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派遣料金の交渉をしていない派遣元が4割?今こそ見直すべき「価格転嫁」の重要性   2025.11.10

近年、「賃上げ」という言葉をニュースや行政方針の中で耳にする機会が増えました。 

政府も「構造的な賃上げの実現」を掲げ、労務費を適正に価格へ反映させることを強く求めています。 

 

そんな中、派遣業界にも大きな変化の波が訪れています。 

日本人材派遣協会が実施した「派遣先担当者調査」によれば、派遣会社から派遣料金の値上げ依頼があった企業のうち、**77.9%が値上げに応じた** という結果が出ました。 

 

これは前年(76.6%)からさらに上昇しており、企業が派遣社員の働きぶりや社会的な賃上げ機運を理解していることを示しています。 

一方で見逃せないのが、**派遣元の約40.6%が「派遣料金の値上げ依頼をしていない」** という事実です。 

 

本記事では、この「値上げを依頼していない派遣元」が抱える課題と、今こそ取り組むべき「価格転嫁」の重要性について、社会保険労務士の視点から詳しく解説していきます。

 

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## 1. 派遣料金の値上げに応じた企業は8割超。その背景とは

 

今回の調査では、派遣先企業の77.9%が派遣料金の値上げに応じています。 

この高い割合の背景には、次のような理由があります。

 

- **社会的な要請だから(73.8%)** 

- **派遣社員の働きぶりに満足しているから(42.8%)** 

 

つまり、企業は「賃上げをしなければならない社会的責任」を感じると同時に、派遣社員の働きに価値を見出しているのです。 

ここには「派遣=一時的な労働力」という古いイメージから、「派遣=即戦力で信頼できる人材」へと意識が変化している現状があります。

 

この変化は、派遣業界全体にとって追い風と言えるでしょう。 

しかし、ここで立ち止まって考えたいのが「派遣元の4割が交渉を行っていない」という現実です。

 

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## 2. なぜ派遣料金の値上げ交渉をしていない派遣元が存在するのか?

 

派遣元が料金交渉を行わない理由はさまざまです。 

現場でよく耳にするのは、以下のような声です。

 

- 「派遣先との関係が悪くなるのが怖い」 

- 「値上げを言い出すタイミングがわからない」 

- 「労使協定で賃金を上げても、派遣料金を上げる根拠をうまく示せない」 

- 「他社が値上げをしていないため、交渉の競争力を失うのが不安」 

 

気持ちはとてもよく分かります。 

特に取引関係が長い企業ほど、派遣料金の交渉は心理的なハードルが高いものです。 

 

しかし、これを続けてしまうと、派遣元の利益が圧迫され、結果的に派遣労働者の待遇やキャリア支援の質を維持できなくなります。 

つまり、**交渉を避けることが、結果的に「人材を守れない経営」につながってしまう** のです。

 

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## 3. 政府も動いた「労務費の適切な転嫁」への指針

 

こうした状況を受け、国も明確な姿勢を打ち出しています。 

2023年、内閣官房と公正取引委員会は共同で「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定しました。 

 

この指針は、発注側(派遣先企業など)が受注側(派遣会社)に対し、 

「労務費上昇分を正当に反映した価格で契約を行うようにすべき」と定めたものです。 

 

つまり、国としても「賃金上昇を価格に反映しないことは問題である」と明確に位置づけています。 

派遣会社が料金改定を申し出ることは、決してわがままではありません。 

むしろ、「法律・指針に沿った正しい経営判断」なのです。

 

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## 4. 「派遣料金=労働条件」の根幹を支える仕組み

 

派遣料金の値上げは、単なる「営業上の話」ではありません。 

それは派遣労働者の賃金・待遇・キャリア形成のすべてに直結する「制度の根幹」です。 

 

例えば、派遣料金が据え置かれたままだと、次のような影響が出ます。

 

- 派遣社員の賃金を上げられない 

- 教育・研修・フォローにかける予算が減る 

- 優秀な人材が流出する 

- 労使協定における適正な賃金設定が困難になる 

 

これでは「働く人が安心して働ける仕組み」を保つことができません。 

派遣労働者を守るという観点からも、**料金交渉は経営と労務の両面で不可欠な行為** と言えます。

 

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## 5. 派遣料金を見直すベストタイミングは「今」

 

2025年現在、賃上げの流れは社会的にも企業的にも止まりません。 

むしろ、インフレ・人材不足・最低賃金上昇といった要因により、「価格転嫁」は避けて通れないテーマになっています。 

 

派遣会社にとって、この流れはチャンスでもあります。 

なぜなら、派遣先企業の7〜8割が「今後も派遣活用を継続・拡大する」と回答しているからです。 

 

つまり、企業は派遣という仕組みを信頼し、今後も利用していく意向を持っている。 

その信頼関係を維持しながら、正当な料金を設定することは、**双方にとっての持続可能な関係づくり** につながります。

 

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## 6. 値上げ交渉を成功させる3つのポイント

 

料金交渉をスムーズに進めるためには、感情ではなく「データ」と「根拠」に基づいた説明が重要です。 

以下の3つのステップを意識してみてください。

 

### ① 職種ごとの労務費を可視化する 

まずは労使協定で設定している職種・等級ごとの賃金を整理し、前年からの上昇率を明確にします。 

「この職種の平均賃金は前年比で〇%上がっています」という客観的データがあるだけで、交渉の説得力は大きく変わります。

 

### ② 業界動向と比較して説明する 

他社の値上げ動向や業界平均を踏まえ、「相場の中で適正な改定である」と示すことも重要です。 

特に協会や行政の公表資料を引用すれば、信頼性が高まります。

 

### ③ 人材の定着・品質向上を交渉材料に 

派遣料金を上げることで、結果的に派遣先の満足度が上がることを伝えましょう。 

教育・研修・フォロー体制を強化することで、「より質の高い派遣社員を確保できる」という視点は企業にとって納得しやすい理由になります。

 

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## 7. 派遣社員の質が「値上げを正当化する最大の要因」

 

調査では、派遣社員の働きぶりに満足している企業ほど、値上げに応じている傾向が見られました。 

これはつまり、**派遣社員の質の高さが派遣会社の交渉力そのもの** になっているということです。

 

派遣元としては、教育・フォロー体制をさらに充実させ、「信頼できる人材を送り出す会社」というブランドを築くことが、結果的に価格交渉を有利にします。 

単に「値上げしてください」ではなく、「人材の質を維持するために必要な改定です」と伝えることがポイントです。

 

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## 8. 令和8年度の労使協定に向けて準備を

 

次回の労使協定締結に向けて、今から動き出すことが大切です。 

職種の選定・賃金水準の見直し・賃金分析など、早めの準備が交渉の成否を分けます。 

 

多くの派遣会社がギリギリの時期に慌ただしく対応していますが、労使協定は「形を整える書類」ではなく、**派遣会社の経営方針を明文化する重要な契約** です。 

派遣料金の見直しも、この協定の内容と整合性をとることが求められます。

 

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## 9. 社会保険労務士が伝えたい「交渉の本質」

 

私が多くの派遣会社を支援してきた中で感じるのは、料金交渉を「相手にお願いする行為」と捉えているケースが多いということです。 

 

しかし本来、料金交渉とは「適正な労務費を社会に反映する」ための経営的責任です。 

派遣社員の生活を守り、業界全体の信頼を高める行為でもあります。 

 

言い換えれば、**派遣料金の交渉は“人を守る交渉”なのです。**

 

その視点を持つことで、交渉の場での自信や言葉の重みが変わってきます。

 

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## 10. まとめ:派遣料金の見直しは「業界の未来」への投資

 

派遣料金の見直しは、単なる金額の問題ではありません。 

それは、派遣業界全体の健全な成長と、派遣労働者が安心して働ける社会を築くための「基盤づくり」です。 

 

今後も人手不足が続く中で、「良い人材を確保できる派遣会社」こそが選ばれる時代になります。 

そのためには、適正な価格で取引を行い、派遣社員・派遣先・派遣元の三者が信頼でつながる関係を築くことが不可欠です。 

 

📩 労使協定の見直しや派遣料金交渉についてのご相談は、ホームページのお問合せよりいつでもお受けしています。 

初回相談は無料です。 

一緒に「人を守り、企業を強くする仕組み」を整えていきましょう。

 

【参照記事】

https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/803864

 

【派遣料金交渉の参考資料】

派遣元・派遣先の連携について(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/001547832.pdf

「正社員を確保できない」が41%――派遣・非正規人材の活用が進む理由とは?   2025.11.07

厚生労働省が2024年(令和6年)に公表した「就業形態の多様化に関する総合実態調査」。 

この調査結果が、今の日本の“人材戦略の現実”を如実に示しています。 

 

結果の中で最も注目されたのが、 

企業が「正社員以外の労働者を活用する理由」として 

**「正社員を確保できないため」(41.0%)** 

と答えた割合が最も高かったという点です。 

 

この数字は、単なる人材調達の一側面ではなく、 

「人手不足の構造化」と「働き方の価値観変化」が同時に進行していることを意味します。 

本記事では、社労士の視点からこの調査結果を紐解き、 

派遣会社をはじめとする人材ビジネスがどう変わるべきかを考えます。 

 

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## 1. 正社員を確保できない時代の到来

 

人材確保難は、もはや特定の業界の話ではありません。 

製造、物流、介護、サービス、小売など、幅広い分野で「正社員が集まらない」状況が続いています。 

 

その背景にはいくつかの要因があります。 

 

- **人口減少と労働力人口の減少** 

少子高齢化が進む中で、働き手そのものが減っている。 

特に若年層の採用は競争が激しく、地方企業では深刻です。 

 

- **働く人の価値観の変化** 

「仕事中心」から「生活と両立」へ。 

正社員としてフルタイムで働くよりも、柔軟な働き方を求める人が増えています。 

 

- **正社員の責任・負担の重さ** 

近年、業務の多様化・複雑化により、正社員の仕事量と責任が増大。 

結果として、「正社員は避けたい」という層も少なくありません。 

 

こうした中で、企業は「必要な人材を確保するため」に、 

派遣・契約社員・パートタイムといった“非正規雇用”を活用せざるを得ない状況になっています。 

 

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## 2. 「非正規活用」はもはや戦略の一部

 

かつては“正社員=本体、非正規=補助”という構図が一般的でした。 

しかし今は、派遣社員や契約社員が事業の中核を担うケースも増えています。 

 

実際、調査結果では「非正規の比率が上昇した」と回答した企業が15.7%に上りました。 

中でも「パートタイム労働者」(66.2%)と「嘱託社員(再雇用者)」(22.4%)が目立っています。 

 

つまり企業は、業務内容や繁閑、採用難に応じて“最適な働き方の組み合わせ”を模索しているのです。 

 

この流れは一時的なものではなく、**持続的な経営戦略の一部**として定着しつつあります。 

 

