止め」についても、脱法的行為として無効とされるケースが見られます。特に更新を繰り返してきた労働者に対して、無期転換権が生じる直前に一方的に契約を打ち切る行為は、裁判所から厳しく判断されやすい傾向があります。

 

派遣会社にとっての教訓は明確です。契約書や就業規則に基づく形式的な対応だけでは不十分であり、実際の雇用実態や労働者の合理的期待を踏まえた判断が求められるということです。記録の管理や説明責任を果たすことはもちろん、更新や終了の判断を行う際には、社会的相当性が担保されているかを常に確認することが、トラブル回避の鍵となります。

 

9. **派遣会社が取るべき実務対応チェックリスト** 

派遣会社が雇止めや無期転換に関するトラブルを防ぐためには、日常的な実務対応を徹底することが欠かせません。以下は最低限押さえておきたいチェックリストです。

 

①契約書・労働条件通知書の整備です。更新の有無、更新基準、更新上限、無期転換後の労働条件を明示し、法改正に対応した様式を使用する必要があります。

②更新可否の判断基準を社内で明確化し、労働者にもフィードバックする仕組みを作ること。更新拒否を行う場合には合理的理由を文書化しておくことが重要です。

③能力不足や勤務態度を理由にする場合は、注意・指導・研修など改善の機会を与え、その記録を残すこと。

④派遣先との情報共有も欠かせません。派遣の3年ルールや無期転換ルールの発生時期を双方で把握し、誤解や行き違いを防ぐ体制を構築しましょう。

⑤契約終了や退職勧奨を行う場合には、労働者の自由意思を尊重し、説得や説明の過程を適切に記録すること。

 

これらを徹底することで、万一トラブルが生じても会社を守り、同時に労働者からの信頼を得ることができます。派遣会社にとっては、法令遵守と信頼性の確保が事業継続の基盤となるのです。

 

10. **まとめ:リスク回避と信頼獲得のために** 

雇止めや無期転換ルール、さらには派遣の3年ルールは、派遣会社にとって避けて通れない課題です。これらは単なる法律上の義務ではなく、派遣社員の雇用安定と派遣会社の信頼性を左右する重要な要素といえます。不当な雇止めや不透明な契約管理は、労働審判や裁判に発展するリスクを高めるだけでなく、取引先や派遣社員からの信頼を失う大きなダメージにつながります。

 

一方で、契約書や就業規則の整備、更新基準の明確化、適切な記録管理や説明責任を徹底すれば、法的リスクを大幅に低減できます。それだけでなく、派遣社員にとって「安心して働ける会社」として認識されることで、人材の定着や新規採用にも良い影響を与えます。つまり、法令遵守は単なる防御策ではなく、派遣会社にとって競争力の源泉となるのです。

 

まとめますと、リスク回避と信頼獲得は表裏一体です。派遣会社は日々の契約運用に丁寧さと透明性を加えることで、トラブルを未然に防ぎ、同時に労働者や派遣先企業からの信頼を築いていけます。そのためにも、専門家の知見を活かしながら体制を整えることが、今後ますます重要になるでしょう。

 

いつでもお気軽に当事務所までご連絡いただければ幸いです。

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※関連ニュース

「青山学院「雇い止め」訴訟で高等部の非常勤講師が敗訴も…「不当判決だが前進」評価 更新契約への“合理的期待”認められる」

https://news.yahoo.co.jp/articles/a48c93c61ed92bd58d7db9944bb7aa1fa84253ff

 

「派遣労働者における無期転換ルール|3年ルールとの関係」

https://xn--alg-li9dki71toh.com/roumu/dispatch/indefinite-conversion-rules-for-temporary-workers/

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 などなど、多くのお客様に喜ばれております。

セミナーについて

当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。

セミナー開催実績例
  • 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
  • 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
  • 新規採用をお考えの事業者様向け
    「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
  • 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」

講演について

当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。

講演実績

日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修

「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」

【参加者様からのお声】

  • 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
  • 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
  • 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
  • マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。

一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」

【参加者様からのお声】

  • メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
  • 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
  • メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
  • 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
  • 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
  • 株式会社LEC 様 主催
    「介護雇用管理研修」業務委託登録講師
  • 株式会社フィールドプランニング 様 主催
    「派遣元・派遣先責任者講習」業務委託主任講師
  • 神奈川韓国商工会議所様 主催
    経営者セミナー「お役立ち助成金講座
    (雇用の確保と5年ルールへの対応策)」
  • 日本経営開発協会様 御紹介
    株式会社根布工業様 主催
    安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ

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ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。

「働き方改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。

「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」

「SR」 9月号

SR 9月号

ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。

ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。

(第27号 2012年8月6日発売)

元職員が指南する!ハローワークの効果的な利用の仕方

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