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「静かな退職」はなぜ起きる? 企業が対応すべき理由とは?   2024.09.27

「静かな退職」という言葉をご存知でしょうか。これは、従業員が退職はしないものの、仕事に対する熱意を失い、最低限の業務のみをこなすようになる現象を指します。近年、この「静かな退職」が日本のみならず世界中の職場で大きな話題となっています。

 

一部には「Z世代の仕事への価値観」と評する嫌いもあるようですが、果たしてそうとも言い切れない状況があります。

 

「静かな退職」の実態と、企業が取るべき対策について掘り下げていきます。



◾️「静かなる退職」は、Z世代のものではない

 

世論調査で有名な米ギャラップ社の「グローバル職場環境調査」の2024年によると、「静かな退職」者(「エンゲージしていない」「生き生きと働いていない」と分析できる人)の割合は、世界の労働者の約6割に及んでいるとの結果でした。

 

また、米クアルトリクス社の行った「従業員エクスペリエンスに関する調査2023」(日本)では、「自発的貢献意欲が低いものの、継続勤務意向は高い状態」と回答した人を「静かな退職」者と定義して抽出したところ、約15%が該当したということです。

 

年齢別に見ていくと40代が18%、50代が17%と平均を上回った一方、20代以下は9%と、実はZ世代というよりも「働かないミドル」が多い結果となっています。

 

これらの数字は、「静かな退職」がZ世代を中心とした若手の問題ではなく、全世代、むしろ職場の中堅層の課題であることを示しています。




◾️なぜ「静かな退職」が広がっているのか?

 

「静かな退職」は、単にZ世代特有の問題ではなく、日本の職場における価値観の変化と従来の雇用システムとの不適合が顕在化した結果とも言えます。考えられる要因を見ていきましょう。

 

まず、高度経済成長期に確立された年功序列・終身雇用システムが、現在のグローバル競争や技術革新の速い環境に適合しなくなっていることが挙げられます。多様化する市場に適応した組織を実現するには難しく、結果として労働に見合わない評価や報酬など従業員に皺寄せがくる形になっています。

 

その影響から、働き方に対する価値観の変化もあります。Z世代を中心に、「働きがい」「自己実現」「ワークライフバランス」を重視する傾向が強まっています。同時に個人の生活スタイルや能力の多様性が進んでいますが、それに対して、従来の画一的な雇用形態や勤務体系は対応できなくなっています。

 

結果、会社で働くこと・職場で得られることへの期待値は下がりがちです。「静かな退職」はその状態に対して個人が出した一つの答えと言えるかもしれません。



◾️「静かな退職」を放置することの危険性

 

「静かな退職」をしている人は、普段は決して表だった問題を起こすというわけではありません。ゆえに、周囲がその状況に陥っていることに気づかない場合も多く、ともすれば気づいても「業務をこなしてくれさえすれば」と容認しがちです。

 

しかし、「静かな退職」者が出ている状態放置している場合、以下のようなリスクに直面する可能性があります

 

1つは人材の流出です。特に優秀な若手人材が、より柔軟な働き方を提供する企業に突然転職をしてしまうことは起こり得ます。

 

また2つ目にはイノベーションの停滞です。「こなすだけの業務」が多くなることで、新しい発想や方法を取り入れたり、市場の変化に対応ができないことになります。結果、競争力の低下のリスクが生じます。

 

3つ目は、組織の硬直化です。「言っても無駄」「新しいことに取り組まない」「やり方を変えない」という人が組織内にいることで、次第に変化を受け入れない閉鎖的で硬直した組織風土が醸成されていってしまいます。



◾️「静かな退職」をどう防ぐ?どう改善する?

 

上述したように、「静かな退職」は、決して看過したままでよいものではありません。では企業はどのような対策を取るべきでしょうか。以下に、効果的と思われる施策をいくつか挙げます。

 

1つ目のポイントは「コミュニケーションの改善」です。定期的な1on1ミーティング実施するのが最も効果的ですが、オープンな対話の場を作ったり経営層からの明確なビジョンの発信をしていくこともいいでしょう。

 

2つ目のポイントは「従業員エンゲージメントの向上策」です。社内イベントや研修を充実させることや、従業員の声を積極的に聞く仕組みづくりをするという会社からの働きかけがまず大切ですが、会社の方針決定への従業員の参画機会を設けることも考えられます。

 

3つ目のポイントは「キャリア開発支援」です。個々の従業員のキャリアプラン作成支援をしつつ、具体的にスキルアップのための教育機会の提供をしたり、社内公募制度の活性化を行うことが考えられます。

 

また、「適切な評価・報酬制度の構築」も重要なポイントです。たとえば、成果主義の導入と適切な運用や金銭的報酬以外のインセンティブの導入など、やりがいにつながる制度を考えたいものです。成果主義に限らず、透明性の高い評価制度の構築が大切です。

 

それと同時に、「柔軟な働き方の導入」も必須と言えるでしょう。フレックスタイム制やリモートワークの拡充、ワークライフバランスを重視した休暇制度の導入、副業・兼業の容認などをぜひ検討いただきたいものです。

 

これらの対策を総合的に実施することで、従業員の満足度を高め、「静かな退職」の防止につながることが期待できます。




「静かな退職」は、ここ数年の大きな社会構造の変化のあらわれでもあり、完全に避けることは難しいかもしれません。しかし、企業が適切な対策を講じることで、その影響を最小限に抑えることは可能です。

 

「静かな退職」を単に問題視するのではなく、職場環境や企業文化を見直す契機として捉え、より良い組織づくりにつなげていくことが重要です。それこそが、持続可能な企業成長への道筋となるのではないでしょうか。



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ご参考:

 

■ギャラップ社:State of the Global Workplace 2024 Report(2024年6月)

https://www.gallup.com/workplace/349484/state-of-the-global-workplace.aspx

 

■クアルトリクス社「従業員エクスペリエンスに関する調査2023」(日本)(2023年)

https://www.qualtrics.com/ja/ebooks-guides/2023-ex-trends-japan-report/



(文責:コラム担当/金田千和)


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【参加者様からのお声】

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  • メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
  • 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
  • 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
  • 株式会社LEC 様 主催
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  • 株式会社フィールドプランニング 様 主催
    「派遣元・派遣先責任者講習」業務委託主任講師
  • 神奈川韓国商工会議所様 主催
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ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。

(第27号 2012年8月6日発売)

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