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## 3. 労働者側の選択も変化している

 

一方で、労働者側の理由も見逃せません。 

正社員以外の働き方を選ぶ理由のトップは、 

「自分の都合のよい時間に働けるから」(40.1%)でした。 

 

これは、子育て・介護・副業・趣味など、 

“働く以外の時間を大切にしたい”という価値観の広がりを示しています。 

 

また、派遣労働者に関しては、 

「正社員として働ける会社がなかったから」という回答も依然として多く、 

働き方の選択には「自由」と「制約」が同居しています。 

 

このように、 

企業は「人がいない」から非正規を活用し、 

働く人は「柔軟に働きたい」から非正規を選ぶ。 

 

両者のニーズは交差しているようで、実は微妙にズレています。 

 

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## 4. 派遣会社が果たすべき新たな役割

 

この“ズレ”を埋めるのが、派遣会社の使命です。 

 

派遣ビジネスは、単なる人材の「供給モデル」から、 

企業と働く人の「価値をつなぐモデル」へと進化する必要があります。 

 

派遣先企業の課題は「即戦力」と「安定した人材確保」。 

派遣スタッフの課題は「安心して働ける環境」と「キャリア形成」。 

 

この双方を橋渡しできる派遣会社こそ、今後の市場で選ばれていくでしょう。 

 

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## 5. 「即戦力」から「成長力」へ

 

従来、企業が派遣に求めていたのは即戦力。 

しかし長期的に見ると、それだけでは持続性がありません。 

 

派遣スタッフが定着し、スキルを高めていくことで、 

結果的に企業の生産性が上がり、派遣会社の信頼も向上します。 

 

そのためには、次のような取り組みが欠かせません。 

 

- **リスキリング・スキルアップ支援の仕組み化** 

- **派遣スタッフのキャリアカウンセリング制度の導入** 

- **「派遣→直接雇用」への道筋の設計** 

 

これらを通じて、派遣スタッフに“成長の手応え”を感じてもらうことが大切です。 

 

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## 6. 「派遣→直接雇用」の流れが生まれる背景

 

調査では「正社員を確保できない」が41%という結果でしたが、 

これは裏を返せば、「派遣社員が正社員になるチャンスが増える」ということでもあります。 

 

企業側にとっては、派遣社員を通じて人柄・スキルを見極めたうえで採用できる。 

派遣スタッフにとっては、派遣期間中に自分の実力を示せる。 

 

この「双方にとってリスクの少ない採用ルート」は、 

今後ますます一般化していくでしょう。 

 

派遣会社としても、 

この流れを後押しできる仕組みを整えておくことが、 

大きな信頼につながります。 

 

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## 7. 「柔軟な働き方」を支える仕組みが鍵

 

企業が人材を確保する上で、 

今や“柔軟な働き方”を提供できるかどうかが大きな差別化要因です。 

 

例えば―― 

・週3日勤務や時短勤務の提案 

・副業人材やリモート派遣の導入 

・短期プロジェクト派遣の制度化 

 

こうした柔軟な働き方の設計を、 

派遣会社が企業と一緒に考えることが、これからのスタンダードになります。 

 

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## 8. 派遣スタッフの「満足度」を上げるには

 

厚労省の調査では、 

正社員が最も満足している項目は「雇用の安定性」(66.3ポイント)。 

一方、非正規では「仕事の内容・やりがい」(63.3ポイント)がトップでした。 

 

つまり、非正規の方は“仕事そのもの”には満足しているが、 

“安定性”には不安を抱えているという構図です。 

 

派遣会社がここをどう補うか。 

 

・定期的なフォローアップ 

・派遣期間終了前の次の仕事の確保 

・相談体制の充実 

 

これらの支援が、「この派遣会社で働き続けたい」という信頼につながります。 

 

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## 9. 社労士として見た法的・制度的ポイント

 

派遣・非正規活用が進む中で、法的リスクにも注意が必要です。 

 

特に以下の点は要チェックです。 

 

- **派遣法に基づく期間制限(原則3年)** 

- **派遣先での直接雇用申し込み義務** 

- **同一労働同一賃金への対応** 

 

これらの法令遵守が不十分だと、 

企業も派遣会社もトラブルリスクを抱えることになります。 

 

社労士としては、 

制度運用の整備や契約書の適正化、 

労働者への説明責任をしっかり果たすサポートが重要です。 

 

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## 10. まとめ:「人を送る」から「雇用をデザインする」へ

 

今回の調査結果が示すのは、 

日本の雇用が“多様性を前提とした構造”に変わりつつあるということ。 

 

企業は「正社員不足」に悩み、 

働く人は「柔軟な働き方」を求める。 

 

その間に立つ派遣会社は、 

単なる人材供給業から「雇用をデザインするパートナー」へと進化する時代を迎えています。 

 

今後の派遣会社には、 

・人材育成に投資できる力 

・企業課題を共に解決する発想 

・労務管理の正確性と信頼性 

 

この3つが欠かせません。 

 

社労士として現場を見ていると、 

派遣会社が果たす社会的役割は年々大きくなっています。 

「人を送る」から「人を育て、つなぎ、活かす」へ。 

 

人手不足の時代こそ、 

派遣会社が“雇用のハブ”として輝くチャンスです。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

 

【参照リンク】

厚生労働省「令和6年就業形態の多様化に関する総合実態調査の概況」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keitai/24/index.html

 

――――――――――――――――――――――――― 

執筆:社会保険労務士 泉文美(派遣業・労務リスクマネジメント専門) 

 

#人材派遣 #人手不足 #就業形態多様化 #社労士コラム #リスキリング #雇用戦略 #働き方改革 #人材育成

「派遣だから関係ない」は通用しない?医療・福祉派遣のメンタルリスク最前線   2025.11.05

### はじめに:医療・福祉業界で今、何が起きているのか 

 

「医療・福祉業界で働く人の精神障害による労災認定が、過去最高に達した」 

厚生労働省が公表した「令和7年度版 過労死等防止対策白書」は、この事実を明らかにしました。 

 

2024年の精神障害に関する労災保険給付請求件数は**969件**。 

前年比で12%増、2020年と比べると**約2倍**という急増ぶりです。 

 

数字だけを見ると驚きますが、現場を知る方なら「やはり」という印象を持たれたかもしれません。 

コロナ禍以降、医療や介護の現場は慢性的な人手不足に加え、感情労働・夜勤・感染リスクといった複合的なストレスを抱えています。 

 

さらに2023年以降は、いわゆる「ポストコロナ期」の回復過程で、 

職員の離職や新人育成の遅れ、残業増加などが重なり、精神的負担が増しているのが現状です。 

 

こうした状況のなかで、労災認定が増えるのは必然とも言えます。 

しかし、ここで見落としてはいけないのは、**「派遣スタッフ」もこの渦中にいる**という事実です。 

 

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### 「派遣だから関係ない」は、もはや通用しない時代 

 

かつては、派遣スタッフの労務管理に関して、派遣元と派遣先の責任分界が比較的明確でした。 

派遣先が日常の指揮命令を行い、派遣元は契約上の労働条件を守る。 

 

しかし今、医療・福祉分野での精神障害やメンタル不調については、 

**「派遣元にも安全配慮義務がある」**という視点が強まっています。 

 

たとえば、次のようなケースがあります。

 

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#### 【事例1】派遣先でのパワハラを見逃したケース 

 

看護助手として派遣されたスタッフが、派遣先のリーダー看護師から繰り返し叱責を受けていた。 

派遣元は月1回の勤務報告を受け取っていたが、本人が「問題ありません」と回答したため、特に対応を取らなかった。 

その後、スタッフは体調不良で退職し、労災申請を行う。 

 

結果、派遣先の行為が直接原因であると同時に、**派遣元の監督不足**も問われることになった。 

 

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#### 【事例2】勤務時間・夜勤回数の把握が不十分だったケース 

 

介護施設に派遣された職員が、シフト変更を繰り返され、実際には月に10回以上の夜勤を担当。 

派遣元は派遣先からの勤怠データを「月末一括」でしか確認しておらず、実態を把握できていなかった。 

結果、心身の不調を訴えた職員が長期休職。 

 

「派遣元は労働時間の把握を怠った」として、労基署から是正指導を受けた。 

 

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このような事例は、決して珍しくありません。 

派遣先で起きたことでも、「派遣元がどこまで把握し、どのように対応したか」が問われる時代なのです。 

 

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### 医療・福祉派遣に潜む“見えないリスク”とは 

 

医療・福祉の職場は、他の業界と比べてメンタルリスクが高い傾向があります。 

その理由は、仕事の特性そのものにあります。 

 

1️⃣ **感情労働の多さ** 

患者や利用者、家族との関わりで強い感情を日常的に受け止める必要がある。 

「ありがとう」と言われる一方で、「なぜ助けられなかったのか」と責められることもある。 

 

2️⃣ **悲惨な出来事の目撃や体験** 

医療・介護の現場では、死亡や事故に日常的に直面します。 

白書によれば、「悲惨な事故・災害の体験・目撃」が精神障害の発症要因として突出しています。 

 

3️⃣ **チームワークの摩擦と人間関係トラブル** 

多職種が協働する現場では、意見の違い、責任の押し付け合いなどが起きやすい。 

小さな不満が積み重なり、いじめやハラスメントに発展することもあります。 

 

これらの要因が絡み合うため、精神的な不調は“突然”ではなく、“じわじわ”と進行する傾向にあります。 

 

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### 派遣元が取るべき3つの実践的対策 

 

医療・福祉分野への派遣でリスクを最小限に抑えるためには、 

「派遣先まかせ」にせず、派遣元が**積極的に関与する仕組み**を持つことが不可欠です。 

 

以下に、現場で有効とされる3つの実践策を紹介します。 

 

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#### 1. 定期モニタリングと職場ヒアリングの実施 

 

月1回の「勤務報告」だけでは、現場の空気感や人間関係の変化をつかむことはできません。 

実際に現場訪問し、派遣スタッフ本人・派遣先の担当者双方と話をすることで、 

“見えないストレス”の芽を早期に把握できます。 

 

特に以下の質問が有効です。 

- 最近、仕事の負担が増えていませんか? 

- 職場で気になることや困っていることはありますか? 

- 夜勤や残業のペースはどうですか? 

