労働条件通知書の法的要件と派遣会社の実務運用——社会保険労務士が解説する完全ガイド
2026.01.28
労働条件通知書は、労働者を雇い入れる際に交付が義務付けられている極めて重要な法定書類です。特に人材派遣業を営む事業者にとっては、派遣元事業主としての法的責任を果たすと同時に、労働者派遣法と労働基準法という二つの法律を同時に遵守しなければならないという特殊性があります。そのため、記載すべき内容や日々の運用方法については、一般企業以上に高度な実務知識と正確性が求められます。
本稿では、社会保険労務士の立場から、労働条件通知書に関する法的要件を体系的に整理したうえで、派遣会社が実務において特に注意すべきポイントや、トラブルを未然に防ぐための具体的な運用方法について、実例を交えながら詳しく解説してまいります。
労働条件通知書とは何か——その定義と法的位置づけ
労働条件通知書とは、労働基準法第15条に明確に規定されている、使用者が労働契約を締結する際に労働者に対して労働条件を明示するための書面です。この規定は、労働契約という法律行為において、雇用する側と雇用される側の間で、労働条件に関する認識の齟齬や誤解が生じないようにするための制度的な仕組みとして設けられています。
労働条件の明示は、単に口頭で説明すればよいというものではありません。法律は、特に重要な事項については必ず書面による交付を義務付けており、これを怠った場合には労働基準法違反として、罰則の対象となる可能性があります。具体的には、30万円以下の罰金が科される可能性があり、企業のコンプライアンス上も看過できない問題となります。
労務管理の専門家である社会保険労務士の実務においても、労働条件通知書は労使トラブルを予防するための最も基礎的かつ重要な書類として位置づけられています。実際に労働基準監督署への相談案件や労働審判の事例を見ても、労働条件の認識違いに起因するトラブルは非常に多く、その多くは契約締結時の書面交付や説明が不十分であったことに原因があります。
したがって、労働条件通知書は単なる形式的な書類ではなく、企業が労働者に対して誠実に労働条件を開示し、双方が納得したうえで労働契約を開始するための、法的な基盤となる重要な文書であると理解すべきです。
労働条件通知書に記載すべき法定事項——絶対的明示事項と相対的明示事項
労働基準法施行規則第5条では、労働条件通知書に記載しなければならない事項が詳細に定められています。これらは「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」の二つに分類されます。
絶対的明示事項とは、すべての労働契約において必ず書面で明示しなければならない事項です。具体的には以下の項目が該当します。
第一に、労働契約の期間に関する事項です。期間の定めがあるのか、それとも期間の定めのない契約なのかを明確にしなければなりません。有期労働契約の場合には、契約期間を具体的に記載するとともに、更新の有無や更新の判断基準についても明示する必要があります。
第二に、就業の場所および従事すべき業務に関する事項です。労働者がどこで、どのような仕事をするのかを具体的に示す必要があります。配置転換の可能性がある場合には、その範囲についても記載することが望ましいとされています。
第三に、始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合の就業時転換に関する事項です。労働時間は労働者の生活に直結する重要な条件であり、詳細かつ明確な記載が求められます。
第四に、賃金の決定、計算および支払の方法、賃金の締切りおよび支払の時期に関する事項です。基本給の額や計算方法、各種手当の内容、控除される項目、支払日などを具体的に記載します。
第五に、退職に関する事項です。これには定年制の有無、継続雇用制度の内容、自己都合退職の手続き、解雇の事由などが含まれます。
一方、相対的明示事項とは、その制度を設ける場合にのみ明示が必要となる事項です。退職手当の計算方法や支払時期、臨時に支払われる賃金や賞与、労働者に負担させる食費や作業用品、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰や制裁、休職に関する事項などがこれに該当します。
社会保険労務士の実務では、これらの法定事項が漏れなく記載されているかを確認することはもちろん、最新の法改正内容が適切に反映されているかを常にチェックすることが重要です。特に2024年4月からは労働条件明示のルールが改正され、有期契約労働者に対しては更新上限の有無や無期転換申込機会、無期転換後の労働条件についても明示が義務化されていますので、様式の見直しが必要です。
派遣会社における労働条件通知書の特殊性と記載内容
人材派遣事業を営む会社が労働条件通知書を作成する際には、一般企業とは異なる特別な配慮が必要となります。これは、派遣労働者の雇用関係が派遣元企業との間に存在する一方で、実際の就業は派遣先企業で行われるという、いわゆる「雇用と使用の分離」という特殊な形態に起因します。
派遣会社は、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示に加えて、労働者派遣法第34条に基づく就業条件の明示も同時に行わなければなりません。具体的には、以下のような派遣特有の事項を明示する必要があります。
まず、派遣先企業の名称、事業所の所在地、就業する場所に関する情報です。派遣労働者は実際には派遣先で働くため、どの企業のどの事業所で勤務するのかを明確にすることは極めて重要です。
次に、派遣先における組織単位ごとの業務内容や責任者に関する情報です。派遣先での指揮命令者が誰であるのか、どの部署でどのような業務に従事するのかを具体的に記載します。
さらに、派遣期間も重要な明示事項です。労働契約期間と派遣期間は必ずしも一致するとは限りませんが、派遣労働者にとっては派遣先での就業期間が実質的な労働条件となるため、明確な記載が求められます。
また、同一労働同一賃金への対応として、派遣労働者の待遇が派遣先の通常の労働者との均等・均衡方式によるのか、それとも労使協定方式によるのかを明示し、賃金の決定方法についても詳細に説明する必要があります。特に労使協定方式を採用する場合には、協定の対象となる職種や賃金水準の根拠となる統計情報なども、労働者が理解できるように説明することが望ましいとされています。
加えて、派遣労働者に対しては、雇用安定措置の内容や、キャリアアップ支援の内容、苦情処理体制に関する情報も提供することが求められます。これらは派遣法に基づく派遣元事業主の義務であり、労働条件通知書または別紙で明示する必要があります。
実務上は、労働基準法に基づく労働条件通知書と、派遣法に基づく就業条件明示書を一体化した様式を使用することが一般的です。ただし、その場合でも双方の法律が求める事項がすべて網羅されているかを、法律の専門家である社会保険労務士がチェックすることが重要です。
実務における作成・運用上の重要ポイントと注意事項
労働条件通知書の作成と運用において、派遣会社が特に注意すべき実務上のポイントをいくつか挙げておきます。
**第一に、様式管理と更新の徹底です。**労働基準法や派遣法は頻繁に改正されており、様式も定期的に見直す必要があります。厚生労働省が公開しているモデル様式も改訂されることがあるため、最新版を確認し、自社の様式に反映させる作業を怠ってはなりません。社会保険労務士と顧問契約を結び、法改正情報を適時に入手できる体制を整えることをお勧めします。
**第二に、労働条件通知書と雇用契約書の関係を整理することです。**実務上は、両者を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」という様式を用いることが多いですが、この場合でも法定事項がすべて記載されているかを確認する必要があります。また、労働者の署名・押印欄を設け、契約内容に同意したことを明確にしておくことで、後日のトラブルを防ぐことができます。
**第三に、派遣契約の更新・変更時の対応です。**派遣契約は有期契約であることが多く、更新のたびに労働条件が変更される可能性があります。就業場所や業務内容、派遣期間、賃金などに変更がある場合には、速やかに書面で再通知しなければなりません。この再通知を怠ると、労働者との間で条件の認識違いが生じ、トラブルの原因となります。
**第四に、電子化対応です。**2019年4月からは、労働者が希望する場合には、電子メールやSNSなどの電子的方法による交付も認められるようになりました。ただし、労働者が電子交付を希望していること、出力して書面化できること、改変されていないことを確認できることなどの要件を満たす必要があります。電子化は業務効率化につながりますが、法的要件を満たしているかは慎重に確認すべきです。
**第五に、派遣元管理台帳や派遣先との契約書との整合性確保です。**派遣会社は、派遣元管理台帳の作成義務があり、そこに記載される内容と労働条件通知書の内容は一致していなければなりません。また、派遣先との間で締結する労働者派遣契約の内容とも整合性が取れている必要があります。これらの書類間で矛盾があると、行政指導の対象となるだけでなく、労働者や派遣先との間でトラブルが発生するリスクが高まります。
**第六に、外国人労働者への対応です。**外国人労働者を派遣する場合には、その労働者が理解できる言語で労働条件を説明することが望ましいとされています。法律上は日本語での交付で足りますが、トラブル防止の観点からは、母国語による翻訳版を併せて交付することが推奨されます。
まとめ——専門家活用による適正な労務管理体制の構築
