男女賃金格差開示が本格化。格差改善の施策とメリットは? 2023.10.29
2022年7月の女性活躍推進法の省令改正により、301人以上を雇用する企業などの事業主に、男女間賃金格差の情報開示が義務付けられ、1年あまりが経過しました。その間、決算を終えた企業から男女賃金格差の開示が行われています。
世界的に見て、この男女間賃金格差の情報開示は、ようやく日本も重い腰をあげた、ともいうべきところなのですが、その格差解消は具体的に進んでいるのでしょうか。
その実態とメリットについてデータから考えます。
◾️日本は、男女間賃金格差で世界ワースト4位
ご存知の方も多いかもしれませんが、OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本はこの四半世紀で男女の賃金格差が15ポイント縮小し、21.3%差となりました。しかし、これは、韓国・イスラエル・ラトビアに続き世界ワースト4位です。
実際の金額で男女の格差を見てみると、フルタイムに限ったところでも、平均月収は大卒女性は28万8千円と高卒男性の29万5千円に及びません。(厚生労働省:賃金構造基本統計調査 2021年3月より)これに非正規雇用・短時間の労働者を勘案するとさらに格差があることが実感できます。
◾️賃金格差にインパクト大、管理職比率の低迷
ここ数年、「共働き世帯」が増えています。夫婦でともに家事や育児を分担していくことが若い世代を中心に「普通」となりつつあり、男性育休も法令の後押しもあって少しずつ浸透してきています。
妊娠・出産・子育て期も柔軟に仕事をしていきたい・続けたいという女性が増え、M字曲線は次第にフラットになってきていると言われています。
それでもなお、男女の賃金格差が大きいのには、その組織的な処遇にあると言えるでしょう。具体的には、管理職比率が低い、あるいは非正規雇用者が多いということです。
日本生産性本部の調査によると、東証プライム上場企業のうち女性管理職の比率が5%未満の企業が全体のおよそ半数、15%未満となると84.1%というのが現状です。
職位とともに給与は高くなるのですから、管理職が少なければ自ずと給与水準は低いままというのは当然の結果と言えます。
◾️管理職登用でも埋まらない格差の原因は?
この現状に対して、管理職登用に取り組む企業も増えていることは事実です。しかしながら、この管理職登用の他にも盲点があります。
それは、中途採用者に対する待遇です。多くの企業では、中途採用者の待遇を決める際、前職での給与や、社内で同程度の要件を備えた人材、同程度の勤続年数=経験年数として、決定することが多いでしょう。
その時点で格差があるとすれば、その格差をそのまま踏襲することになります。
◾️男女格差の少ない企業ほどPBRが高いデータも
このように、男女の賃金格差については、古い社会通念やそれによる職場の風土・社員の意識などの他にも、構造的な課題があることがわかります。
それらを改善していくのは容易にはいかないため、つい優先順位を下げてしまいがちかもしれません。
ただ、データをみると、そうも言っていられない現状も見えてきます。
あずさ監査法人が2023年夏、3月期決算の上場企業1800社超の有価証券報告書を分析したところ、PBRが1.5倍以上の企業(478社)の女性管理職比率は平均14.2%と全体平均の9.3%より高く、PBR1倍未満(1088社)の比率は平均以下の7.2%にとどまっていることがわかりました。
また、男女賃金差でも同様の傾向が見られました。PBR1.5倍以上の企業(458社)は平均69.3%と全体平均の66.8%より賃金差が小さかったのに対し、PBR1倍未満(1114社)は平均65.8%と差が大きかったのです。
この男女賃金格差やその改善の鍵を握る管理職登用比率の改善に注力することが、勝ち抜く企業への有効な一手と言えるかもしれません。
みなとみらい人事コンサルティングでは、人事・労務に関わる最新情報を元に、貴社の状況に合わせたご相談に応じています。
また、女性活躍推進策・男女賃金格差の改善策についても、アドバイスが可能です。
お問合せ・相談フォームから、お気軽にお声がけください。初回の相談は無料です。
ご参考:
■経済協力開発機構(OECD):「男女間賃金格差 (Gender wage gap)」(2022年)
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/gender-wage-gap-japanese-version.htm
■厚生労働省:賃金構造基本統計調査(2021年3月)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
■公益財団法人 日本生産性本部:2023 年 3 月末決算企業の有価証券報告書「人的資本開示」状況(速報版) (2023年8月)https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/hrc20230802_press.pdf
■あずさ監査法人:有価証券報告書の開示に関するデータ分析 (2023年8月)
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2023/08/information-disclosure.html
(文責:コラム担当/金田千和)
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セミナー開催実績例
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講演実績
日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修
「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」
【参加者様からのお声】
- 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
- 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
- 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
- マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。
一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」
【参加者様からのお声】
- メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
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「介護雇用管理研修」業務委託登録講師 - 株式会社フィールドプランニング 様 主催
「派遣元・派遣先責任者講習」業務委託主任講師 - 神奈川韓国商工会議所様 主催
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株式会社根布工業様 主催
安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ
研修について
当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。
研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)