 

「問題が起きていないか」ではなく、**“変化”が起きていないか**を聞くのがポイントです。 

 

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#### 2. メンタルチェック制度と相談窓口の設置 

 

医療・福祉派遣では、メンタル不調を“本人が隠す”ケースが多いのが実情です。 

そのため、派遣元としては「相談のハードルを下げる」工夫が欠かせません。 

 

たとえば、 

- 匿名で回答できるメンタルチェック(Webフォーム等) 

- 女性スタッフ専用の相談窓口 

- LINEなどで気軽に相談できるチャット対応 

 

などを取り入れることで、早期発見につながります。 

 

「話しやすさ」こそが、最も効果的な予防策です。 

 

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#### 3. 勤怠データのリアルタイム把握 

 

勤務時間や夜勤の回数が把握できていないと、 

派遣元が気づかないうちに「過重労働」が進行してしまいます。 

 

今はクラウド型の勤怠システムを導入すれば、 

派遣先での打刻データをリアルタイムで確認することも可能です。 

 

また、異常値(残業60時間超、夜勤10回超など)が出た際に 

自動通知する仕組みを設定しておけば、リスク検知の精度が大幅に上がります。 

 

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### 社会保険労務士の視点:現場に必要なのは「制度」より「対話」 

 

現場を見ていて強く感じるのは、 

“制度の整備だけでは人は守れない”ということです。 

 

人は、ストレスを感じた時にすぐSOSを出せるわけではありません。 

むしろ、「迷惑をかけたくない」「もう少し頑張ろう」と我慢してしまう。 

 

だからこそ、派遣元が「定期的に声をかける文化」を作ることが重要です。 

 

これは時間もコストもかかります。 

しかし、1人の離職やトラブル対応にかかる労力を考えれば、 

“声かけの積み重ね”が最も費用対効果の高い対策になります。 

 

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### 「人を派遣する」ことは「人の心を預かる」こと 

 

派遣というビジネスモデルは、労働力の提供にとどまりません。 

そこには、働く人の“人生の一部”を預かるという重みがあります。 

 

医療・福祉の現場では、派遣スタッフが「チームの一員」として扱われないことが 

孤立感や不信感の引き金になることもあります。 

 

派遣元ができるのは、その“孤立”を防ぐこと。 

職場に橋をかけ、安心して働ける関係をつくることです。 

 

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### まとめ:これからの派遣元に求められる姿勢 

 

医療・福祉分野で精神障害の労災が急増している今、 

派遣会社には「安全配慮の見直し」が強く求められています。 

 

最後に、今後の方向性を3点に整理します。 

 

1️⃣ **「派遣だから関係ない」から「派遣こそ関係ある」へ。** 

派遣元の関与がリスク軽減の要になります。 

 

2️⃣ **制度よりも、関係性づくり。** 

スタッフが“本音を話せる”仕組みと文化を整えること。 

 

3️⃣ **トラブル対応ではなく、未然防止へ。** 

勤怠・面談・相談の三本柱で「早期発見」を可能に。 

 

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精神障害やメンタル不調は、数字や報告書の中の話ではありません。 

現場で汗を流す一人ひとりの「心のサイン」です。 

 

その声に気づけるかどうかが、派遣会社の真価を決めます。 

 

今こそ、派遣元としての責任と信頼のあり方を問い直すタイミングではないでしょうか。 

 

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✏️ **社会保険労務士の視点から一言** 

「派遣スタッフが安心して働ける環境づくり」は、 

最も確実で、最も価値ある“リスクマネジメント”です。 

今日からできる小さな一歩を、ぜひ現場で始めてみてください。

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

 

【参照記事】

https://news.yahoo.co.jp/articles/61a25e71e7db8d7bad83ab400dd6edc5dbeb1670

 

【参照リンク】

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_65250.html

 

不正アクセスで5600人分の情報流出疑い。派遣会社が取るべきリスク対策とは?   2025.10.31

2025年10月、A社が、約5600人分の個人情報が漏洩した可能性を発表しました。 

原因は、社内で利用していた外部システムへの不正アクセス。対象となったのは、現役社員だけでなく、派遣社員や業務委託者、さらには退職者までを含む広範囲なものでした。 

 

幸い、マイナンバーやクレジットカード情報は含まれておらず、現時点で実害は確認されていないとのことです。 

しかし、名前・入退社日・所属情報といった勤務履歴データが流出するだけでも、企業・個人双方にとって重大な信頼問題となりかねません。 

 

本記事では、このニュースを踏まえ、派遣会社が今すぐ見直すべき「情報管理とリスク対策」について、社会保険労務士の立場から解説します。 

 

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## 1️⃣ 派遣会社にとって「個人情報管理」はビジネスの根幹

 

派遣業は「人」を介して「企業」と「労働力」を結びつけるビジネスです。 

その中心にあるのが、登録スタッフの個人情報。履歴書・職歴・資格・健康情報・給与データなど、取り扱う情報は極めて多岐にわたります。 

 

つまり、個人情報の信頼性=企業の信頼性。 

どれだけ優秀な人材を抱えていても、「この会社に登録したら情報が漏れたらしい」という噂が立てば、スタッフ登録が止まり、取引先企業にも影響が及びます。 

 

派遣会社の経営において、「情報管理体制の整備」は営業力や採用力と同じくらい重要な要素だと言えるでしょう。 

 

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## 2️⃣ 「外部委託しているから安心」は最大の落とし穴

 

今回の事例でも明らかになったように、情報漏洩は「自社が直接管理していないシステム」から発生することが多くあります。 

 

派遣会社でも、勤怠管理システム・給与計算ソフト・クラウド型人材管理ツールなど、外部ベンダーに依存しているケースが一般的です。 

そのため、「システム会社に任せているから大丈夫」と思い込み、社内のリスク認識が薄れてしまう傾向があります。 

 

しかし、個人情報保護法上、責任は“委託元企業”にも及びます。 

つまり、外部ベンダーが原因で漏洩したとしても、「委託した会社の管理責任」が問われる可能性があるのです。 

 

契約書の中に「情報管理体制」や「再委託の禁止・制限」が明記されていないと、いざという時に「どちらの責任か」が不明確になり、被害拡大や対応遅れにつながります。 

 

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## 3️⃣ 情報漏洩の原因は「技術」よりも「運用」にある

 

情報セキュリティというと、最新のシステム導入やIT専門家による監査を想像される方も多いですが、 

実際の漏洩事故の多くは、意外にも「人為的なミス」や「運用の甘さ」が原因です。 

 

例えば次のようなケースが典型です: 

- 退職スタッフの情報を削除せず、放置していた 

- ID・パスワードを複数人で共有していた 

- 外部委託先のアクセスログを定期的に確認していなかった 

- 紙ベースの履歴書や契約書を長期間保管していた 

 

これらはいずれも、特別なハッキングスキルを必要としない、単純な「管理の不備」から起こる事故です。 

つまり、最も重要なのは「システムではなく、運用のルールを作ること」なのです。 

 

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## 4️⃣ 派遣会社が今すぐ見直すべき3つのリスク対策

 

ここでは、派遣会社が現実的にすぐ取り組める対策を3つ紹介します。 

 

### ✅① 情報の保存場所とアクセス権限を明確にする 

「誰が、どの情報に、どのタイミングでアクセスできるのか」―― 

この仕組みを明文化することが第一歩です。 

人事担当者や営業担当者など、職務上必要な範囲に限定し、不要な閲覧を制限します。 

 

また、派遣スタッフ情報がクラウド上にある場合、データが国内外どこに保存されているのかも把握しておくことが重要です。 

 

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### ✅② 外部システム会社との契約内容を精査する 

委託契約書には、以下の項目が含まれているかを必ず確認してください: 

- 情報の再委託禁止または制限 

- 不正アクセスや漏洩発生時の報告義務 

- 契約終了時のデータ消去義務 

- 定期的なセキュリティ点検の実施義務 

 

これらが契約に明記されていないと、万一の際に「報告を受けられない」「情報が残存する」といった問題が起こりえます。 

 

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### ✅③ 情報漏洩発覚時の対応フローを整備する 

漏洩が起きたとき、初動対応を間違えると被害が拡大します。 

誰がどのタイミングで、どの機関に報告し、どのように本人通知を行うのか。 

この手順を事前にマニュアル化しておくことで、慌てず適切な対応が可能になります。 

 

個人情報保護委員会への報告や、社内の緊急対応チーム設置も検討すべきポイントです。 

 

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## 5️⃣ 情報漏洩リスクは「全社で共有」するもの

 

情報セキュリティの責任は、情報システム部門だけのものではありません。 

営業、コーディネーター、人事、経営層など、全員が「個人情報を扱っている」という意識を持つことが大切です。 

 

特に派遣会社では、営業担当が派遣スタッフの履歴書をメール添付で企業に送信するケースも多く見られます。 

しかし、パスワードなしの添付送信や、私用スマホからのデータ送付などは極めて危険です。 

 

社内で統一したルールを設定し、教育を繰り返すことで、リスクを大幅に下げることができます。 

 

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## 6️⃣ 「想定していたかどうか」が信頼を分ける

 

情報漏洩は、どんなに対策をしていてもゼロにはできません。 

重要なのは、「どこまで想定していたか」「どこまで準備していたか」です。 

 

例えば、A社のように被害が確認されていなくても、迅速に公表・遮断対応を行った点は評価できます。 

このように、危機が発生した際の「透明性」「スピード」「誠実さ」が、最終的に企業の信頼を左右します。 

 

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## 7️⃣ 派遣業特有の「多重構造リスク」を意識する

 

派遣業界では、派遣元・派遣先・システム会社・給与代行会社など、複数の事業者が情報を扱う構造になっています。 

この「多重構造」が、情報管理の最大のリスク要因です。 

 

たとえば、派遣元が登録情報をシステム会社に預け、派遣先がその情報を共有する―― 

この間に1つでもセキュリティの弱い箇所があれば、全体が危険にさらされます。 

 

したがって、派遣会社は「自社の中だけでなく、外部も含めた全体のセキュリティ」を把握する必要があります。 

 

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## 8️⃣ 社労士から見た「安全な会社」の共通点

 

実務で多くの派遣会社を支援していると、「情報管理が強い会社」には共通点があります。 

それは、次の3つです。 

 

1️⃣ 経営層がセキュリティを経営課題として扱っている 

2️⃣ 定期的に情報管理チェックリストを更新している 

3️⃣ ミスやトラブルが起きたときに「責める文化」ではなく「共有・改善の文化」がある 

 

つまり、「ルール+風土」がそろって初めて、リスクは低下します。 

 

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## 9️⃣ 中小派遣会社こそ「信頼」で勝負する時代に

 

情報管理への投資は、大企業だけの話ではありません。 

むしろ中小の派遣会社ほど、登録者や取引先からの「信頼」で事業が成り立っています。 

 

「大手だから安心」ではなく、「この会社は誠実に情報を扱っている」という信頼こそが、今後の採用・営業に直結します。 

 

派遣スタッフも、取引先企業も、「安心して任せられる会社」を選ぶ時代です。 

情報保護体制の強化は、もはやコンプライアンス対応ではなく、“競争力の源泉”なのです。 

 

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## 🔟 まとめ:備えは「今」しかできない

 

今回の件は、どの企業にも起こり得る出来事です。 

不正アクセスは防ぎきれなくても、被害を最小限に抑える仕組みを持つことはできます。 

 

今、派遣会社が取るべき行動は次の3つです: 