労働条件通知書は、単に法律で義務付けられているから作成する形式的な書類ではありません。それは、派遣会社が法令を遵守し、労働者の権利を尊重する姿勢を示す重要な証拠であり、企業の信頼性を示すコンプライアンス体制の根幹をなす文書です。
特に人材派遣事業においては、労働基準法と労働者派遣法という二つの法体系を同時に理解し、それぞれが求める要件を正確に書面に反映させる必要があります。記載漏れや記載誤り、更新時の通知漏れなどの運用ミスは、行政指導や是正勧告の対象となるだけでなく、労働者との間の信頼関係を損ない、最悪の場合には労働紛争に発展するリスクをはらんでいます。
こうしたリスクを未然に防ぎ、適正な労務管理体制を構築するためには、労務管理の専門家である社会保険労務士を積極的に活用することが極めて有効です。専門家は、最新の法改正情報を常に把握しており、自社の実務に即した適切な書式の整備や運用ルールの構築について、具体的なアドバイスを提供することができます。
また、定期的な労務監査を実施することで、既存の労働条件通知書の内容が法改正に対応できているか、派遣元管理台帳や契約書との整合性が取れているか、運用上の問題点はないかなどを体系的にチェックすることも可能です。
人材派遣業は、労働力の需給調整という重要な社会的役割を担う事業であり、その適正な運営は労働市場全体の健全性にも関わります。労働条件通知書の適正な作成と運用は、その第一歩です。ぜひ専門家の知見を活用しながら、長期的な視点でリスク管理体制を整備し、労働者からも派遣先企業からも信頼される派遣会社を目指していただきたいと思います。
派遣事業の運営において労働条件通知書に関する疑問や不安がある場合には、遠慮なく社労士事務所みなとみらい人事コンサルティングにご相談ください。適切な書式の選定から、法改正への対応、日常的な運用方法まで、実務に即した具体的なサポートを提供いたします。
【残り1週間】2026年度派遣同一労働同一賃金労使協定セミナー 2026年2月3日(火)開催予定の無料セミナーまで、残り1週間となりました。
2026.01.27
派遣事業における2026年度の労使協定対応は、法令遵守と収益性の両立において重要な経営課題です。本セミナーでは、派遣業界に精通した社会保険労務士が、最新の賃金動向と実務対応のポイントを解説いたします。
開催概要
項目 内容
日時 2026年2月3日(火)14:00-15:00
形式 Zoomオンライン開催
参加費 無料
定員 500名
講師 泉 文美(社労士事務所みなとみらい人事コンサルティング 代表社会保険労務士)
こんな方におすすめ
2026年度の労使協定における賃金水準を把握したい
派遣料金交渉に向けて情報収集を進めたい
業界市況を踏まえた事業戦略を立案したい
セミナー内容
本セミナーでは、以下の内容をお伝えします。
・2026年度の最新賃金動向
・最新の賃金統計データをもとにした業界動向の解説
・実務対応のポイント
・労使協定の作成から届出までの具体的な手順
・派遣料金交渉のヒント
・取引先との交渉に活用できる実践的な情報
お申し込み
定員500名、お申込みが順調に増えております。お早めにお申し込みください。
▼ お申し込みはこちら
https://lp.porters.jp/seminar_260203?utm_source=referral&utm_medium=referral&utm_campaign=MMjinji
派遣業界の最新情報をキャッチアップする絶好の機会です。経営者様・派遣元責任者様のご参加をお待ちしております。
【2026年最新】派遣料金の適正化が進む!派遣会社が知っておくべき価格交渉の新指針と実務対応
2026.01.26
はじめに:派遣業界を取り巻く環境変化と価格交渉の重要性
2026年1月、人材派遣業界に大きな動きがありました。日本人材派遣協会が派遣先企業に対して「派遣料金の価格交渉に向けた協議」を正式に依頼する文書を発出したのです。
この背景には、内閣官房および公正取引委員会が連名で改正した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」があり、厚生労働省からも周知依頼がなされました。
派遣会社の経営者や人事担当者にとって、派遣料金の適正化は長年の課題でした。しかし、派遣先企業との力関係や、「料金を上げたら契約を切られるのでは」という不安から、なかなか価格交渉に踏み切れなかったという声も多く聞かれます。
今回の指針改正は、そうした派遣会社の皆様に「正当な価格交渉を行うための法的後押し」を与えるものです。本記事では、派遣特化型社会保険労務士の視点から、今回の動きの意義と、派遣会社が取るべき実務対応について詳しく解説します。
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1. 政府指針改正の背景:「物価上昇を上回る賃金上昇」実現への取り組み
政府の賃金上昇政策と派遣業界の役割
日本政府は現在、「物価上昇を上回る賃金上昇」の実現を重要政策課題として掲げています。これは、長引くデフレからの脱却と、持続的な経済成長を目指すための取り組みです。
しかし、賃金上昇を実現するためには、企業が労働者に支払う賃金の原資を確保する必要があります。特に人材派遣業界においては、派遣料金が適正に設定されなければ、派遣労働者への賃金引き上げは困難です。
「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」改正の意義
2026年1月に改正された「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」は、まさにこの問題に対応するためのものです。
この指針では、以下のポイントが明確化されています:
- 労務費(人件費)の上昇を適切に価格に転嫁することの重要性
- 発注者(派遣先企業)と受注者(派遣会社)が対等な立場で価格交渉を行うこと
- 価格交渉を拒否したり、一方的に不利な条件を押し付けることは、独占禁止法上問題となる可能性があること
つまり、派遣会社が派遣料金の適正化を求めることは、法的に正当な行為であり、派遣先企業もそれに応じる責任があるということです。
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2. 日本人材派遣協会の取り組み:派遣先企業への協議依頼文書の意味
業界団体としての公式な後押し
日本人材派遣協会が会長・理事会一同名で発出した依頼文書は、個々の派遣会社が単独で交渉するのではなく、業界全体として派遣料金の適正化に取り組む姿勢を示すものです。
これにより、派遣会社は「うちだけが値上げを要求しているわけではない」という安心感を持って、派遣先企業と交渉に臨むことができます。
厚生労働省リーフレットの活用方法
依頼文書と併せて、厚生労働省が作成したリーフレット「派遣労働者の公正な待遇確保のため、派遣元・派遣先の連携・協力をお願いします」も活用できます。
このリーフレットには、派遣法および同指針を踏まえた、派遣先に求められる役割や考え方が整理されています。具体的には:
- 派遣労働者の待遇に関する情報提供義務
- 派遣料金と派遣労働者の賃金のバランス
- 派遣料金の適正化に向けた協議の重要性
これらの内容を、派遣先企業への説明資料として使うことで、客観的かつ説得力のある交渉が可能になります。
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3. 派遣料金適正化の必要性:派遣労働者と派遣会社の双方にとってのメリット
派遣労働者にとってのメリット
派遣料金が適正化されることで、まず恩恵を受けるのは派遣労働者です。
**賃金の向上**
派遣料金の増額分は、派遣労働者の賃金引き上げに充てられます。これにより、物価上昇に対応した実質的な生活水準の維持・向上が可能になります。
