【派遣契約書】に必ず入れるべき法定項目とは?社労士が実務ポイントを解説
2025.12.12
労働者派遣契約書は、「派遣元と派遣先が取り交わす単なる契約書」という位置づけではありません。
労働者派遣法に基づき、派遣労働者の働く環境と安全を守るために定められた「法定書面」です。
そのため記載すべき項目が細かく定められており、1つでも欠けると行政指導の対象になるケースも珍しくありません。
派遣会社として日々現場対応に追われる皆さまからも、
「契約書のここは法的にどこまで書けばいいのか?」
「うちの契約書、ここが抜けている気がする…」
といった相談を数多くいただきます。
本記事では、社会保険労務士の立場から「法定項目」と「実務で押さえるべきポイント」を踏まえ、派遣契約書の基本を“現場目線で”わかりやすく解説します。
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■1. 派遣契約書の基本と法的な位置づけ
(派遣契約書 法的位置づけ)
まず大前提として、労働者派遣契約書は派遣元・派遣先の取り決めを明らかにするだけでなく、**派遣労働者を保護する目的**を持っています。
そのため、契約書に記載しなければならない項目は、民間取引の契約よりもはるかに細かく、法的に義務化されています。
具体的には、労働者派遣法第26条で「必ず書かなくてはならない項目」が明確に列挙されています。
派遣会社の中には、取引先の要望に合わせて「ひな形を簡略化したい」と感じるケースもあると思います。
ですが、簡略化しすぎると法令違反につながり、監督署や労働局からの行政指導、是正勧告のリスクが高まります。
**派遣契約書は「取引契約書」ではなく、「労働者の保護法令に基づく書面」**
この認識が、まずは非常に重要です。
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■2. 労働者派遣法26条が求める記載義務とは
(労働者派遣法26条 必須項目)
労働者派遣法26条では、派遣契約書に記載すべき事項を明確に定めています。
主な項目をまとめると次のとおりです。
- 派遣労働者が従事する業務内容
- 派遣労働者の人数
- 派遣期間(開始日・終了日)
- 派遣料金
- 指揮命令者の氏名または役職
- 安全衛生に関する事項
- 苦情処理の体制
- 派遣元・派遣先の責任分担
これらは「必ず書かなければならない」項目です。
一部が欠けていても契約として無効になるわけではありませんが、**法令違反として行政指導の対象になり不利益が発生します。**
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■3. 業務内容を明確に書く重要性
(派遣 業務内容 明確化)
現場で最もトラブルになるのが、業務内容の曖昧さです。
「事務業務」
「軽作業」
「営業サポート」
このような書き方では、実際にどこまでの業務が許容されるのか判断がつかず、派遣先が業務範囲を逸脱した指示を出してしまうケースが多発します。
たとえば「事務作業」と記載していたが、実際には外勤サポートや受付対応まで行わせていた──という状況は、行政調査が入ると必ず指摘されます。
業務内容の記載は、最低でも以下のように分解するのがおすすめです。
- データ入力
- 書類作成補助
- 電話応対
- ファイリング
- 来客対応(必要な場合のみ)
派遣社員が安心して働けるだけでなく、派遣先担当者も「どこまで指示して良いか」が明確になります。
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■4. 派遣労働者の人数と派遣期間のルール
(派遣期間 設定 方法)
派遣契約書には「何名を」「いつからいつまで」派遣するかを必ず記載します。
ここで重要なのが、
**派遣期間は“更新前提の未記載”が許されない**
という点です。
「あとは実態見て調整しましょう」
「とりあえず1カ月で出しておいて、あとで延ばします」
こうした運用は非常に多いですが、法令上は適切ではありません。
また、いわゆる“3年ルール”についても、契約期間の記載と実態を一致させる必要があります。
更新を繰り返す場合は、派遣先責任者との事前協議や書面管理が極めて重要です。
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■5. 派遣料金の記載方法と根拠資料
(派遣料金 設定 根拠)
派遣料金は、契約の根幹です。
時間単価であれば「1時間あたり○円」と必ず明記し、総額や交通費の扱いなども明確にしておきます。
また、行政調査の際には「料金設定の根拠」を確認されるケースが増えています。
- 派遣スタッフの賃金
- 社会保険料
- 会社負担の経費
- マージン率
これらが妥当性のあるものか、資料で説明できるように準備しておくと、調査で慌てなくて済みます。
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■6. 指揮命令者を特定する意味
(指揮命令者 派遣契約)
指揮命令者とは、派遣労働者に直接指示する派遣先の担当者です。
契約書で氏名または役職を明記するのは、責任の所在を明確にするためです。
実務でありがちなのが、現場の都合で指示担当者が頻繁に変わるケース。
変更があった場合は速やかに契約書へ反映しなければなりません。
曖昧にしたまま運用すると、
「誰が指示していいのか不明」