1️⃣ 管理の「見える化」 

2️⃣ 契約の「明確化」 

3️⃣ 対応の「即時化」 

 

この3つを徹底するだけで、万一の際の信頼失墜リスクを大きく減らせます。 

 

情報管理は「ITの話」ではなく、「人と仕組みの話」です。 

そしてそれは、派遣業における“信頼の土台”です。 

 

このニュースをきっかけに、自社のセキュリティ体制を改めて見直してみてください。 

安心して登録し、安心して働ける環境をつくること――それが派遣会社の最大の責任であり、最大の強みになります。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

 

【参照記事】

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC24A430U5A021C2000000/

 

【サイバーセキュリティの専門家】

合同会社インフォシールド(当事務所のパートナー企業です)

https://infoshield.co.jp/

 

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執筆:社会保険労務士 泉文美(派遣業・労務リスクマネジメント専門) 

 

#派遣会社 #個人情報漏洩 #情報管理 #社労士 #リスクマネジメント #コンプライアンス #不正アクセス #労務管理

【完全ガイド】派遣会社の収支決算書の作り方と提出手順|社労士が教えるポイント   2025.10.30

派遣会社の皆さま、こんにちは。 

社会保険労務士の泉 文美です。 

 

今回は、派遣事業者であれば毎年必ず行う必要がある「収支決算書」の提出について、実務に即して分かりやすく解説します。 

「派遣事業報告書」とは別に提出する必要があるこの書類、労働局への信頼維持のためにも正確かつ期限内に作成することが欠かせません。 

 

しかし実際には、 

「いつまでに提出するの?」 

「貸借対照表とどう関係しているの?」 

「何を添付すればいいの?」 

といった質問を多くいただきます。 

 

この記事では、派遣会社の管理部門や経営者の方が迷わず対応できるように、提出時期・作成手順・注意点・社労士から見た実務のコツまでを一つずつ整理していきます。 

 

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## 1. 「収支決算書」とは?提出の目的と位置づけ

まず最初に、「収支決算書」とは何かを明確にしておきましょう。 

 

派遣会社は、労働者派遣事業を行うにあたり「労働者派遣事業報告書」を毎年6月に提出しますが、これとは別に**会社の経営状況を報告するための書類**として「収支決算書」を提出する義務があります。 

 

目的は、 

- 事業の健全性を確認すること 

- 事業継続性(倒産リスクなど)を把握すること 

- 労働者の保護を確保すること 

の3点です。 

 

派遣事業は、労働者を他社に派遣して利益を得る特殊なビジネスモデル。 

そのため、国(労働局)は「資産・負債・利益などが適正かどうか」を確認し、問題があれば指導を行う仕組みを取っています。 

 

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## 2. 提出期限は「決算期末後3か月以内」

収支決算書の提出期限は、会社ごとの**決算期末から3か月以内**です。 

 

たとえば、 

- 3月決算 → 6月末までに提出 

- 9月決算 → 12月末までに提出 

- 12月決算 → 翌年3月末までに提出 

 

このように、派遣事業報告書(毎年6月提出)とは別のタイミングで提出する場合もあります。 

 

ここで注意したいのは、「提出期限は“提出完了”日」だということ。 

労働局に郵送する場合は、消印日ではなく“到着日”で判断されることもあるため、余裕をもったスケジュール管理が重要です。 

 

また、会社によっては経理部門が決算処理に時間を要するケースもあります。 

収支決算書の作成は「貸借対照表」や「損益計算書」の完成を前提とするため、これらが仕上がり次第、社労士や労務担当者が準備を進める流れを意識しましょう。 

 

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## 3. 提出先と提出方法

提出先は**事業所を管轄する都道府県労働局の需給調整室**です。 

提出方法は以下の2通り。 

 

- 郵送提出(控えに受領印をもらう場合は返信用封筒を同封) 

- 窓口持参 

 

郵送の場合、提出書類一式をクリアファイルにまとめ、正・副・控の順でセットしておくと、窓口でもスムーズに受け取ってもらえます。 

 

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## 4. 収支決算書の作成に必要な書類

収支決算書を作成する際には、以下の資料が必要になります。 

 

1️⃣ 貸借対照表(B/S) 

2️⃣ 損益計算書(P/L) 

3️⃣ 派遣許可証(内容の照合に使用) 

 

このうち、実際に記入時に参照するのは主に**貸借対照表**です。 

損益計算書は「別添資料」として提出する形になります。 

 

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## 5. 記入前の基本ルール:派遣許可証と完全一致

収支決算書には、会社名、所在地、代表者名などを記載する欄があります。 

ここで非常に重要なのが、「派遣許可証の表記と完全に一致させる」というルールです。 

 

たとえば: 

- 「五丁目四番三号」と「5-4-3」 

- 「5階」と「5F」 

- 「503号室」と「五〇三号室」 

 

このようなわずかな違いでも、労働局では“修正指導”の対象となります。 

毎年同じ内容を使い回すため、初回に作成する際は許可証のコピーを横に置いて慎重に確認するのがポイントです。 

 

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## 6. 各欄の書き方と注意点 

 

### (1)第1〜5欄:基本情報 

派遣許可証をもとに、会社名・所在地・代表者氏名などをそのまま記入します。 

建物名や階数、部屋番号なども略さず正式名称で記載しましょう。 

 

### (2)第6欄:資産等の状況 

ここでは貸借対照表の数値を転記します。 

 

主な項目は以下の通りです。 

- 現金・預金 

- 土地・建物 

- 資産額(計)=貸借対照表の「資産合計」 

- 負債額(計)=貸借対照表の「負債合計」 

- その他(資産額-現金預金-土地建物で計算) 

 

数値の単位が「千円単位」の場合は、「円単位」に直す必要があります。 

例:貸借対照表の「現金・預金」が1,200(千円) → 1,200,000円と記載。 

 

「土地・建物」が存在しない場合は「0」と記入します。 

 

### (3)第7欄:収支の状況 

この欄は損益計算書の内容を基に集計しますが、実務では「別添貸借対照表・損益計算書の通り」と記載して省略するケースが一般的です。 

この方法であれば、数値転記の手間やミスを防ぐことができます。 

 

### (4)備考欄 

最後に、労働局が問い合わせる際の担当者名と電話番号を記載します。 

代表番号ではなく、実際に担当する方の直通連絡先を記載するとスムーズです。 

 

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## 7. 提出時の書類セットのまとめ方

提出する際には、以下の書類を一式でまとめます。 

 

✅ 収支決算書 

✅ 貸借対照表

✅ 損益計算書 

 

これらをそれぞれ「正」「副」「控」として3部用意します。 

例えば1ページの収支決算書なら、3ページ×3部=9枚。 

貸借対照表や損益計算書が複数ページにわたる場合は、すべてを印刷して添付しましょう。 

 

控え分には受領印を押してもらうと、提出記録として残せます。 

 

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## 8. よくあるミスとトラブル事例 

 

### ミス① 提出期限の勘違い 

派遣事業報告書と収支決算書を混同し、6月だけを意識してしまうケース。 

自社の決算期をベースに、社内カレンダーにあらかじめ「提出期限+1か月前リマインダー」を設定しておきましょう。 

 

### ミス② 派遣許可証との表記ズレ 

労働局は、細かい表記の違いにも厳密です。 

毎年コピーを参照してチェックするルールを作るのが確実です。 

 

### ミス③ 添付書類の不足 

財務諸表が複数ページに及ぶ場合、最終ページだけ提出してしまうことがあります。 

ページ番号(例:「1/3」「2/3」)を印字しておくとミス防止になります。 

 

### ミス④ 数値単位のまちがい 

貸借対照表が「千円単位」で作成されている場合、「円単位」に修正しないと整合性が取れません。 

Excel等で自動変換式を入れておくと便利です。 

 

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## 9. 効率的に進めるための実務のコツ

収支決算書の作成は年1回ですが、ルーチン化しておくと負担を大幅に減らせます。 

 

- 決算書類が完成したらすぐに労務担当へ共有 

- 昨年の収支決算書データをテンプレートとして保存 

- 派遣許可証の写しを添付ファイルとして保管 

- 提出スケジュールを「派遣事業報告書」と並行管理 

 

特におすすめなのは、「収支決算書チェックリスト」を自社用に作ること。 

提出直前の確認をルーティン化するだけで、再提出リスクを防げます。 

 

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## 10. 社労士からのメッセージ:信頼を築く“地味な書類”

収支決算書の提出は、派遣会社の経営者にとって「手間のかかる義務」に見えるかもしれません。 

ですが、行政から見れば**会社の信頼度を示す指標**そのものです。 

 

提出が遅れたり、数値が不明瞭な場合、「運営体制が不安定な事業者」と見なされることもあります。 

逆に、期限内・正確な提出を続けることで、労働局との信頼関係が自然と築かれていきます。 

 

私の顧問先でも、提出管理を徹底している会社ほど、労働局からの評価が高く、許可更新時の手続きもスムーズです。 

“地味な書類ほど、会社の信用をつくる”というのは、まさにこの書類のことだと思います。 

 

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## まとめ:3つのチェックで完璧に

1️⃣ 提出期限=決算期末後3か月以内 

2️⃣ 派遣許可証と内容を完全一致 

3️⃣ 正・副・控の3部を提出 

 

この3点を押さえれば、収支決算書はスムーズに完成します。 

 

「まだ決算書が出ていない」「経理との連携が難しい」などのお悩みがあれば、 

社会保険労務士に早めに相談するのがおすすめです。 

 

書類作成は単なる事務作業ではなく、会社の「信頼」と「継続」を支える大切な業務。 

小さな積み重ねが、派遣事業の安定運営につながります。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

【参照記事】人材ビジネスナビ

https://jinzai-biz.com/employment_labor/10795/

 

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#派遣会社 #収支決算書 #労働局提出 #社会保険労務士 #人事労務 #決算対応 #派遣事業報告書 #法令遵守 

厚労省が女性活躍推進法を改正へ:派遣会社が今すぐ見直すべき3つの対応策   2025.10.27

2025年度から、「女性活躍推進法」に基づく指針が改正されます。 

厚生労働省が示した改正案には、「生理・更年期など女性特有の健康課題を踏まえた支援の強化」が明記され、 

企業に対して休暇制度の整備、柔軟な働き方の導入、相談体制の構築などが求められます。

 

一見すると大企業向けのテーマのように思われがちですが、 

実は「派遣業界」にとっても非常に大きな意味を持つ改正です。 

 

派遣社員の約7割が女性であることを考えれば、 

今回の法改正は“現場の働き方”に直結する話題だと言えます。

 

この記事では、社会保険労務士の視点から、 

改正のポイントと、派遣会社が今すぐ取り組むべき3つの対応策について詳しく解説します。

 

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## 1. 改正の背景:女性の健康課題が「企業課題」に

 