**待遇の改善**
賃金だけでなく、福利厚生の充実や、キャリアアップ支援の強化にも資金を投入できるようになります。
**雇用の安定**
派遣会社の経営基盤が安定することで、派遣労働者の雇用も安定します。
派遣会社にとってのメリット
派遣会社にとっても、派遣料金の適正化は重要な経営課題です。
**経営の健全化**
適正な利益を確保することで、企業としての持続可能性が高まります。
**人材確保力の強化**
高い賃金や充実した待遇を提供できることで、優秀な派遣スタッフを確保しやすくなります。
**サービス品質の向上**
教育研修や、派遣スタッフのフォロー体制に投資できるようになり、サービス品質が向上します。
派遣先企業にとってのメリット
実は、派遣料金の適正化は、派遣先企業にとってもメリットがあります。
**優秀な人材の安定供給**
派遣会社が優秀な人材を確保・育成できることで、派遣先企業は質の高い人材を安定的に受け入れられます。
**コンプライアンスの強化**
派遣労働者の待遇が適正に確保されることで、派遣法違反などのリスクが低減します。
**企業イメージの向上**
派遣労働者を大切にする企業として、社会的評価が高まります。
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4. 派遣料金の価格交渉:実務で押さえるべきポイント
交渉のタイミング
派遣料金の改定交渉は、以下のタイミングで行うのが効果的です:
- 派遣契約の更新時
- 年度の切り替え時(4月)
- 最低賃金改定後
- 派遣法や関連指針の改正後
今回の指針改正を受けて、2026年4月の契約更新に向けて交渉を開始するのが理想的です。
交渉に必要な資料の準備
交渉を成功させるためには、客観的なデータや資料の準備が不可欠です。
**必要な資料**
- 日本人材派遣協会の依頼文書
- 厚生労働省のリーフレット
- 最低賃金の推移データ
- 一般労働者の賃金水準(職業安定局長通達)
- 自社の派遣スタッフの賃金データ
- 同業他社の派遣料金相場(可能な範囲で)
交渉時の説明の仕方
派遣先企業に対しては、以下のような説明が効果的です:
**× 悪い例**
「経営が厳しいので、派遣料金を上げてください」
**○ 良い例**
「政府の指針改正により、労務費の適切な転嫁が求められています。派遣スタッフの待遇を維持・向上させ、優秀な人材を安定的に供給し続けるために、派遣料金の見直しについてご協議いただけますでしょうか」
重要なのは、「値上げ」ではなく「適正化」であること、そして派遣先企業にとってもメリットがあることを伝えることです。
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5. 同一労働同一賃金との関連:労使協定方式における賃金水準の確保
労使協定方式の基本
派遣法では、派遣労働者の待遇決定方式として「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つが定められています。
多くの派遣会社が採用している「労使協定方式」では、一般労働者の賃金水準(職業安定局長通達)以上の賃金を支払うことが求められます。
2026年度の賃金水準上昇
2026年度(令和8年度)の一般労働者の賃金水準は、2025年度と比較して上昇しています。特に通勤手当は73円から79円へと6円の増加となっています。
派遣会社は、この賃金水準に合わせて派遣スタッフの賃金を引き上げる必要がありますが、そのためには派遣料金の適正化が不可欠です。
派遣料金と賃金のバランス
派遣料金が据え置かれたまま賃金だけを上げると、派遣会社の利益が圧迫され、経営が成り立たなくなります。
派遣先企業には、「派遣料金の一定割合が派遣労働者の賃金に充てられている」という仕組みを理解してもらい、賃金上昇に見合った派遣料金の改定に協力してもらうことが重要です。
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6. よくある質問:派遣料金交渉に関するQ&A
Q1. 派遣先企業から「他社はもっと安い」と言われたらどうすればいい?
A. 価格だけでなく、サービスの質や、派遣スタッフの定着率、スキルレベルなど、総合的な価値を説明しましょう。「安かろう悪かろう」では、結果的に派遣先企業にとってもマイナスです。
Q2. 交渉が難航したらどうすればいい?
A. 一度に大幅な値上げを求めるのではなく、段階的な改定を提案するのも一つの方法です。また、日本人材派遣協会や社会保険労務士などの専門家に相談することも有効です。
Q3. 契約書に「料金は改定しない」と書かれている場合は?
A. 契約書の条項であっても、労働法令や公正取引の観点から問題がある条項は無効となる可能性があります。専門家に相談の上、派遣先企業と協議することをお勧めします。
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7. 今後の展望:派遣業界の持続可能性に向けて
派遣労働者の待遇改善は社会的課題
派遣労働者の待遇改善は、単に派遣業界だけの問題ではなく、日本社会全体の課題です。
少子高齢化が進む中、働き方の多様性を確保し、誰もが安心して働ける環境を整えることは、国家の重要政策となっています。
派遣会社の社会的責任
派遣会社には、派遣労働者の雇用主として、適正な待遇を提供する責任があります。そのためには、適正な派遣料金を確保することが不可欠です。
「料金交渉は難しい」「派遣先の機嫌を損ねたくない」という消極的な姿勢ではなく、派遣労働者の未来を守るという使命感を持って、積極的に交渉に臨むことが求められます。
業界全体での取り組みが重要
今回の日本人材派遣協会の取り組みは、業界全体で派遣料金の適正化を進めようという意思表示です。
個々の派遣会社が孤立して交渉するのではなく、業界団体と連携し、必要に応じて行政の支援も受けながら、組織的に取り組むことが成功の鍵となります。
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まとめ:今こそ行動を起こす時
2026年1月の政府指針改正と、日本人材派遣協会の依頼文書発出は、派遣料金の適正化を進める絶好の機会です。
派遣会社の皆様には、以下のアクションをお勧めします:
✅ 日本人材派遣協会の依頼文書と厚生労働省のリーフレットを入手する
✅ 派遣先企業との価格交渉のスケジュールを立てる
✅ 交渉に必要な資料(賃金データ、相場情報など)を準備する
✅ 派遣先企業に対して、協議の申し入れを行う
✅ 必要に応じて、社会保険労務士などの専門家に相談する
派遣労働者の待遇改善と、派遣会社の経営基盤強化の両立は可能です。そして、それは派遣先企業にとってもメリットのある、Win-Win-Winの取り組みです。
今こそ、勇気を持って一歩を踏み出しましょう。派遣業界の未来は、私たち一人ひとりの行動にかかっています。
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【参考情報】
- 日本人材派遣協会「派遣労働者の公正な待遇確保のために ~派遣料金の価格交渉に向けた協議のお願い~」
https://www.jassa.or.jp/information/6241/
- 厚生労働省リーフレット「派遣労働者の公正な待遇確保のため、派遣元・派遣先の連携・協力をお願いします」
【この記事を書いた人】
派遣特化型社会保険労務士として、派遣会社の労務管理支援や、派遣法改正対応のコンサルティングを行っています。派遣労働者の待遇改善と、派遣会社の健全な経営の両立をサポートしています。
みなとみらい人事コンサルティング 代表社会保険労務士 泉 文美
派遣労働者の同一労働同一賃金、適用範囲はどこまで?派遣会社経営者が押さえるべき実務ポイント 2026.01.23
はじめに:派遣労働者特有の複雑性を理解する
2020年4月の労働者派遣法改正により、派遣労働者にも「同一労働同一賃金」が適用されるようになりました。この制度は、正社員と非正規社員の不合理な待遇差を解消するための重要な施策ですが、派遣労働者に関しては独特の仕組みが設けられており、多くの派遣会社経営者の方々から「いったい誰と比べて、どこまで同じにすればいいのか分かりにくい」というご相談をいただきます。
派遣労働は、雇用主である派遣元企業と、実際に働く場所である派遣先企業が異なるという特殊性があります。そのため、一般的な正社員と非正規社員の比較とは異なる視点が必要になります。派遣元企業の人事担当者だけでなく、派遣社員を受け入れる派遣先企業からも、適用範囲や比較対象についての問い合わせが増加しているのが現状です。
