令和8年度の労使協定方式|派遣会社が知っておくべき賃金水準と実務対応
2025.08.27
## 1. 導入:令和8年度に向けた重要な制度変更
令和7年8月25日、厚生労働省から「令和8年度に適用される同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」が公表されました。
さらに、「労使協定方式における独自統計の協議」についても発表されています。
これは、派遣会社にとっては見逃せない重要な情報です。なぜなら、派遣労働者の待遇決定に直結する「労使協定方式」において、この賃金水準が基準となるからです。
この記事では、社会保険労務士の立場から、令和8年度の最新情報をもとに派遣会社が実務で注意すべきポイントを整理し、対応の方向性を提案します。
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## 2. 労働者派遣法における2つの待遇決定方式とは
労働者派遣法では、派遣労働者の待遇決定において以下のいずれかを必ず採用することが求められています。
① **派遣先均等・均衡方式**
派遣先の通常の労働者と均等・均衡な待遇を確保する方式です。
たとえば、派遣先企業の正社員と同様の基本給や手当、福利厚生を基準とする形です。
② **労使協定方式**
派遣元である派遣会社と、過半数労働組合または労働者代表との間で労使協定を締結し、その協定に基づき待遇を決める方式です。
ただし、この場合には「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」と同等以上であることが条件となります。
つまり、労使協定方式を採用する場合には、厚労省が公表する賃金水準を下回る設定は認められません。
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## 3. 労使協定方式の基本ルール
労使協定方式の大きな特徴は「全国一律の賃金水準」を基準とすることです。
例えば「事務職」や「販売職」など職種ごとに設定される平均的な賃金水準があり、それと同等以上の給与水準を確保する必要があります。
派遣会社が自由に数字を決められるわけではなく、公表された水準を最低ラインとして、労使協定を結ぶことが条件です。
また、協定には以下の内容を盛り込む必要があります。
- 対象となる派遣労働者の範囲
- 賃金水準の根拠(公表数値)
- 賞与や退職金をどう扱うか
- 教育訓練の方針
単なる給与額の取り決めにとどまらず、派遣労働者の処遇全般に関わる包括的な協定となります。
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## 4. 厚労省が公表した令和8年度の賃金水準
今回発表されたのは「令和8年度に適用される一般労働者の賃金水準」です。
これは、毎年更新されるもので、最新の統計をもとに局長通達という形で公表されます。
この数値は職種ごとに細かく設定されています。例えば、事務系、技術系、販売系などに分かれ、それぞれの平均賃金が示されています。
派遣会社が労使協定方式を採用する場合には、この賃金水準を必ず参照し、給与設計に反映させる必要があります。
もしもこの水準を下回る設定をしてしまうと、法令違反となり行政指導や改善命令の対象になるリスクがあります。
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## 5. 公表された独自統計の協議とは?
「独自統計の協議」というのは、労使協定方式において例外的に厚労省の統計以外のデータを基準とするケースを指します。
例えば、業界団体が独自に行った調査や、特定の職種に特化した統計が存在する場合、労使協定でその数値を採用できるかどうかを厚労省と協議することになります。
令和8年度に向けても、この「独自統計」が使えるかどうかの指針が示されており、業界ごとに検討が進められています。
派遣会社としては、自社の派遣労働者が従事する職種に応じて、厚労省公表数値と独自統計のどちらを採用するか判断が求められます。
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## 6. 労使協定方式を選ぶメリットとデメリット
労使協定方式には、次のようなメリットとデメリットがあります。
**メリット**
- 全国一律の基準があるため、数値が明確で分かりやすい
- 派遣先の給与水準をすべて調べる必要がなく、実務がシンプル
- 派遣先企業との交渉負担が軽減される
**デメリット**
- 公表された水準が予想以上に高い場合、利益率が圧迫される
- 協定対象の範囲設定を誤ると、後で是正が必要になる
- 派遣労働者の期待とのギャップが生じる可能性
つまり「実務の分かりやすさ」と「コスト増加リスク」が表裏一体であると言えます。
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## 7. 派遣先均等・均衡方式と比較した実務上の違い
一方、派遣先均等・均衡方式を選ぶとどうなるでしょうか。
こちらは派遣先の正社員や契約社員の待遇を調べ、それと均等・均衡な条件を整える必要があります。
**派遣先均等・均衡方式の特徴**
- 派遣先の給与規程や手当制度を細かく確認する必要がある
- 派遣先の協力が不可欠で、情報開示を求める場面が多い
- 派遣先ごとに条件が変わるため、実務負担は大きくなる
ただし、派遣先が積極的に情報提供してくれる場合には「自社に合わせた柔軟な設定」ができるというメリットがあります。
つまり、派遣先との関係性や規模感によってどちらの方式を選ぶべきかが変わるということです。
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## 8. 派遣会社が実務で注意すべきポイント
令和8年度に向け、派遣会社が注意すべきポイントは以下の通りです。
1. 公表された賃金水準を確認し、現行の給与水準との差を把握する
2. 労使協定方式を選ぶか、均等・均衡方式を選ぶかを再検討する
3. 労働者代表の選任や協定締結の手続きを適正に進める
4. 賃金だけでなく教育訓練や福利厚生の扱いについても整理する
5. 派遣先との関係性を考慮し、必要に応じて交渉を行う
特に、給与水準の改定によりコストが増える場合は「派遣料金の見直し」を派遣先に提案する必要があります。
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## 9. 社会保険労務士が提案する最適な選び方
社会保険労務士として感じるのは「方式選択に絶対の正解はない」ということです。
- 大手派遣会社で派遣先が多岐にわたる場合は、労使協定方式で統一する方が管理しやすいケースが多いです。
- 一方、派遣先が少数かつ密接な関係を築いている場合は、均等・均衡方式を選んだ方がコスト面で有利になる場合もあります。
重要なのは、
「会社の利益を守りつつ、派遣社員が納得できる待遇を整えること」
そして、そのために **派遣先との関係構築を怠らないこと** です。
当事務所では、各社の状況に合わせてシミュレーションを行い、最適な方式を選ぶお手伝いをしています。
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## 10. まとめ:令和8年度を見据えた準備と次のアクション
令和8年度に適用される新しい賃金水準が公表されたことで、派遣会社は早めの準備が求められます。
- 公表された数値を確認し、自社の給与水準と照らし合わせる
- 労使協定方式か均等・均衡方式かを改めて検討する
- 必要に応じて労使協定の更新や派遣先との交渉を進める
派遣労働市場は制度変更に大きく左右されるため、「出遅れないこと」が最大のリスク管理になります。
📌 令和8年度に向けた待遇設計に不安を感じる方へ
当事務所では、1時間の無料相談を承っています。数字の解説から実務への落とし込みまで、現場に即したアドバイスをご提供いたします。
安心して派遣社員に働いてもらうことが、結果的に派遣会社の信頼と利益を守ることにつながります。
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🔗 参考リンク
・令和8年度適用「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
・「労使協定方式における独自統計の協議」
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- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)