女性の働き方をめぐる環境は、ここ数年で大きく変化しています。 

政府が進める「女性活躍推進」や「多様な働き方」などの政策により、 

出産・育児後もキャリアを継続する女性が増えました。

 

しかし一方で、**生理痛・PMS・更年期障害などの健康課題によって仕事を続けにくくなるケース**も多く、 

これまでは“個人の問題”として扱われてきたのが現実です。

 

厚労省によると、女性の健康課題による経済損失は、年間約3兆4,000億円。 

これは、生産性の低下・欠勤・離職などによる損失を含めた試算です。 

この数字は、企業経営の観点からも無視できない規模です。

 

今回の改正案では、こうした健康上の課題を 

「企業が配慮すべき労働環境の一部」として明確化。 

女性が安心して働ける仕組みづくりを進めることが、企業の社会的責任として位置づけられました。

 

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## 2. 改正の主なポイント

 

改正案で示された具体的な取組みは、大きく3つに整理できます。

 

### ① 多様な休暇制度の整備

 

生理や更年期症状、体調不良による通院や休養など、 

従来は有給休暇に頼るしかなかった部分に、企業独自の休暇制度を導入することが求められます。 

 

たとえば以下のような制度が検討対象となります。

 

- 生理休暇や体調休養日を時間単位で取得できる仕組み 

- 医療機関受診や治療のための通院休暇 

- 突発的な不調に対応できる「特別有給休暇」

 

こうした制度を設けることで、社員が無理をせず働ける環境を整えることができます。

 

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### ② 柔軟な働き方の導入

 

健康状態やライフステージに合わせて働けるよう、 

次のような柔軟な勤務制度の導入が推奨されます。

 

- 時差出勤(ラッシュを避けて通勤) 

- 短時間勤務制度 

- テレワーク(在宅勤務) 

- 所定外労働(残業)の制限

 

特に更年期世代では、体調の波が日によって大きく変わるケースもあり、 

「一律の勤務時間」ではかえって生産性が落ちることもあります。 

柔軟な勤務体系は、結果的に企業全体のパフォーマンス向上にもつながります。

 

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### ③ 相談体制と職場理解の促進

 

制度を整えるだけでは十分ではありません。 

社員が「安心して相談できる環境」を整えることが不可欠です。

 

改正案では、次のような取組みを求めています。

 

- 産業医やカウンセラーの配置 

- オンライン相談窓口の整備 

- 職場内研修による理解促進 

- 女性同士が気軽に話し合える交流の場づくり

 

体調の悩みを上司に直接伝えることが難しいケースも多いため、 

「第三者に相談できるルート」を確保することが重要です。

 

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## 3. 派遣業界にとっての影響と課題

 

派遣会社にとって、この改正は“人材定着”に直結するテーマです。 

派遣スタッフの多くが女性であり、健康上の理由で働き続けられなくなるケースは少なくありません。

 

よくある現場の課題として、次のような声が聞かれます。

 

- 「体調不良でも休みにくい雰囲気がある」 

- 「派遣先の上司に相談しづらい」 

- 「派遣元に相談しても、対応に時間がかかる」 

 

このような課題を放置すれば、派遣スタッフの離職率が上がるのは当然です。 

逆に言えば、健康支援の仕組みを整えることで、スタッフの信頼と定着率を高めるチャンスでもあります。

 

---

 

## 4. 派遣会社が今すぐ取り組むべき3つの対応策

 

ここからは、派遣会社が実際に取るべき具体的な行動を3つのステップで整理します。

 

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### 対応策① 派遣元・派遣先の連携強化

 

健康課題への配慮は、派遣元だけで完結するものではありません。 

実際に働く現場(派遣先)の理解と協力が欠かせません。

 

たとえば、次のような仕組みづくりが有効です。

 

- 派遣先への「健康配慮指針」の共有 

- スタッフからの相談を受けた際の対応ルールを明確化 

- 派遣先担当者への研修(体調配慮・勤務調整など)

 

「派遣元と派遣先が同じ目線で支援する」ことができれば、 

スタッフにとっても安心感が生まれます。

 

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### 対応策② 休暇・勤務制度の整備

 

就業規則に「健康支援休暇」や「通院休暇」などを設けるほか、 

時間単位で取得できる柔軟な休暇制度を導入する企業も増えています。

 

また、派遣スタッフの場合は「勤務シフトの柔軟性」も重要です。 

体調不良時には、在宅業務への切り替えや時間短縮勤務など、 

派遣先と調整できる仕組みを整えておくと良いでしょう。

 

社労士として実務的に見ても、こうした制度整備は難しくありません。 

小規模な会社でも、運用の工夫で十分に対応可能です。

 

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### 対応策③ 相談体制の構築と社内文化の醸成

 

制度やルールを整えても、「使いにくい」「言い出しにくい」環境では意味がありません。 

そのためには、「相談しやすい文化」を社内に根付かせることが大切です。

 

たとえば次のような工夫が考えられます。

 

- 担当者による定期的なフォロー面談 

- オンラインでの匿名相談フォームの設置 

- 女性社員によるサポートチームの設置 

- 男性社員も含めた啓発研修の実施 

 

「お互いを思いやる文化」をつくることが、制度運用のカギになります。

 

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## 5. 「女性だけの支援」ではない

 

改正案には、「女性だけでなく、労働者全体を対象とした取組みも有効」との記述があります。 

つまり、女性支援をきっかけに、**誰もが働きやすい職場環境づくり**を進めることが理想です。

 

男性にも更年期や体調の波はありますし、 

介護やメンタルヘルスの問題など、サポートが必要な場面は誰にでも起こり得ます。

 

「健康に働くための配慮」を組織文化として広げることが、 

結果的に企業全体の生産性とエンゲージメントを高めることにつながります。

 

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## 6. 行動計画への反映と企業の義務

 

女性活躍推進法では、従業員301人以上の企業に対して、 

「行動計画の策定・公表」が義務付けられています。 

今回の指針改正を受けて、今後はその行動計画の中に「健康支援の取組み」を明記する必要が出てきます。

 

派遣会社においても、計画更新の際には次のような観点を盛り込むことが望ましいでしょう。

 

- 女性の健康課題に関する現状把握(アンケート・面談など) 

- 健康支援のための制度導入と目標設定 

- 定期的な効果測定と職場意識の変化の確認 

 

「計画倒れ」で終わらせないためには、 

小さくても“実際にできる行動”を積み重ねることが大切です。

 

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## 7. 社労士の視点:制度設計と運用の両輪が重要

 

社会保険労務士として感じるのは、 

このテーマは「制度設計」と「現場運用」の両輪があって初めて機能するという点です。

 

就業規則や休暇制度の条文を整えるだけでは不十分で、 

実際に社員が安心して使えるように、現場と経営の間をつなぐ調整が必要です。

 

たとえば、 

- 派遣スタッフが休暇を申請したときの連絡ルート 

- 派遣先への情報共有の範囲と配慮 

- 有給との整合性や給与処理のルール化 

など、細部まで運用ルールを詰めておくことで、トラブルを防げます。

 

---

 

## 8. まとめ:女性が安心して働ける企業こそ、選ばれる

 

今回の法改正は、単なる法令対応ではなく、 

「企業がどんな価値観で働く人を支えるのか」という姿勢を問うものです。

 

派遣スタッフを含め、誰もが体調やライフステージに左右されずに働ける環境をつくること。 

それが今後の人材確保・企業成長の鍵になるでしょう。

 

健康支援の取組みは、“コスト”ではなく“投資”です。 

定着率の向上、生産性の維持、企業イメージの向上── 

そのすべてが中長期的な経営基盤の強化につながります。

 

---

 

👩‍💼 **社会保険労務士としての一言**

 

女性社員・派遣スタッフの健康課題は、 

個人の努力では解決できない「職場の構造的課題」です。 

 

就業規則の改定、行動計画の策定、健康支援制度の設計など、 

法令を踏まえた現実的な対応策を一緒に考えていきましょう。 

 

“誰もが安心して働ける職場づくり”は、派遣会社のブランドそのものです。 

2025年の法改正を追い風に、現場から変化を起こしていきましょう。

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

【参照記事】

https://www.rosei.jp/readers/article/89783

 

 

【参照リンク】

厚生労働省「働く女性の健康推進に取組みましょう」

https://share.google/JQ3gGoq72EcZtIXBh

降格・降給はどこまで認められる?派遣会社の人事リスク対策と実務対応ガイド   2025.10.24

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◆はじめに:成果主義の時代に「降格・降給」は避けられないテーマ 

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近年、労働市場の流動化やジョブ型雇用の浸透により、 

「成果主義的な人事評価制度」を導入する企業が増えています。 

 

派遣業界も例外ではありません。 

派遣スタッフの評価制度を整えたり、派遣先企業の基準に合わせて処遇体系を見直すなど、 

これまで以上に「成果」「役割」「ジョブ」に基づく賃金決定が求められるようになっています。 

 

その一方で、 

「成績が上がらない社員を降格できるのか?」 

「評価が低いスタッフの給与を下げてもいいのか?」 

といったご相談を、派遣会社の経営者・人事担当者の方から受けることが増えています。 

 

一言で「降格・降給」といっても、実務的には非常にデリケートなテーマです。 

誤った手続きや判断を行えば、 

労働トラブルや訴訟リスクに発展する可能性すらあります。 

 

本記事では、社会保険労務士の立場から、 

派遣会社が知っておくべき「降格・降給」の法的ルールと、 

実務でトラブルを防ぐための具体的な対策を詳しく解説します。 

 

 

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◆第1章 そもそも「降格」「降給」とは何か? 