派遣労働者には、労働者派遣法に基づく独自のルールが設けられています。このルールを正確に理解していないと、知らず知らずのうちに法令違反を犯してしまい、行政指導や訴訟リスクにつながる可能性があります。派遣会社を経営される皆様には、この制度の正確な理解が欠かせません。
本記事では、社会保険労務士の立場から、派遣労働者における同一労働同一賃金の適用範囲と実務上の注意点について、具体的に解説していきます。
結論:派遣労働者には「2つの方式」のいずれかが適用される
まず結論から申し上げますと、派遣労働者に対する同一労働同一賃金は、派遣先の正社員と単純に比較するわけではありません。これが最も重要なポイントです。
労働者派遣法により、派遣労働者の待遇決定方式として「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかを派遣元が選択し、その方式に基づいて待遇を決定する仕組みになっています。どちらの方式を採用するかによって、適用範囲や比較対象、実務上の手続きが大きく異なるため、派遣会社としては自社がどの方式を採用しているのかを明確に認識しておく必要があります。
この2つの方式は、それぞれメリット・デメリットがあり、派遣会社の規模や事業形態、派遣先の業種などによって、どちらが適しているかは異なります。また、一度決めた方式を途中で変更することも可能ですが、労使協定の締結や派遣先への通知など、相応の手続きが必要になります。
現在の実務では、多くの派遣元企業が「労使協定方式」を採用していますが、派遣先の状況や派遣労働者の業務内容によっては、「派遣先均等・均衡方式」の方が適切な場合もあります。それでは、この2つの方式について詳しく見ていきましょう。
解説:派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違いとは
派遣先均等・均衡方式の仕組み
派遣先均等・均衡方式とは、派遣先企業で同じ業務を行っている通常の労働者(多くは正社員)と派遣労働者の待遇を比較し、不合理な差をなくすという方式です。この方式は、パートタイム・有期雇用労働法における正社員と非正規社員の比較方法と似た考え方に基づいています。
比較対象となるのは、業務内容や責任の程度、配置の変更範囲などが同一、または類似している派遣先労働者です。具体的には、以下の3つの要素を総合的に考慮して比較対象者を選定します。
- 業務の内容:従事している業務の種類や内容が同じか類似しているか
- 責任の程度:業務遂行における権限や裁量、トラブル対応の責任などが同等か
- 配置の変更範囲:転勤や異動、業務変更の可能性が同程度か
比較対象となる待遇項目は非常に幅広く、基本給、賞与、各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当、役職手当など)、福利厚生施設の利用、教育訓練機会の提供など、あらゆる労働条件が対象になります。
この方式のメリットは、派遣先企業の実態に即した公平な待遇が実現できる点です。一方、デメリットとしては、派遣先ごとに比較対象者が異なるため、同じ派遣元から派遣される労働者であっても、派遣先によって待遇が大きく変わる可能性があり、賃金管理が複雑になることが挙げられます。
また、派遣先企業には比較対象労働者の待遇情報を派遣元に提供する義務が生じるため、派遣先の協力が不可欠です。情報提供が適切に行われない場合、派遣元として適切な待遇決定ができないという問題も生じます。
労使協定方式の仕組み
一方、労使協定方式は、派遣元企業が派遣労働者の代表と労使協定を締結し、その協定に基づいて賃金や待遇を決める方式です。この方式の最大の特徴は、派遣先の正社員との直接比較を行わず、厚生労働省が毎年公表する「職種別の一般労働者の賃金水準」と同等以上の賃金を支払うことが求められる点です。
具体的には、厚生労働省の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項の規定に基づく労使協定について」に基づき、職種や地域、能力・経験に応じた賃金テーブルを設定する必要があります。
労使協定には以下の事項を定める必要があります。
- 協定の対象となる派遣労働者の範囲
- 賃金の決定方法(職種別の基準額、昇給ルールなど)
- 公正な評価方法
- 賃金以外の待遇(福利厚生、教育訓練など)
- 段階的・体系的な教育訓練の実施
- 有効期間
この方式のメリットは、派遣先が変わっても賃金水準が維持されるため、派遣労働者にとって安定性があり、派遣元にとっても賃金管理がしやすいという点です。また、派遣先から詳細な待遇情報を入手する必要がないため、手続き的な負担も軽減されます。
現在、多くの派遣元企業がこの労使協定方式を採用している理由は、実務上の運用のしやすさと、派遣労働者の待遇の安定性を両立できるためです。ただし、労使協定の締結には過半数代表者の選出など、適正な手続きが必要であり、形式的な協定では法的に無効とされるリスクがあります。
よくある誤解:派遣先の正社員とすべて同じ待遇にする必要がある?
同一労働同一賃金について、最も多い誤解が「派遣社員だから、派遣先の正社員と給与も手当も完全に同じにしなければならない」というものです。しかし、これは正しくありません。
同一労働同一賃金の趣旨は、あくまで「不合理な待遇差をなくす」ことであり、すべての待遇を完全に同一にすることではありません。業務内容や責任の程度、転勤の有無、将来的なキャリアパスなどが異なれば、合理的な理由に基づく待遇差は認められます。
例えば、派遣先の正社員には全国転勤があり、管理職へのキャリアパスも用意されている一方、派遣労働者には転勤がなく、特定の業務に限定されているような場合、基本給や賞与に一定の差があることは不合理とは言えません。重要なのは、その差に「合理的な理由」があり、「説明できる」ことです。
また、労使協定方式を採用している場合は、派遣先の賃金体系と同一である必要はまったくありません。協定に定めた内容と、厚生労働省の基準を満たしていれば適法となります。派遣先の正社員が年収600万円だからといって、派遣労働者も同額にしなければならないわけではないのです。
ただし、どちらの方式を採用している場合でも、派遣労働者への説明義務は非常に重要です。待遇決定の方式や、なぜその待遇になったのかという根拠を明確に説明できなければ、法令違反となる可能性があります。派遣契約の締結時や更新時には、待遇に関する説明書面を交付し、派遣労働者から質問があった場合には誠実に対応する体制を整えておく必要があります。
さらに、「同じ派遣会社から同じ派遣先に派遣されているのに、なぜ自分だけ待遇が違うのか」という疑問が生じないよう、社内の賃金決定ルールを明確化し、透明性を確保することも重要です。
実務での注意点:派遣元・派遣先それぞれの責任
同一労働同一賃金の実務において、最も注意すべき点は、派遣元が選択している方式を派遣先が正しく理解していないケースが非常に多いということです。これにより、必要な情報提供が行われなかったり、逆に不要な情報を求められたりといったトラブルが発生しています。
派遣元企業の責任と注意点
派遣元企業としては、まず自社がどちらの方式を採用しているのかを明確にし、派遣先企業に対してその旨を適切に通知する必要があります。
派遣先均等・均衡方式を採用している場合、派遣先から比較対象労働者の賃金、賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練などの詳細な情報を入手しなければなりません。この情報がなければ適切な待遇決定ができないため、派遣契約締結前に確実に入手する体制を整えることが重要です。
労使協定方式を採用している場合、以下の点に特に注意が必要です。
- 労使協定の有効期間管理:協定には有効期間を定める必要があり、期間満了前に更新手続きを行わないと、協定が無効になってしまいます。
- 賃金改定のタイミング:厚生労働省の基準は毎年更新されるため、それに合わせて賃金テーブルを見直す必要があります。
- 派遣労働者への書面交付:協定の内容や待遇決定の考え方を記載した説明書面を、派遣開始時に交付する義務があります。
- 教育訓練の実施:協定には「段階的・体系的な教育訓練」の実施を定める必要があり、実際に訓練を提供しなければなりません。
また、どちらの方式であっても、派遣労働者から待遇に関する説明を求められた場合には、速やかに対応する体制を整えておく必要があります。説明を拒否したり、不誠実な対応をしたりすると、労働局からの指導対象となる可能性があります。
派遣先企業の責任と注意点
派遣先企業の責任も決して軽くありません。派遣元が派遣先均等・均衡方式を採用している場合、派遣先には比較対象となる労働者の待遇情報を派遣元に提供する法的義務があります。この情報提供を怠ると、労働者派遣契約を締結できないことになっています。
