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技人国ビザの外国人派遣、単純作業は禁止!派遣会社が直面するリスクと対応策   2025.09.22

### 1. 外国人派遣をめぐる最新ニュース 

 

2025年8月、入管庁が大きな方針を打ち出しました。 

「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」という在留資格を持つ外国人労働者について、派遣労働の実態を把握し、不適切な事例に是正を求めていくというものです。 

 

なぜ今、こうした動きが強まっているのでしょうか。 

背景には、**本来禁止されている単純作業を任せるケースや、資格外活動・賃金未払いなどのトラブル**が増加していることがあります。 

 

特に技人国は、大学を卒業した人材が専門知識を生かして働くための資格です。 

しかし、実際には派遣先の現場で単純作業を担っているケースが報告され、制度の趣旨から外れる働き方が問題視されています。 

 

派遣会社にとっては「業界全体への信頼」に直結するテーマ。 

今回の入管庁の方針は、派遣元としての責任を改めて考える契機になるはずです。 

 

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### 2. 技人国ビザとは?派遣会社が知っておくべき基礎知識 

 

まず押さえておきたいのは「技人国」という在留資格の基本です。 

 

- **対象となる業務**:通訳、営業、貿易、システムエンジニア、生産管理、人事など、知識や専門性を要する仕事 

- **取得要件**:原則として大学卒業以上、または実務経験10年以上など 

- **禁止されていること**:肉体労働や単純作業。工場ライン作業や清掃などは資格違反となる 

 

つまり、技人国は「ホワイトカラー的な職務」を前提に設けられている在留資格です。 

それだけに、派遣先で単純作業を担わせてしまうと、**在留資格違反に直結**します。 

 

派遣会社としては、外国人労働者を紹介する際に「どんな業務を任せるのか」を細かく確認することが不可欠です。 

 

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### 3. 外国人労働者の増加と派遣業界への影響 

 

入管庁のデータによれば、技人国で在留する外国人は2024年末時点で約41万人。 

前年より5万6千人増加し、過去最多を記録しました。 

 

そのうち、**約1割(約4万人)が派遣契約で就労**していると見られています。 

この数字は派遣業界にとって非常に大きな意味を持ちます。 

 

少子高齢化の影響で国内の労働人口が減少する中、外国人材の活用は多くの企業にとって欠かせない存在となりつつあります。 

その一方で、外国人派遣の適切な運用ができなければ、業界全体の信頼を損ねる可能性もあるのです。 

 

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### 4. 問題視されている「単純作業」派遣のリスク 

 

派遣現場で最も問題になっているのが、**本来認められていない単純作業を任せるケース**です。 

 

例えば、 

- 工場ラインでの検品や梱包 

- 倉庫での仕分けやピッキング 

- 清掃や軽作業 

 

こうした業務は「誰でもできる仕事」と判断されやすく、現場の人手不足からつい任せてしまうことがあります。 

しかし、技人国で就労する外国人にこれらの業務を担わせることは明確に資格違反となります。 

 

リスクは大きく分けて3つあります。 

1. **行政指導や資格取消の可能性** 

2. **派遣会社・派遣先の信用失墜** 

3. **外国人本人の生活基盤喪失** 

 

派遣会社としては、このリスクを未然に防ぐための仕組みづくりが必須です。 

 

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### 5. よくあるトラブル事例 

 

私が労務相談を受ける中でも、以下のような事例は少なくありません。 

 

- **資格外活動の発覚**:専門職のはずが、現場の都合で軽作業をしていた 

- **賃金未払い問題**:派遣先との契約トラブルにより給与支払いが滞る 

- **業務内容の不一致**:契約書と実際の仕事内容が異なる 

- **派遣元の把握不足**:派遣会社が現場を見ずに任せてしまう 

 

これらのトラブルは、最初から防げるものが多いのです。 

しかし、派遣先に任せきりにしてしまうことで、後になって「知らなかった」では済まされない問題に発展します。 

 

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### 6. 派遣会社に求められるコンプライアンス強化 

 

では、派遣会社が取り組むべきことは何でしょうか。 

 

1. **業務内容の事前確認** 

   派遣契約を結ぶ際に、実際の仕事内容を細かく確認し、単純作業が含まれていないかをチェックする。 

 

2. **定期的なヒアリング** 

   派遣先を訪問し、外国人がどんな業務をしているかを確認する。現場任せにしないことが重要。 

 

3. **契約内容と実務の一致確認** 

   派遣元として「書類上の業務内容」と「現場の実際の業務」が一致しているかどうかを継続的にチェックする。 

 

4. **外国人本人へのフォローアップ** 

   仕事の内容や待遇について、本人が納得しているかを確認する。相談窓口を設けることも効果的。 

 