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まず、基本的な用語を整理しておきましょう。 

 

**降格**とは、職位や役職を引き下げること。 

例えば「部長から課長に戻す」「チームリーダーを外れる」といった人事上の措置です。 

 

一方、**降給**とは、給与そのものを引き下げること。 

降格に伴って給与が下がるケースもあれば、 

職位はそのままで評価や成果に応じて給与が下がるケースもあります。 

 

特に近年は「成果主義型賃金制度」の普及により、 

従来の“年功的な給与カーブ”ではなく、 

「実績・成果・役割に応じて給与を上下させる」仕組みが広がっています。 

 

この流れの中で、「降格」「降給」の場面が増えているのです。 

 

 

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◆第2章 降格・降給の法的根拠と人事権の限界 

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企業には、人事権という大きな裁量があります。 

従業員をどの部署に配置し、どの役職に就けるかを決めることは、 

原則として会社の判断に委ねられています。 

 

しかし、この「人事権」にも限界があります。 

 

裁判例では次のように整理されています: 

 

> 企業が降格を行う場合、就業規則に根拠があり、 

> かつ合理的な理由と手続を経ていることが必要。 

> (ハネウェルジャパン事件・東京高裁平成17年1月19日) 

 

つまり、「就業規則に根拠があるか」「判断が合理的か」がポイントです。 

 

たとえば、勤務成績や業務能力が著しく低下した場合に、 

就業規則上「業務上の適性に応じて職位を変更することがある」と定められていれば、 

一定の範囲で降格は認められます。 

 

ただし、**賃金の減額**を伴う場合はより慎重な対応が必要です。 

 

就業規則に「評価に応じて賃金を改定する」と明記されていなければ、 

たとえ人事権の範囲内であっても、給与の引き下げは無効と判断されるリスクがあります。 

 

また、明確な基準がなく恣意的に降格を行った場合、 

「権利の濫用」として無効とされる可能性もあります。 

 

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💡 **ポイントまとめ** 

- 降格そのものは人事権の範囲内 

- ただし、賃金減額を伴う場合は就業規則に明記が必要 

- 恣意的・報復的な降格は「権利の濫用」として無効 

 

 

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◆第3章 ジョブ型雇用の普及と「降級」の新しい論点 

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2024年8月、厚生労働省が「ジョブ型人事指針」を発表しました。 

これは、職務や役割に応じて給与を決定するジョブ型制度の普及を促すための指針です。 

 

※参照)厚生労働省「職能給」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syokumukyu.html

 

ジョブ型では、従業員一人ひとりに「職務(ジョブ)」が明確に定義され、 

その職務価値に応じて給与や等級が設定されます。 

 

このため、職務が変われば賃金も変わるのが当然となります。 

 

つまり、職務変更に伴う「降級(等級の引き下げ)」が行われることもあります。 

 

ただし、この場合も就業規則上に「職務・役割変更に応じて等級・賃金が変更される」旨を 

明記しておくことが必須です。 

 

大阪地裁の「CFJ合同会社事件」(平成25年2月1日)では、 

職務変更に伴う賃金減額が就業規則上に明記されていたため有効と判断されました。 

 

一方で、根拠が曖昧で勤務成績の不良が明確でない場合には、 

降級が「退職勧奨の一環」とみなされ、無効とされた例もあります。 

 

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💡 **ジョブ型人事での注意点** 

- 職務ごとに等級と給与が定義されているか 

- 職務変更に伴う給与変更ルールが明文化されているか 

- 降級の判断に客観的根拠があるか 

 

派遣会社がジョブ型を取り入れる場合、 

派遣スタッフの職務範囲と評価方法を明確に定義しないと、 

トラブルの火種となりかねません。 

 

 

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◆第4章 派遣会社特有の「降格・降給」リスク 

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派遣会社の場合、 

降格・降給のトラブルは「本社社員」だけでなく、 

「派遣スタッフ」との関係でも発生します。 

 

特に次のような場面は要注意です。 

 

- 派遣先の評価結果をもとに賃金を見直す場合 

- 派遣契約の更新時に給与水準を変更する場合 

- 派遣先変更に伴い、職務内容が軽くなった場合 

 

これらはいずれも「降給」に該当する可能性があります。 

 

そのため、 

・派遣契約書や就業規則に「評価に応じて賃金を改定する」旨を明記する 

・派遣先評価をそのまま反映せず、自社基準で確認する 

・説明責任を果たし、本人に納得してもらう 

といったステップが欠かせません。 

 

派遣スタッフの場合、 

正社員以上に「労働条件の説明責任」が重視されます。 

わずかな対応ミスでも「不当な扱い」と受け取られ、 

トラブルやSNS投稿などに発展するケースもあります。 

 

 

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◆第5章 就業規則と人事評価制度の連動がカギ 

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実務上、「降格・降給」のトラブルを防ぐ最大のポイントは、 

**就業規則と人事評価制度を連動させること**です。 

 

就業規則に「人事評価の結果により職位・賃金を変更することがある」と明記し、 

人事評価制度には「評価項目・判定基準・見直し手順」を定義する。 

 

この二つが連動していれば、 

「恣意的に降格された」「理由が分からない」といった主張を防ぐことができます。 

 

評価結果を本人にフィードバックし、 

改善のための支援や目標設定を行うことで、 

“懲罰的な降格”ではなく“成長支援型の人事措置”として理解されやすくなります。 

 

 

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◆第6章 トラブルを未然に防ぐ5つの実務対策 

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1️⃣ **就業規則の整備** 

降格・降給の基準と手続を明文化し、評価制度との整合性を確保。 

 

2️⃣ **評価制度の透明化** 

評価項目や基準を社員に説明し、納得感を高める。 

 

3️⃣ **人事記録の保管** 

評価結果や面談記録を残し、判断の合理性を示せるようにする。 

 

4️⃣ **降格・降給前のフォロー面談** 

いきなり通知せず、改善機会や支援策を提示する。 

 

5️⃣ **派遣スタッフへの説明責任の徹底** 

契約条件変更時には必ず書面で説明し、同意を得る。 

 

これらを徹底するだけで、 

後々の紛争リスクを大幅に減らすことができます。 

 

 

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◆第7章 制度改定のタイミングで専門家に相談を 

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成果主義やジョブ型人事を導入する際、 

最も多いトラブルが「降給の根拠不足」と「説明不足」です。 

 

評価制度を作るだけでは不十分で、 

それをどう賃金制度と連動させるか、どう就業規則に落とし込むかが重要です。 

 

社内でルールを整えるのは簡単ではありませんが、 

社会保険労務士などの専門家と連携すれば、 

実務運用に耐えうる制度設計が可能です。 

 

 

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◆まとめ:正しいルール整備が「信頼経営」を守る 

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「降格・降給」は、企業経営において避けて通れない判断です。 

しかし、そこに**明確なルール**と**公平な手続き**があれば、 

社員の信頼を失うことなく、組織を健全に保つことができます。 

 

派遣会社にとっては、 

正社員だけでなく派遣スタッフとの関係性も含めた 

多層的な人事リスクへの対応が求められます。 

 

法的リスクを防ぎながら、公正で納得感のある制度を運用すること。 

それが、成果主義時代を生き抜くための「労務管理力」と言えるでしょう。 

 

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💬 **社会保険労務士からのメッセージ** 

降格・降給の判断は、人の評価と生活に直結するため、慎重な運用が欠かせません。 

「トラブルが起きてから」ではなく、「制度を見直す段階で」予防することが最も重要です。 

 

就業規則の改訂、人事制度の見直し、派遣スタッフの評価制度設計など、 

現場の実情に合わせたアドバイスを行っています。 

初回相談は無料ですので、ぜひお気軽にご相談ください。 

 

#社会保険労務士 #派遣会社 #降格 #降給 #成果主義 #ジョブ型雇用 #人事制度 #就業規則 #労務リスク #働き方改革

転倒労災が増加中!派遣業界で急務となる「疲労対策」とは   2025.10.22

## 目次

1. はじめに:なぜ今「転倒労災」が増えているのか 

2. 数字で見る転倒災害の現状 

3. 「高齢化」だけでは説明できない転倒増加の真の要因 

4. 日本人の8割が「疲れている」—疲労社会ニッポンの実態 

5. 疲労が引き起こす“転倒リスク”と“ヒヤリハット” 

6. 派遣現場で疲労が蓄積しやすい3つの背景 

7. 疲労を放置することがもたらすリスクとは 

8. 社労士が提案する「疲労対策」3つの柱 

9. 職場でできる具体的な取り組み事例 

10. まとめ:疲労対策は「安全対策」であり「未来への投資」

 

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## 1. はじめに:なぜ今「転倒労災」が増えているのか

 

ここ数年、「転倒による労災」が増加しているという報告が相次いでいます。 

転倒は一見すると“小さな事故”のように思われがちですが、骨折や長期離脱につながることも多く、企業にとっては大きなリスクです。

 

派遣業界でも、製造・物流・清掃・介護など、多様な現場でスタッフが働いており、 

**「転倒災害」は決して他人事ではありません。**

 

なぜいま、転倒による労災が増えているのか。 

その答えは、意外にも「疲労」というキーワードにありました。

 

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## 2. 数字で見る転倒災害の現状

 

厚生労働省の統計によると、2014年には約2万7000件だった転倒災害が、 

2024年には3万6000件を超え、**10年間で約1万件も増加**しています。

 

中央労働災害防止協会(中災防)も、「転倒による労災」が現在もっとも課題となっていると警鐘を鳴らしています。

 

この増加の背景には、「現場作業員の高齢化」が指摘されることが多いですが、 

実はそれだけでは説明がつかないのです。

 

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## 3. 「高齢化」だけでは説明できない転倒増加の真の要因

 

確かに高齢化は一因です。 

筋力の低下やバランス能力の衰えが転倒リスクを高めることは事実です。 

 

しかし、最近では**20〜40代の転倒災害も増加傾向**にあります。 

その原因として無視できないのが、「疲労の蓄積」です。

 

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## 4. 日本人の8割が「疲れている」—疲労社会ニッポンの実態

 

一般社団法人日本リカバリー協会の最新調査(2025年)によると、 

就労者の82.0%が「疲れている」と回答。 

この数字は過去最高であり、わずか1年で30万人以上増えたといいます。

 

さらに、「すごく疲れている」と答えた人の割合も46.3%に上昇。 

もはや**「慢性疲労」が社会全体に蔓延している**状態です。

 

疲労は単なる「だるさ」ではなく、 

集中力・判断力・筋肉の反応速度を鈍らせることで、 

作業中のミスや事故を誘発します。

 

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## 5. 疲労が引き起こす“転倒リスク”と“ヒヤリハット”

 

疲れていると、人は自分の身体感覚を正確に把握できなくなります。 

たとえば、「足を上げたつもりが上がっていない」「段差に気づかずつまずく」など。 

これは筋肉の疲労だけでなく、**脳の空間認知機能の低下**によるものです。

 

また、精神的な疲労がたまると注意力が散漫になり、 

「ヒヤリハット」や「インシデント」が起こりやすくなります。

 

労働安全の分野では有名な**ハインリッヒの法則**があります。 

1件の重大事故の裏には、29件の軽傷事故と、300件のヒヤリハットがあるという経験則です。

 

つまり、疲労を放置することは、**重大災害の予兆を見過ごす**ことにつながります。

 

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## 6. 派遣現場で疲労が蓄積しやすい3つの背景

 

派遣スタッフの現場は多様であり、 

疲労が蓄積しやすい構造的な要因がいくつも存在します。

 

### ① シフトの不規則化

早朝・夜勤・二交代制など、生活リズムが乱れやすい勤務体系が多く、 

睡眠の質が低下しやすい傾向があります。

 

### ② 現場異動の多さ

派遣スタッフは現場ごとに環境や作業ルールが異なり、 

その都度新しい動きや人間関係に適応する必要があります。 

心理的な疲労も蓄積します。

 

### ③ 慢性的な人手不足

人手が足りない現場では、一人あたりの作業負担が大きく、 

「無理をしてでもやりきる」文化が根付きやすくなります。 

その結果、疲労のサインを見逃してしまうのです。

 