具体的には、以下のような情報を提供する必要があります。
- 比較対象労働者の職務内容、責任の程度、配置変更の範囲
- 基本給、賞与の有無と金額
- 各種手当(通勤手当、住宅手当、家族手当、時間外手当など)
- 福利厚生施設(食堂、休憩室、更衣室など)の利用条件
- 教育訓練の実施状況
一方、労使協定方式を採用している場合でも、派遣先企業の責任がなくなるわけではありません。特に重要なのが、福利厚生施設の利用に関する配慮です。派遣先は、食堂、更衣室、休憩室などの福利厚生施設について、派遣労働者を不合理に排除してはならないとされています。
「派遣社員だから食堂は使えません」「ロッカーは正社員専用です」といった扱いは、明確な法令違反となります。施設のキャパシティに限界がある場合でも、正社員と同じルールで利用できるよう配慮する必要があります。
また、派遣先は派遣労働者に対しても、業務遂行に必要な教育訓練を提供する義務があります。正社員には提供している安全衛生教育や業務スキル研修を、派遣労働者には提供しないというのは認められません。
契約書類の整備
派遣元・派遣先双方にとって、契約書類の整備も重要な実務ポイントです。労働者派遣契約書には、どちらの方式を採用しているのか、派遣労働者の待遇がどのように決定されるのかを明記する必要があります。
また、派遣元から派遣労働者に交付する就業条件明示書にも、待遇決定方式や、派遣先の労働者との待遇の相違の内容・理由を記載することが求められています。これらの書類が不備だと、行政指導の対象となるだけでなく、派遣労働者とのトラブルに発展するリスクもあります。
士業としての支援内容:社労士・行政書士による制度設計サポート
派遣労働者の同一労働同一賃金対応は、労働者派遣法、労働基準法、労働契約法が複雑に絡み合う分野であり、専門知識なしに適切に対応するのは非常に困難です。社会保険労務士は、この分野において派遣会社を実務面から強力にサポートできる専門家です。
派遣元企業への支援内容
社会保険労務士が派遣元企業に提供できる主な支援は以下の通りです。
1. 方式選択のアドバイス
派遣先均等・均衡方式と労使協定方式のどちらが自社に適しているか、派遣先の業種、派遣労働者の職種、社内管理体制などを総合的に判断してアドバイスします。
2. 労使協定方式の協定書作成
労使協定方式を採用する場合、法令に適合した労使協定の作成を支援します。過半数代表者の選出手続き、協定内容の設計、賃金テーブルの作成など、一連のプロセスをサポートします。
3. 賃金水準のチェック
厚生労働省が公表する基準と自社の賃金テーブルを比較し、法令要件を満たしているかを確認します。毎年の基準改定に合わせた見直しも支援します。
4. 説明書面の整備
派遣労働者に交付する待遇に関する説明書面や、就業条件明示書の様式を整備し、法令で求められる記載事項が漏れなく含まれているかをチェックします。
5. 社内規程の整備
派遣労働者の賃金規程や評価制度など、社内規程の整備を支援します。透明性のある賃金決定ルールを確立することで、トラブル防止につながります。
6. 行政対応のサポート
労働局の調査や指導があった場合、適切に対応するためのアドバイスや書類作成を支援します。
派遣先企業への支援内容
派遣先企業に対しても、社会保険労務士は以下のような支援を提供できます。
1. 情報提供義務の整理
派遣元がどちらの方式を採用しているかに応じて、派遣先として提供すべき情報を整理し、必要な書類の作成を支援します。
2. 受け入れ時の注意点のアドバイス
福利厚生施設の利用、教育訓練の提供など、派遣労働者受け入れ時の注意点をアドバイスします。
3. 社内ルール整備
派遣労働者の受け入れマニュアルや、正社員向けの注意事項などを整備し、社内での適切な受け入れ体制を構築します。
4. 契約書類のレビュー
労働者派遣契約書の内容をレビューし、法令違反のリスクがないかをチェックします。
これらの支援を通じて、派遣元・派遣先双方が法令を遵守しながら、円滑に派遣事業を運営できる環境を整えることができます。
まとめ:正確な理解と適切な対応が派遣事業の安定につながる
派遣労働者における同一労働同一賃金は、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」という2つの枠組みの中で適用されます。どこまで待遇を同じにすべきかは、採用している方式によって大きく異なり、単純に派遣先の正社員と比較すればよいというものではありません。
派遣会社の経営者として押さえるべき重要ポイントは以下の通りです。
- 自社がどちらの方式を採用しているかを明確にし、関係者全員に周知する
- 労使協定方式の場合、協定の有効期間管理と賃金水準の定期見直しを徹底する
- 派遣労働者への説明義務を確実に履行し、透明性のある待遇決定を行う
- 派遣先企業との連携を強化し、必要な情報のやり取りを円滑にする
- 契約書類や社内規程を法令に適合した形で整備する
同一労働同一賃金への対応が不十分だと、労働局からの指導対象となるだけでなく、派遣労働者からの訴訟リスクも高まります。また、適切な対応ができていない派遣会社は、優秀な派遣労働者の確保や派遣先企業からの信頼獲得が難しくなり、事業の競争力低下にもつながります。
一方、この制度に適切に対応することで、派遣労働者の満足度向上、離職率の低下、派遣先企業からの評価向上など、多くのメリットを享受できます。同一労働同一賃金は、単なる法的義務ではなく、派遣事業の質を高めるための重要な機会と捉えるべきでしょう。
派遣元・派遣先双方が制度の仕組みを正しく理解し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家の支援を受けることが、安定した派遣活用と法令遵守につながります。派遣労働者、派遣元企業、派遣先企業の三者がそれぞれにメリットを感じられる、公正で持続可能な派遣事業の実現を目指していただければと思います。
派遣労働者の同一労働同一賃金に関するご相談や、労使協定の作成、賃金テーブルの設計など、お困りのことがございましたら、社会保険労務士みなとみらい人事コンサルティングまでお気軽にご相談ください。貴社の状況に応じた最適なソリューションをご提案いたします。
日本全国の派遣会社が誤りがちな「マージン率公開」の表記ミスによる行政指導【実例付き解説】 2026.01.22
― 社会保険労務士が教える是正指導を受けないための実務対応 ―
はじめに
【なぜ今「マージン率公開」で行政指導が増えているのか】
近年、日本全国の派遣会社に対し、マージン率公開の不備を理由とする行政指導が確実に増えています。
特に派遣業許可の更新時や、定期指導・臨検(臨時監督)において、
- 「マージン率は記載されているが、内容が法令要件を満たしていない」
- 「更新されておらず、数年前の情報のまま」
- 「計算方法を説明できない」
といった理由で、是正報告書の提出を求められるケースが全国で散見されます。
派遣会社側としては、「ホームページに載せている」「数値は合っているはず」という認識であっても、
労働局の判断基準は想像以上に厳格です。
本記事では、社会保険労務士の視点から、
実際に行政指導で指摘されやすい事例をもとに、
派遣会社が取るべき具体的な対策を詳しく解説します。
日本全国での派遣会社における「マージン率公開」の重要ポイント
派遣法で求められているマージン率公開の位置づけ
マージン率の公開は、労働者派遣法第23条の5に基づく法定義務です。
努力義務ではなく、守られていない場合は明確な法令違反となります。
公開が求められる主な内容は以下の通りです。
- マージン率
- 派遣労働者の賃金の平均額
- 派遣料金の平均額
- 教育訓練に関する事項
- 福利厚生に関する事項
- キャリアコンサルティングの実施状況
これらは、派遣労働者が安心して就業先を選択するための情報であり、
情報の正確性・最新性・分かりやすさが強く求められています。
【実際の行政指導事例①】マージン率の計算根拠を説明できなかったケース
指導内容の概要(関東地方・中規模派遣会社)
ある派遣会社では、ホームページ上に「マージン率30%」と記載していました。
しかし、労働局の定期指導において、
「この30%は、どの数値を基に算出していますか?」
と質問された際、明確な算出資料を提示できませんでした。
労働局の指摘ポイント
- 派遣料金の平均額と賃金平均額の算出期間が不明
- 社会保険料の扱いが曖昧
- 担当者ごとに説明内容が異なる
結果として、「マージン率公開が形式的であり、実質的な説明義務を果たしていない」と判断され、
是正指導+再提出命令を受けました。
社会保険労務士の視点からの教訓
マージン率は、数値だけ載せていれば足りるものではありません。