これらを徹底することで、トラブルはかなりの割合で防げます。 

 

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### 7. 行政の動きはスピード感を持って進む 

 

入管庁は今後、有識者会議を通じて具体的な対策を検討していく予定です。 

議論次第では、派遣会社への監督強化や、新たな報告義務が課される可能性もあります。 

 

派遣会社にとって重要なのは、**「法改正が施行されてから準備する」のではなく、「事前に対応を整えておく」こと**です。 

行政のスピード感を考えれば、先手の対応こそがリスクを減らす最大の方法です。 

 

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### 8. 外国人派遣を「安心して活用できる仕組み」づくり 

 

外国人派遣は、ただ「人材を供給する」だけでは成立しません。 

派遣元としての管理体制が整っていなければ、企業からも選ばれなくなります。 

 

信頼される派遣会社になるためには、 

- 外国人材の適切な労務管理 

- 契約内容の透明性 

- トラブル発生時の迅速な対応 

 

これらを実現する仕組みが不可欠です。 

 

派遣会社がこうした体制を持っていれば、受け入れる企業も安心して外国人材を活用できます。 

つまり、**「コンプライアンスの強さ」=「派遣会社の競争力」**になるのです。 

 

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### 9. 今こそ見直すべき管理体制のチェックポイント 

 

具体的に見直すべきポイントを整理すると以下の通りです。 

 

- 派遣契約書に「実際の仕事内容」が正確に記載されているか 

- 現場での業務が単純作業に偏っていないかを定期的に確認しているか 

- 派遣先と派遣元の連携体制がスムーズに機能しているか 

- 外国人本人からの声を吸い上げる仕組みがあるか 

- トラブル発生時に迅速に対応できるマニュアルが整備されているか 

 

これらのチェックリストを定期的に確認することで、リスクを大幅に下げることができます。 

 

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### 10. まとめ:派遣会社の未来は「信頼」にかかっている 

 

今回の入管庁の方針は、単なる規制強化ではありません。 

「外国人材を安心して受け入れられる仕組みを整えてほしい」という社会全体からのメッセージでもあります。 

 

派遣会社にとっては厳しい要請のように聞こえるかもしれません。 

しかし、見方を変えれば**「他社との差別化のチャンス」**です。 

 

・コンプライアンスを徹底している 

・派遣先と協力し、適切な労務管理を実現している 

・外国人本人の働きやすさを重視している 

 

こうした体制を整えることで、派遣会社は企業からも外国人労働者からも信頼される存在になれます。 

 

これからの派遣業界は、単に「人を送る」だけではなく、「安心して任せられるパートナー」であることが求められます。 

その第一歩が、今回の入管庁の動きを契機にした管理体制の見直しなのです。 

 

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**最後に** 

派遣会社の皆さまにとって、今回のニュースは不安材料であると同時に大きなチャンスです。 

「知らなかった」「派遣先任せだった」と後悔しないよう、今こそ自社の体制を点検するタイミングではないでしょうか。 

 

私も社会保険労務士として、現場に即したアドバイスを続けていきたいと思います。 

外国人派遣を正しく活用し、業界全体が信頼を得られるよう、一緒に取り組んでいきましょう。 

 

お困りの際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

※記事リンク)

https://www.47news.jp/13021904.html

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「予め料金が分かっているので、安心して申し込めます」

 「料金交渉が不要で助かります」

 「時間単価は一定なので、研修時間数を調整すればいいから、予算との折り合いも簡単にできます」

 などなど、多くのお客様に喜ばれております。

セミナーについて

当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。

セミナー開催実績例
  • 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
  • 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
  • 新規採用をお考えの事業者様向け
    「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
  • 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」

講演について

当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。

講演実績

日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修

「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」

【参加者様からのお声】

  • 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
  • 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
  • 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
  • マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。

一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」

【参加者様からのお声】

  • メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
  • 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
  • メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
  • 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
  • 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
  • 株式会社LEC 様 主催
    「介護雇用管理研修」業務委託登録講師
  • 株式会社フィールドプランニング 様 主催
    「派遣元・派遣先責任者講習」業務委託主任講師
  • 神奈川韓国商工会議所様 主催
    経営者セミナー「お役立ち助成金講座
    (雇用の確保と5年ルールへの対応策)」
  • 日本経営開発協会様 御紹介
    株式会社根布工業様 主催
    安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ

講演会の講師紹介・講師派遣なら講演依頼.com

研修について

当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。

研修のご依頼例

  • 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
  • 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
  • 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい

執筆のご依頼

雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。

掲載履歴

HP記事執筆

ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。

「働き方改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。

「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」

「SR」 9月号

SR 9月号

ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。

ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。

(第27号 2012年8月6日発売)

元職員が指南する!ハローワークの効果的な利用の仕方

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