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## 7. 疲労を放置することがもたらすリスクとは

 

疲労を軽視すると、転倒事故だけでなく次のようなリスクを招きます。

 

- **労災リスクの増加** 

- **生産性の低下**(集中力・判断力の低下) 

- **離職率の上昇**(心身の限界による離脱) 

- **企業イメージの悪化**(安全対策への信頼喪失)

 

派遣スタッフが安心して働ける環境づくりは、 

**派遣元・派遣先双方の責任**でもあります。

 

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## 8. 社労士が提案する「疲労対策」3つの柱

 

疲労対策は特別なことではありません。 

次の3つの柱を意識するだけで、現場の安全性と生産性は大きく変わります。

 

### ① 休養・睡眠・リラクセーション支援 

長時間労働を是正するだけでなく、 

休憩の取り方や睡眠改善の工夫を促す取り組みが効果的です。 

例えば「リカバリーデー(回復日)」の導入や、 

職場での軽いストレッチタイムなど。

 

### ② 認知・行動トレーニングによるストレス軽減 

疲労の背景には心理的なストレスもあります。 

簡単なマインドフルネスやセルフケア研修などを通して、 

“自分の疲れに気づく力”を育てることが重要です。

 

### ③ 上司と部下の対話による職場環境の調整 

「最近疲れていない?」と声をかけ合える風土をつくること。 

この一言が、事故を防ぐ最初のステップになります。 

職場ミーティングで疲労度を共有し、 

作業配分を調整する取り組みが有効です。

 

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## 9. 職場でできる具体的な取り組み事例

 

- **疲労チェックシートの導入** 

定期的にスタッフの体調や気分を確認し、数値化して管理。 

- **安全朝礼での“疲労トーク”** 

その日のコンディションを一言ずつ共有するだけでも効果あり。 

- **小休憩ルールの設定** 

集中が切れる前に5分の休憩を挟む。 

- **労務相談窓口の明確化** 

体調不良やストレスを気軽に相談できる仕組みをつくる。

 

こうした小さな工夫の積み重ねが、 

「疲れに強い職場文化」を育てていきます。

 

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## 10. まとめ:疲労対策は「安全対策」であり「未来への投資」

 

疲労は見えにくく、つい後回しにされがちです。 

しかし、疲労こそが労災・転倒事故の“静かな引き金”になっています。

 

派遣業界では、派遣スタッフ一人ひとりの安全と健康が 

企業の信頼を支える基盤です。 

疲労を可視化し、組織全体で取り組むことは、 

単なる「健康管理」ではなく、**「安全マネジメント」そのもの**です。

 

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社労士として現場を見ていると、 

疲労対策に取り組む企業ほど、スタッフ定着率も高く、 

現場の雰囲気が良くなる傾向があります。 

 

転倒災害を防ぐ最初の一歩は、 

「疲れていないか?」と問いかけることから。 

 

その声かけが、職場を守り、企業の未来を支える力になります。 

 

ご相談の際は、当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

 

【参照記事】

https://news.yahoo.co.jp/articles/bbb1506ba9753f0ff71b544fcd8318f494c8d313?page=2

 

【参考リンク】

厚生労働省「両立支援におけるストレスマネジメント」

https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/column/column_03.html

 

#労災防止 #派遣業界 #疲労対策 #安全衛生 #働き方改革 #社会保険労務士

群馬県で168事業所が是正勧告 派遣会社が今すぐ見直すべき「長時間労働リスク」とは   2025.10.20

### はじめに:またも浮き彫りになった「長時間労働」という現実

 

群馬労働局が2024年度の監督結果を発表し、違法な長時間労働などの労働基準法違反で**168の事業所に是正勧告**が出されたことが明らかになりました。 

さらにそのうち、**月80時間を超える「過労死ライン」**を超えた事業所は93カ所、**100時間超**のケースも47カ所に上っています。

 

つまり、群馬県だけで年間100社以上が「過労死ライン」を超える労働時間を従業員に課していたという事実です。 

この数字は決して地方特有の問題ではなく、全国どこでも起こり得る現実を象徴しています。

 

この記事では、社会保険労務士の視点から 

派遣会社が直面しやすい「長時間労働リスク」について、法的観点・実務対応・再発防止策を交えて詳しく解説します。

 

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### 1. 是正勧告の背景にある「見えない長時間労働」

 

群馬労働局の発表によると、2024年度に監督指導を受けたのは501の事業所。 

そのうち**385事業所(約77%)が法令違反**とされました。 

違反内容の内訳は以下の通りです。

 

- 違法な時間外労働:168事業所 

- 残業代の不払い:29事業所 

- 健康診断の未実施など健康管理措置違反:87事業所 

 

業種別では、**製造業が最多の45事業所**、次いで**運輸交通業が27事業所**。 

いずれも「人手不足」「納期プレッシャー」「取引先の要求」といった外的要因の影響を強く受ける業種です。

 

これらの数字から見えてくるのは、 

長時間労働は特殊な企業の問題ではなく、構造的な課題になっている」 

ということです。

 

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### 2. 派遣会社にとって他人事ではない「長時間労働」

 

多くの派遣会社では、労働時間の管理を派遣先任せにしてしまうケースが見られます。 

しかしこれは大きなリスクです。

 

厚生労働省が定める「労働者派遣の適正な運営のための指針」では、 

派遣元にも以下のような義務が課せられています。

 

> 派遣元事業主は、派遣先での派遣労働者の労働時間の状況を把握し、必要に応じて派遣先に対して改善を求めること。

 

つまり、派遣先が違法な長時間労働を行っていた場合、 

派遣元も「監督・是正を怠った」と判断されるリスクがあるのです。

 

これは、単に法令違反にとどまらず、**派遣契約の信頼関係**や**労働者の安全配慮義務**にも影響します。

 

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### 3. 現場で起こっている「見えにくい労働時間」

 

実際に、派遣社員の方からは次のような相談が寄せられることがあります。

 

> 「派遣先の社員と同じように残業しているが、申告しづらい」 

> 「派遣先が忙しく、毎日2時間以上の残業が続いている」 

> 「残業時間が把握されていない気がする」 

 

こうした「見えない残業」は、記録上の労働時間には現れません。 

特に、派遣社員がタイムカードを派遣先のシステムで管理している場合、 

派遣元がそのデータをリアルタイムで確認できないことが多いのです。

 

結果として、派遣元が「残業が多い」と気づくのは、 

本人の体調不良や契約更新の段階になってから――というケースも少なくありません。

 

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### 4. 長時間労働がもたらす3つの重大リスク

 

長時間労働を放置すると、派遣会社には以下のようなリスクが発生します。

 

#### (1)法的リスク 

労働基準法違反の連帯責任、労災認定、行政指導の対象となる可能性があります。

 

#### (2)人材リスク 

派遣社員の健康悪化や離職率の上昇につながります。 

結果として「人が定着しない派遣会社」としての評価が下がります。

 

#### (3)取引リスク 

派遣先での労務トラブルがニュースになれば、他の取引先にも影響を与えかねません。 

企業間の信頼関係を損なうリスクは非常に大きいです。

 

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### 5. 派遣元が今すぐ取り組むべき「3つの基本対策」

 

社会保険労務士として、派遣会社の皆さまに特に意識していただきたい対策は次の3つです。

 

#### ① 派遣先の労働時間を「見える化」する

派遣社員の勤怠データを共有し、週単位・月単位で労働時間を確認する仕組みを作りましょう。 

勤怠システムの連携や、派遣先とのデータ交換ルールを明確にすることがポイントです。

 

#### ② 健康管理の徹底

定期健康診断、ストレスチェックの実施状況を確認し、異常があれば早めに面談・対応を行う。 

特に「残業が多い社員」へのフォロー体制を整えることが重要です。

 

#### ③ 36協定・労使協定の再点検

「36協定」が形式的になっていないか、実態と乖離していないかを確認します。 

特別条項付き協定が必要な場合は、上限時間や手続きも慎重に見直しましょう。

 

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### 6. 派遣先とのコミュニケーションが鍵

 

長時間労働の是正は、派遣先との関係構築なしには実現できません。 

派遣元が一方的に「是正してください」と言っても、現場は動きません。

 

理想的なのは、**「労務改善を一緒に進めるパートナー」**という立場を築くこと。 

そのために有効なのが、定期的な「労務コンディション共有会議」です。

 

- 派遣社員の労働時間・残業傾向の共有 

- 健康診断結果やストレスチェック結果のフィードバック 

- 派遣先・派遣元双方の課題共有と改善策検討 

 

このような会議を四半期ごとに実施するだけで、労務トラブルの芽を早期に摘むことができます。

 

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### 7. データドリブン労務管理のすすめ

 

近年では、AIやクラウド勤怠システムを活用した「データ労務管理」が主流になりつつあります。 

たとえば、勤怠データを自動集計して残業時間が上限に近づいたら通知する仕組みを導入するなど、 

“人が気づく前にシステムが警告する”仕組みを整えるのです。

 

データに基づく管理は、派遣社員の健康を守るだけでなく、 

派遣元・派遣先双方の「説明責任」を果たすうえでも非常に有効です。

 

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### 8. 「働き方改革」は派遣業にこそ必要

 

長時間労働の是正は、製造業や運輸業だけでなく、**人材派遣業界全体の課題**です。 

「派遣先がそう言っているから」「現場が忙しいから」といった理由で 

放置してきた慣習を見直す時期に来ています。

 

派遣社員の労働環境を整えることは、 

最終的に「優秀な人材が集まり、長く働いてくれる派遣会社」をつくることにつながります。

 

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### 9. 是正勧告を「自社の警鐘」として捉える

 

今回の群馬労働局の是正勧告168件という数字は、 

業界全体にとって「自社も他人事ではない」という警鐘です。

 

- 自社の派遣社員の労働時間は把握できているか? 

- 派遣先の36協定内容を確認しているか? 

- 健康管理体制は十分か? 