行政指導では、「説明できるか」「裏付け資料があるか」が必ず確認されます。
【実際の行政指導事例②】毎年更新していなかったことによる是正指導
指導内容の概要(地方都市・小規模派遣会社)
別の事例では、派遣許可更新時に、
3年前のマージン率情報をそのまま掲載していたことが問題となりました。
会社側は「数値に大きな変動はなかったため更新しなかった」と説明しましたが、
労働局はこれを認めませんでした。
労働局の判断
- マージン率公開は毎事業年度ごとの更新が必須
- 変更がない場合でも「更新した事実」を示す必要がある
- 古い年度表示は、派遣労働者に誤解を与える
この結果、文書による是正指導と、更新後の再確認が行われました。
日本全国の派遣会社が特に注意すべき「表記ミス」パターン
よくあるミス①:マージン率の算出式が誤っている
正しい算出式は以下です。
(派遣料金の平均額 − 派遣労働者の賃金平均額)÷ 派遣料金の平均額 × 100
これを、
- 月額と年額を混在
- 派遣社員以外の人件費を含めている
などの誤りが、実際の行政指導で頻繁に指摘されています。
よくあるミス②:「マージンの内訳」が抽象的すぎる
「諸経費として使用」など、具体性のない表現は指導対象になりやすいです。
社会保険料、教育訓練費、営業管理費など、派遣法の趣旨に沿った説明が必要です。
行政指導を防ぐために派遣会社が今すぐ行うべき対策
社会保険労務士による定期チェックの重要性
多くの行政指導事例に共通しているのは、
「社内だけで判断していた」という点です。
社会保険労務士が関与することで、
- 最新の指導傾向を踏まえた表記
- 労働局対応を想定した資料整備
- 担当者が説明できる体制づくり
が可能になります。
ホームページ・事業所掲示・社内資料の統一
行政指導では、
- ホームページ
- 事業所掲示
- 提出資料
の内容が一致しているかも確認されます。
どれか一つでもズレていると、是正対象になる可能性があります。
日本全国の派遣会社にとって正しいマージン率公開がもたらすメリット
- 行政指導リスクの大幅な低減
- 派遣労働者からの信頼向上
- 取引先企業へのコンプライアンスアピール
特に近年は、派遣先企業が派遣元の法令遵守状況をチェックするケースも増えており、
マージン率公開は経営上の重要項目になっています。
まとめ:マージン率公開は「行政指導対策」ではなく「経営対策」
日本全国の派遣会社にとって、マージン率公開は単なる義務ではありません。
正しく対応することで、
行政対応・人材定着・取引先評価すべてに好影響をもたらします。
「一度も指摘されたことがない」派遣会社こそ、
次の指導対象になる可能性があります。
社会保険労務士に相談する理由(日本全国対応)
マージン率公開に少しでも不安がある場合、
行政指導を受けてからでは遅いのが実務の現実です。
社会保険労務士に相談することで、
- 行政指導を想定した事前対策
- 是正指導時の対応サポート
- 派遣事業全体の法令リスク管理
が可能になります。
当事務所は日本全国対応ですので、地域を問わず派遣会社の実情に合わせてご支援いたします。
初回のご相談は無料です。ホームページお問合せよりご連絡ください。
変形労働時間制とは?派遣スタッフのシフトに活かす制度 2026.01.21
1.はじめに
変形労働時間制とは、一定期間を平均して法定労働時間を守れば、日や週によって労働時間を柔軟に配分できる制度です。人手需要が日々・季節ごとに変動しやすい派遣業務では、シフト調整の自由度を高めつつ、法令遵守を実現する重要な仕組みとして注目されています。適切に運用すれば、派遣スタッフの働きやすさと派遣元・派遣先双方の業務効率向上につながります。
2.変形労働時間制の定義と概要
変形労働時間制は、労働基準法に基づき、1日8時間・週40時間という原則を、一定期間の平均で管理する制度です。代表的なものに「1か月単位」「1年単位」「1週間単位の非定型」があり、業務の繁閑に合わせて労働時間を配分できます。
例えば忙しい週に長く働き、閑散期に短くすることが可能です。社労士の立場では、制度選択を誤ると残業代未払いなどのリスクが生じるため、業務特性に合った類型選択が不可欠だといえます。
3.派遣スタッフにおける適用の考え方
派遣スタッフの場合、変形労働時間制を導入する主体は原則として派遣元事業主です。派遣先のシフト事情に合わせたい場合でも、派遣元が就業規則等で制度を整備していなければ適用できません。
社労士の実務では、派遣契約と労働条件通知書の整合性が特に重要視されます。派遣先の要望だけで安易に長時間シフトを組むと、法違反となるおそれがあるため注意が必要です。
4.派遣シフトに活かせる具体的な場面
変形労働時間制は、物流倉庫の繁忙期、イベント運営、コールセンターの繁閑差など、派遣需要が波打つ現場で効果を発揮します。例えば月初・月末に業務が集中する場合、1か月単位の変形労働時間制を使えば、残業扱いを抑えつつ対応できます。
社労士としては、派遣スタッフの負担が一方的に増えないよう、事前に勤務日・勤務時間を明確に定めることが、トラブル防止の鍵だと助言します。
5.導入に必要な手続きと就業規則
変形労働時間制を導入するには、就業規則への明記や、労使協定の締結・届出が必要です。特に1年単位の変形労働時間制では、所轄労働基準監督署への届出が必須となります。
派遣元企業では、派遣スタッフにも適用される内容として明確に定義することが求められます。社労士の視点では、書類不備や記載漏れが是正勧告につながるケースが多く、専門家チェックの重要性が高い分野です。
6.運用上の注意点とリスク管理
変形労働時間制は便利な反面、管理が煩雑になりがちです。勤務実績の記録、平均労働時間の確認、36協定との関係整理などを怠ると、違法残業と判断される可能性があります。
派遣スタッフは複数現場を経験することも多いため、説明不足による不満や誤解も起こりやすいです。社労士としては、導入時の丁寧な説明と定期的な運用見直しを強く推奨します。
7.まとめ
変形労働時間制は、派遣スタッフのシフト調整に柔軟性をもたらす有効な制度ですが、正しい理解と手続きが前提となります。派遣元・派遣先・スタッフそれぞれの立場を踏まえ、法令に沿った設計と運用を行うことが不可欠です。
就業規則や契約書の整備、実務運用に不安がある場合は、社労士に相談することで、リスクを抑えつつ制度のメリットを最大限に活かすことができるでしょう。
日本全国の派遣元責任者が理解すべき労働条件通知書の最新ルール【社会保険労務士が解説】 2026.01.20
派遣事業を運営するうえで、労働条件通知書は派遣元責任者にとって避けて通れない重要書類です。
特に近年は、労働基準法・労働者派遣法の改正やデジタル化の進展により、労働条件通知書に求められる内容や交付方法が大きく変化しています。
「以前と同じ書式を使っているが問題ないのか」
「派遣社員向けの労働条件通知書で特に注意すべき点は?」
こうした疑問を抱える派遣元責任者の方も、日本全国で増えています。
本記事では、社会保険労務士の視点から、日本全国の派遣元責任者が必ず押さえるべき労働条件通知書の最新ルールを、実務に即して分かりやすく解説します。
日本全国での労働条件通知書の最新ルールの重要ポイント
労働条件通知書とは何か
労働条件通知書とは、労働基準法第15条に基づき、労働契約締結時に使用者が労働者へ明示しなければならない労働条件を記載した書面です。
派遣労働者であっても例外ではなく、派遣元事業主は必ず交付する義務があります。
日本全国共通のルールとして、以下の項目は**必ず明示すべき事項(絶対的明示事項)**です。
- 労働契約の期間
- 就業の場所・業務内容
- 始業・終業時刻、休憩、休日、時間外労働
- 賃金の決定・計算・支払方法、締日・支払日
- 退職に関する事項
派遣労働の場合は、これに加えて派遣就業特有の明示事項が求められます。
最新ルール①:書面交付だけでなく電子交付が可能に
近年の法改正により、労働条件通知書は一定の要件を満たせば電子交付(メール、PDF、クラウドシステム等)も可能となりました。
ただし、日本全国どの地域でも共通して、以下の条件を満たす必要があります。
- 労働者本人が電子交付に同意していること
- 労働者が内容を確実に確認・保存できること
派遣元責任者が注意すべき点は、「電子で送ったからOK」ではなく、同意の取得と保存性の確保まで含めて対応する必要があるという点です。
最新ルール②:同一労働同一賃金への対応が必須
派遣法改正により、「同一労働同一賃金」への対応は、労働条件通知書にも明確に反映させなければなりません。
派遣労働者については、以下のいずれかを選択します。
- 派遣先均等・均衡方式
- 労使協定方式
特に労使協定方式を採用している派遣元では、
- 協定の有無
- 対象となる職種