「複数の担当者がばらばらに注文してくる」
などの問題が起き、派遣労働者が混乱します。
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■7. 苦情処理体制の明文化
(派遣 苦情処理 フロー)
派遣労働者からの苦情は、派遣元・派遣先双方が対応する責任を持っています。
契約書には以下を明記するのが望ましいです。
- 苦情窓口の担当者
- 連絡方法
- 解決までの基本フロー
- 双方の役割分担
この体制が機能していないと、派遣労働者が直接労働局に相談するケースも少なくありません。
「苦情対応ができていない」という指摘は行政指導でも頻繁に見られます。
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■8. 安全衛生情報の共有と記載
(派遣 安全衛生 情報共有)
特に製造業・物流・研究施設など、危険や化学物質を扱う現場では、安全衛生に関する記載が極めて重要です。
- 作業の危険性
- 特別教育が必要か
- 保護具の支給
- 作業環境測定の状況
- 化学物質の情報(SDS 等)
派遣先がこれらの情報を適切に提供しないと、重大事故につながる恐れがあります。
契約書だけでなく、着任前の情報共有や教育もセットで整える必要があります。
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■9. よくある誤解とNG運用
(派遣契約書 よくある間違い)
現場で実際に多い誤解を挙げると次のとおりです。
1. **「業務内容はざっくり書けばいい」→NG**
曖昧にすればするほど、指揮命令違反の可能性が高まります。
2. **「派遣期間は後で調整すればいい」→NG**
更新前提の未記載は法令違反です。
3. **「料金はあとで改定すればいい」→NG**
後付け変更はトラブルの元。契約時点で確定が必要。
4. **「指揮命令者は現場で適当に」→NG**
責任の所在が不明確になり、運用が混乱します。
派遣契約書で誤りがあると、すべてが現場のトラブルに直結します。
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■10. 契約と運用を一致させるための社内体制
(派遣契約 運用 管理)
最も重要なのは、契約書を作った後の「運用」です。
- 業務内容が変わっていないか
- 担当者の変更は正しく反映されているか
- 安全衛生情報は最新か
- 更新手続きが漏れていないか
- 派遣料金の根拠が説明できる状態か
特に契約更新が多い現場では、更新漏れが最もよく発生します。
無契約のまま派遣を継続してしまうと、行政指導では重い指摘を受ける可能性があります。
社内で「契約管理のフロー」を決めて運用し、担当者間で連携できる体制づくりが不可欠です。
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■まとめ
労働者派遣契約書は、派遣労働者の働く環境を守るための法定書面です。
業務内容・派遣期間・料金・指揮命令者・安全衛生・苦情処理など、必須項目を正確に記載し、かつ運用まできちんと整えることで、派遣元・派遣先双方が安心して事業を進めることができます。
派遣契約書はただの形式ではなく、“現場と法令の両方をつなぐ仕組み”。
その意味を理解して整えることで、派遣会社としての信頼性も高まり、トラブルのない安定した運営につながります。
派遣契約の運用に不安がある場合は、専門家に早めに相談することで、リスクを最小限に抑えることができます。
派遣スタッフの安心と、企業の円滑な運営のために、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
初回のご相談は無料ですので、お気軽にホームページお問合せよりご連絡ください。
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講演実績
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【参加者様からのお声】
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- 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
- マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。
一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」
【参加者様からのお声】
- メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
- 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
- メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
- 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
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研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)