 

これらを一つずつ点検するだけでも、再発防止につながります。 

まずは「見える化」から始めてみましょう。

 

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### 10. まとめ:人を守ることが、会社を守ること

 

長時間労働の是正は、単なる法令順守ではありません。 

それは、**働く人の命と健康を守るための最低限のルール**です。

 

派遣元がこのルールを自らの経営軸に据えることで、 

結果的に「信頼されるパートナー企業」としての価値を高めることができます。

 

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👩‍💼 **社会保険労務士としてのメッセージ** 

私はこれまで、多くの派遣会社の労務改善を支援してきましたが、 

「早めの対策をしておけば防げた」ケースが非常に多いと感じています。

 

働く人を守ることは、派遣会社の信頼を守ること。 

この2つは決して別物ではありません。 

今日の記事が、皆さまの労務管理を見直すきっかけになれば幸いです。

 

ご相談の際は当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

【参照記事】

https://news.yahoo.co.jp/articles/86c70f7e12d448b871d93d08376b36d5c6257768

 

#派遣会社 #労務管理 #長時間労働 #社会保険労務士 #是正勧告 #働き方改革 #群馬労働局 #人材ビジネス #健康経営 #人事労務

11月は「過労死防止啓発月間」──派遣業界が労務リスクを減らすための実践チェックリスト   2025.10.17

### はじめに:11月は「過労死防止啓発月間」

 

毎年11月は、厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」です。 

これは、過労死や過労自殺をなくすために、国全体で労働環境を見直そうという取り組み。 

 

期間中は全国47都道府県で「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催されるほか、 

「過重労働解消キャンペーン」として、企業への重点的な監督指導や相談窓口の設置が行われます。 

 

ここ数年で働き方改革が進んだとはいえ、 

「サービス残業」「長時間労働」「休みが取れない」といった問題は依然として現場に根強く残っています。 

 

特に派遣業界では、 

「派遣先の管理下にあるスタッフの労働時間をどう把握するか?」 

という点が非常に難しく、労務リスクを抱えやすい業界構造にあります。 

 

今回は、社会保険労務士の視点から、 

この啓発月間にあわせて派遣会社が見直すべき「労務リスクと実践チェックリスト」をまとめました。

 

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### 1. 派遣元としての「労務管理責任」を再確認する

 

まず大前提として、派遣スタッフの労働時間・健康管理については、 

派遣先だけでなく「派遣元」も責任を負っています。 

 

労働者派遣法では、派遣元はスタッフの「雇用主」として、 

安全衛生や労働条件の確保に関する義務を明確に負っています。 

 

つまり、 

「派遣先に任せているから大丈夫」という考え方は、 

法的には通用しないのです。 

 

特に、派遣先が長時間労働を強いていたり、 

残業申請が適切に行われていなかった場合、 

派遣元にも監督責任が問われる可能性があります。

 

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### 2. 厚労省が重点的にチェックするポイント

 

厚生労働省の「過重労働解消キャンペーン」では、 

以下の3つの観点で重点的に監督指導が行われます。

 

- 36協定を超える長時間労働 

- 賃金不払残業(サービス残業) 

- 健康障害リスク(過労死ライン超の勤務)

 

これらはどれも、派遣会社にとって“他人事ではない”テーマです。 

 

特に、派遣スタッフが複数の現場に関わるケースや、 

派遣先が独自に勤怠を管理している場合、 

派遣元が把握できていない「隠れ残業」が発生していることも少なくありません。 

 

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### 3. 労務リスクが顕在化する「3つの瞬間」

 

私がこれまで顧問先で見てきた中で、派遣会社が労務トラブルに発展しやすい瞬間は、主に次の3つです。

 

1. **勤務時間の申告が派遣先任せになっているとき** 

→ 派遣スタッフの勤務実績が正確に報告されず、後で残業代請求になることも。 

 

2. **体調不良やメンタル不調に早期対応できなかったとき** 

→ 退職や労災申請につながり、企業イメージにも影響。 

 

3. **36協定の内容が現場実態と乖離しているとき** 

→ 実際の残業が協定を超えており、監督指導で是正勧告を受けるケースも。 

 

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### 4. 労務管理の“見直し”が必要なサイン

 

次のような兆候が見られたら、 

社内の労務管理体制を早急に見直すタイミングです。

 

- 勤怠データの提出が毎月ギリギリになっている 

- 派遣先との報告ルールが人によって違う 

- 有給休暇の取得状況を把握できていない 

- 月末に「残業時間の修正」が頻発している 

- 「派遣スタッフの離職理由」が曖昧 

 

こうした“管理のほころび”は、日常業務では見逃されがちですが、 

放置すると、会社全体のコンプライアンスリスクに発展しかねません。 

 

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### 5. 実践チェックリスト:派遣会社が今すぐ取り組むべき5項目

 

この11月、ぜひ次の項目を社内で点検してみてください。

 

✅ **① 労働時間の把握方法は派遣元でも確認できるか?** 

→ 勤怠システムを活用し、派遣先任せになっていないかを確認。 

 

✅ **② 36協定の内容は現場の実態に即しているか?** 

→ 年度更新時に形式だけの協定になっていないか見直しを。 

 

✅ **③ 残業の申請・承認ルールは明確か?** 

→ 「上司の口頭指示だけ」で残業していないか要確認。 

 

✅ **④ 健康フォロー(面談・アンケートなど)を実施しているか?** 

→ 長時間勤務者への面談記録が残っているかチェック。 

 

✅ **⑤ 派遣スタッフからの相談ルートは確保されているか?** 

→ 労働相談窓口を明確にし、気軽に声を上げられる雰囲気を作る。 

 

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### 6. 実際に取り組む企業の好事例

 

ある中堅派遣会社では、 

勤怠管理を「派遣先+派遣元の両方で確認」できるクラウドシステムを導入しました。 

 

スタッフがスマホで打刻し、派遣先の承認を得た上で、 

派遣元がリアルタイムに勤務状況をチェック。 

 

結果として、 

・残業時間の月次修正がゼロに 

・過重労働者の早期発見が可能に 

・スタッフ満足度が向上し、離職率が約20%改善 

 

という成果が生まれました。 

 

“仕組みで防ぐ”ことが、いちばん確実なリスク対策です。

 

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### 7. 「法令遵守」だけでなく「信頼獲得」のために

 

労務管理は「罰則を避けるため」ではなく、 

「人と企業が長く信頼関係を築くため」のものです。 

 

派遣スタッフにとって、 

“安心して働ける環境”は何よりのモチベーションになります。 

 

一方、派遣先企業にとっても、 

「きちんと管理できる派遣元」と仕事をしたいのは当然のこと。 

 

つまり、労務管理の質を高めることは、 

派遣先との取引拡大にもつながる“攻めの施策”なのです。

 

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### 8. 社労士が見てきた「現場のリアル」

 

私が顧問として関わってきた中で、 

多くの派遣会社が抱える課題は「制度設計」よりも「運用の徹底」にあります。 

 

例えば、36協定は作っていても、 

現場の管理者がその内容を理解していないケースが多い。 

 

あるいは、 

勤怠入力の締めが派遣先によって異なり、 

最終的に派遣元がデータを集約できない──そんな問題もあります。 

 

重要なのは、“仕組み”よりも“人が動く運用”。 

たとえば以下のような工夫が有効です。

 

- 週1回、勤怠報告を簡易的に共有する 

- 月1回、管理担当者間で情報交換ミーティングを行う 

- 長時間勤務者をシステムで自動通知する 

 

小さな取り組みでも、継続すれば確実にリスクが減ります。

 

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### 9. 今こそ「働き方を見直す」タイミング

 

過労死防止啓発月間は、単なるキャンペーンではありません。 

「会社として働かせ方を見直す」ための絶好の機会です。 

 

この1カ月間だけでも、 

・自社の36協定を読み直す 

・派遣先との情報共有体制を確認する 

・スタッフの声を聞くミーティングを行う 

 

といった小さなアクションを実行してみてください。 

その積み重ねが、企業文化の改善につながります。 

 

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### 10. まとめ──“守りの労務管理”から“信頼の労務管理”へ

 

派遣業界は、人を扱うビジネスでありながら、 

最も「人の働き方」にリスクが集中する業界でもあります。 

 

だからこそ、法令遵守をベースに、 

人を大切にする仕組みを整えることが、 

最終的に企業価値を高めることにつながります。 

 

この11月、社内で「労務管理チェック会議」を開いてみてください。 

ほんの1時間でも、課題と改善点が見えてくるはずです。 

 

社会保険労務士として、 

私は派遣業界の現場を知る立場から、 

“机上の理論ではなく、現場で回る仕組み”づくりを支援しています。 

 

過労死防止啓発月間をきっかけに、 

「守る労務」から「育てる労務」へとシフトしていきましょう。

 

もし、働き方や労務管理で不安があれば、 

ぜひ一度ご相談ください。 

 

当ホームページのお問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。

初回のご相談は無料です。

 

【参照記事】

 https://apj.aidem.co.jp/current/detail/5754.html 

 

【参照リンク】

厚生労働省「過重労働解消キャンペーン」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/campaign_00004.html

 

#過労死防止 #労務管理 #派遣会社 #働き方改革 #社労士コラム #労働時間管理 #36協定 #健康経営

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サービス案内

派遣会社向け社労士業務

サービス内容・料金について(4万円~)

  1. 1) 派遣に関する役所への書類作成・提出代行
  2. 2) 派遣許可の初回申請・更新申請
  3. 3) 派遣事業報告書の書類作成・提出代行
  4. 4) 派遣契約関連書類の作成
  5. 5) 派遣労働者の雇用契約に関連する書類作成
  6. 6) 労働局調査対応(資料準備、当日の同席)
  7. 7) 同一労働同一賃金対応の助言・書類作成
  8. 8) 教育訓練計画に関する助言・報告書書式提供
  9. 9) 「マージン率等の情報提供」の用紙作成
  10. 10) 派遣法・労基法等諸法令に関する相談、助言

こちらの「事務所案内」をご参照ください

セミナー、研修、講演開催

料金について

セミナー、研修、講演 【オンライン】
1時間あたり3万円
【オフライン】
1時間あたり5万円

講演内容、業種、出席者数に関わらず、すべて定額の時間単価とさせて頂きます。業界きっての画期的な明朗会計です。 

「予め料金が分かっているので、安心して申し込めます」

 「料金交渉が不要で助かります」

 「時間単価は一定なので、研修時間数を調整すればいいから、予算との折り合いも簡単にできます」

 などなど、多くのお客様に喜ばれております。

セミナーについて

当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。

セミナー開催実績例
  • 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
  • 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
  • 新規採用をお考えの事業者様向け
    「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
  • 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」

講演について

当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。

講演実績

日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修

「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」

【参加者様からのお声】

  • 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
  • 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
  • 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
  • マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。

一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」

【参加者様からのお声】

  • メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
  • 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
  • メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
  • 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
  • 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
  • 株式会社LEC 様 主催
    「介護雇用管理研修」業務委託登録講師
  • 株式会社フィールドプランニング 様 主催
    「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」業務委託主任講師
  • 神奈川韓国商工会議所様 主催
    経営者セミナー「お役立ち助成金講座
    (雇用の確保と5年ルールへの対応策)」
  • 日本経営開発協会様 御紹介
    株式会社根布工業様 主催
    安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ

講演会の講師紹介・講師派遣なら講演依頼.com

研修について

当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。

研修のご依頼例

  • 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
  • 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
  • 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい

執筆のご依頼

雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。

掲載履歴

HP記事執筆

ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。

「働き方改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号

「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。

「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」

「SR」 9月号

SR 9月号

ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。

ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。

(第27号 2012年8月6日発売)

元職員が指南する!ハローワークの効果的な利用の仕方

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