- 賃金決定の根拠
などを、労働条件通知書で分かりやすく説明することが、日本全国の派遣元で求められています。
日本全国での労働条件通知書の注意点
記載漏れ・曖昧表現は行政指導のリスク
社会保険労務士として全国の派遣事業所を見てきた中で、特に多いのが以下のミスです。
- 契約更新の有無が曖昧
- 就業場所が「派遣先」としか書かれていない
- 時間外労働の可能性が明示されていない
労働条件通知書は、「実態と一致していること」が非常に重要です。
日本全国どの労働基準監督署でも、形式だけ整っていても実態と違えば是正対象となります。
派遣元責任者が特に注意すべき派遣特有のポイント
派遣社員向けの労働条件通知書では、通常の正社員・パート以上に注意が必要です。
- 派遣就業の開始日・終了日
- 派遣先の名称・所在地
- 派遣契約解除時の取り扱い
- 雇用安定措置に関する事項
これらは、日本全国共通で派遣元責任者の管理責任が問われるポイントです。
社会保険労務士によるよくある質問と対策
Q1. 労働条件通知書と雇用契約書は同じですか?
A. 同じではありません。
労働条件通知書は「通知」、雇用契約書は「合意」を証明するものです。
ただし、日本全国の実務では兼用書式を使うケースが多く、双方の要件を満たす内容にすることが重要です。
Q2. 派遣契約が短期更新の場合、毎回交付が必要ですか?
A. 原則として必要です。
条件が変更になる場合は、必ず再交付または変更通知を行いましょう。
この点を怠ると、派遣元責任者の管理体制が問われる可能性があります。
日本全国全域での労働条件通知書のメリット
適切な労働条件通知書を整備することは、単なる法令遵守にとどまりません。
- 派遣社員とのトラブル防止
- 行政調査へのスムーズな対応
- 派遣元事業としての信頼性向上
日本全国で派遣事業の競争が激しくなる中、書類整備の質=会社の信用力と言っても過言ではありません。
日本全国周辺にも当てはまるポイント
都市部・地方を問わず、派遣元責任者に求められる水準は全国一律です。
地域差はほとんどなく、「全国対応できる体制づくり」が今後ますます重要になります。
まとめと結論(日本全国の派遣元責任者向け)
労働条件通知書は、派遣元責任者にとって最も基本であり、最も重要な法定書類です。
最新ルールを正しく理解し、実態に即した内容で整備することが、日本全国での派遣事業の安定運営につながります。
「昔からこの書式だから大丈夫」ではなく、定期的な見直しと専門家のチェックが不可欠です。
社会保険労務士に相談する理由とお問い合わせ情報(日本全国対応)
派遣元責任者がすべての法改正・実務対応を一人で把握するのは容易ではありません。
社会保険労務士に相談することで、
- 最新法令への確実な対応
- 派遣特有のリスク回避
- 労働基準監督署・派遣労働者対応の安心感
を得ることができます。
日本全国対応の社会保険労務士であれば、地域を問わず、派遣元責任者の実務を強力にサポートできます。
労働条件通知書の見直しや派遣事業の法令対応でお悩みの方は、早めの専門家相談をおすすめします。
初回のご相談は無料です。当ホームページよりお気軽にご連絡ください。
同一労働同一賃金とAI化で派遣会社はどう変わる?倒産増加の構造を解説 2026.01.19
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はじめに|「制度対応」と「技術変化」に挟まれる派遣会社
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ここ数年、派遣会社を取り巻く環境は、これまでになく大きく変化しています。
一方には「同一労働同一賃金」をはじめとする制度面の変化。
もう一方には、AIや自動化といった技術革新。
その狭間で、派遣会社の倒産が過去最多ペースで増えているという現実があります。
派遣会社の経営者や管理職の方からは、
「制度対応だけでも大変なのに、AIの話まで出てきて正直厳しい」
「人手不足なのに、なぜ経営は楽にならないのか」
といった声をよく耳にします。
本記事では、派遣会社倒産が増えている背景を、
・同一労働同一賃金という制度の影響
・AI・自動化が派遣業務に与える変化
という2つの軸から整理し、派遣会社が今後どう変わるべきかを、社会保険労務士の視点で解説します。
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派遣会社倒産の増加は「業界縮小」ではない
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まず押さえておきたいのは、派遣会社の倒産が増えているからといって、派遣業界そのものが急激に縮小しているわけではない、という点です。
確かに、2025年に入り派遣会社の倒産件数は過去最多水準となっています。
しかし、その主な理由は、
・派遣需要の消失
・派遣制度の否定
ではありません。
背景にあるのは、
「限られた市場での競争が、制度と技術の変化によって一気に厳しくなった」
という構造的な問題です。
つまり、派遣会社は今、
「生き残るための条件」が大きく書き換えられている局面にあるのです。
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同一労働同一賃金が派遣会社にもたらした現実
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同一労働同一賃金は、本来、正社員と非正規社員の不合理な待遇差をなくすための制度です。
派遣社員についても例外ではなく、派遣先の通常の労働者と均等・均衡待遇を確保することが求められています。
この制度によって起きた変化は、主に次の3点です。
1つ目は、派遣社員の賃金水準が制度的に底上げされたこと。
厚生労働省が職種別の賃金水準を示すようになり、「極端に低い時給設定」は事実上難しくなりました。
2つ目は、派遣会社の裁量が小さくなったこと。
かつてのように「価格競争で案件を取る」という戦略が取りにくくなっています。
3つ目は、コスト構造がより見えにくくなったことです。
派遣料金の中には、賃金だけでなく、社会保険料、有給休暇の原資、教育費、管理コストなどが含まれていますが、派遣先からは「なぜこの金額なのか」と厳しく問われる場面が増えました。
制度としては正しい方向ですが、派遣会社にとっては経営の難易度が一段階上がったと言えるでしょう。
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コストは増えるが、価格転嫁は簡単ではない
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同一労働同一賃金への対応によって、
・派遣社員の時給アップ
・福利厚生の整備
が進んだ一方で、そのコストを派遣先企業にすべて転嫁できている派遣会社は多くありません。
特に中小派遣会社では、
「これ以上派遣料金を上げたら契約が切られる」
という不安から、利益を削って対応しているケースも見られます。
その結果、
・マージン率はあっても営業利益はほぼ残らない
・少しのトラブルで資金繰りが悪化する
といった、非常に不安定な経営状態に陥りやすくなっています。
倒産理由として「制度対応ができなかった」というよりも、
「制度対応をした結果、採算が合わなくなった」
というケースが増えているのが実情です。
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無期雇用派遣と固定費の増大
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2015年の労働者派遣法改正以降、無期雇用派遣は年々増加しています。
派遣社員にとっては雇用の安定につながる重要な制度ですが、派遣会社側にとっては固定費の増加を意味します。
仕事がある月も、ない月も、
・賃金
・社会保険料
を支払い続けなければなりません。
さらに、
・研修・教育コスト
・キャリア形成支援
といった「派遣会社の役割」も重くなっています。
制度が進化するほど、派遣会社には「人を雇う会社」としての責任が強く求められるようになっているのです。
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派遣業界に迫るAI・自動化という構造変化
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制度面と並んで、派遣業界に大きな影響を与えているのが、AIや自動化の進展です。
とくに影響が大きいのは、
・コールセンター
・一般事務
・定型的な入力業務
といった、これまで派遣社員が多く活躍してきた分野です。
チャットボットやRPAの導入により、
「人を派遣しなくても業務が回る」
ケースが確実に増えています。
これは一時的な景気変動ではなく、不可逆的な変化です。
今後、AIがさらに進化すれば、派遣が必要とされる業務そのものが減少する可能性もあります。
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スキマバイトより深刻な「仕事の消失」
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派遣業界では、スキマバイトやスポットワークが話題になることも多いですが、実務的には完全な競合とは言えません。
それよりも深刻なのは、
「派遣で担ってきた仕事が、AIによって消えていく」
という現象です。
これは、
・派遣社員の確保が難しい
という問題とは別次元の話です。
人が足りなくても、
「そもそも人を使わなくなる」
という選択肢が企業側に生まれている点が、これまでとの大きな違いです。
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派遣会社は「人を出す会社」からどう変わるか
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同一労働同一賃金とAI化が同時に進む中で、派遣会社に求められる役割は確実に変わっています。
これからは、
・誰でもできる仕事に人を出す
モデルは成り立ちにくくなります。
重要になるのは、
・専門性のある職種への特化
・教育・育成を前提とした派遣
・派遣先の業務改善まで含めた提案
といった付加価値です。
単なる「人材供給業」から、「人材活用のパートナー」へ。
この転換ができるかどうかが、派遣会社の将来を左右します。
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社労士の視点|制度と技術を前提にした経営へ
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派遣会社の倒産増加は、制度が厳しすぎるからでも、AIが悪いからでもありません。
制度も技術も、社会全体にとっては必要な進化です。
問題は、
「変化を前提に経営モデルを見直せているか」
という点にあります。
労務管理、賃金設計、人材育成。
これらを場当たり的に対応するのではなく、長期的な戦略として組み立てていくことが、これからの派遣会社には不可欠です。
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おわりに|倒産増加は派遣業界の転換点
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同一労働同一賃金とAI化。
この2つは、派遣会社にとって避けて通れない現実です。
派遣会社の倒産が増えているのは、業界の終わりではありません。
むしろ、「派遣会社の役割が再定義される転換点」に私たちは立っています。
変化を恐れず、自社の強みを磨き直すこと。
それができる派遣会社こそが、次の時代に選ばれていくのではないでしょうか。
社会保険労務士として、派遣会社がこの変化を前向きに乗り越えていくための支援を、これからも続けていきたいと考えています。
【参照記事リンク】
https://news.yahoo.co.jp/articles/d3700f0c0e2190858c01b280be7608eafa0dd458?page=1
派遣社員の有給休暇管理は派遣元?よくある誤解と正しい運用ポイント 2026.01.16
派遣社員として働いている方、または派遣社員を受け入れている企業の担当者から、次のような質問を受けることがよくあります。
「有給休暇は誰に申請すればいいの?」
「派遣先の上司に言えば取得できるの?」
「派遣だから有給休暇はないのでは?」
派遣という働き方は、雇用主と実際の勤務先が異なるため、有給休暇の管理について誤解が生じやすいのが実情です。実務の現場では、派遣元・派遣先・派遣社員の三者で認識がズレてしまい、不要なトラブルにつながるケースも少なくありません。
本記事では、社会保険労務士の視点から「派遣社員の有給休暇は誰が管理するのか」という基本を整理しつつ、よくある誤解と正しい運用ポイントをわかりやすく解説します。
────────────────────────
■ 結論:派遣社員の有給休暇を管理するのは「派遣元」
結論からお伝えすると、派遣社員の有給休暇を管理するのは派遣先企業ではなく、派遣元(派遣会社)です。
派遣社員は派遣先の職場で日々業務を行いますが、法律上の雇用主は派遣元になります。労働契約を結んでいる相手が派遣元である以上、有給休暇に関する管理責任も派遣元にある、というのが基本的な考え方です。
具体的には、次のような業務はすべて派遣元が担います。
・有給休暇の付与日数の管理
・取得状況の把握
・残日数の計算
・時効管理(2年)
・年5日の取得義務への対応
派遣先は、日々の業務指示や勤怠状況の確認を行う立場ではありますが、有給休暇の付与や管理の主体ではありません。
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■ なぜ派遣元が有給休暇を管理するのか
この点を理解するためには、労働基準法における「使用者」という考え方を押さえる必要があります。
労働基準法では、有給休暇は「使用者」が労働者に対して付与し、管理するものとされています。ここでいう使用者とは、賃金を支払い、労働契約を締結している相手、つまり雇用主のことです。
派遣社員の場合、労働契約を結んでいるのは派遣会社です。たとえ実際の勤務場所が派遣先であっても、法律上の使用者は派遣元になります。そのため、次のような判断は派遣元が法律に基づいて行う必要があります。
・有給休暇が発生する要件を満たしているか
・付与日数は何日か
・取得可能な残日数はいくつか
派遣先が独自に「うちは忙しいから有給は不可」と判断したり、「短期だから有給は出ない」と決めたりすることはできません。
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■ よくある誤解① 派遣先の了承がないと有給は取れない?
現場で特に多いのが、「派遣先の了承がないと有給休暇は取れない」という誤解です。
確かに、実務上は業務に支障が出ないよう、派遣先と日程調整を行うことが一般的です。しかし、これはあくまで業務上の調整であり、有給休暇を取得する権利そのものを派遣先が握っているわけではありません。
正しい流れとしては、
1.派遣社員が派遣先と休暇日程の相談・調整を行う
2.派遣元に対して有給休暇の申請を行う
という形になります。派遣先との調整は大切ですが、「派遣先が許可しなければ取得できない」という理解は誤りです。
────────────────────────
■ よくある誤解② 派遣先の就業規則が優先される?
「派遣先の就業規則では有給が取りにくいから、従わなければならない」という声もよく聞かれます。
しかし、有給休暇に関して適用されるのは、派遣元の就業規則や労働条件です。派遣先の就業規則は、派遣社員の労働条件を直接決めるものではありません。
派遣先の社内ルールが厳しかったとしても、それを理由に派遣社員の有給休暇取得を制限することはできません。この点を派遣先企業が正しく理解していないと、知らず知らずのうちに法令違反につながるリスクもあります。
────────────────────────
■ よくある誤解③ 派遣だから有給休暇はない?
「派遣社員には有給休暇がない」と思い込んでいる方も、いまだに少なくありません。
結論から言えば、派遣社員であっても、一定の要件を満たせば正社員と同様に有給休暇は発生します。
具体的には、
・雇い入れの日から6か月継続勤務していること
・全労働日の8割以上出勤していること
この2つの要件を満たせば、有給休暇は当然に付与されます。雇用形態が派遣であることを理由に、有給休暇が認められないことはありません。
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■ 派遣元・派遣先・派遣社員それぞれの注意点
派遣社員の有給休暇をめぐるトラブルは、三者の役割認識のズレから生じることがほとんどです。
【派遣元が注意すべきポイント】
・有給休暇の付与日、残日数を明確に管理する
・派遣社員に対して制度を丁寧に説明する
・年5日の取得義務を確実に履行する
【派遣先が注意すべきポイント】
・有給休暇は法律上の権利であると理解する
・人手不足を理由に取得を妨げない
・業務調整に協力する姿勢を持つ
【派遣社員が意識したいポイント】
・申請先は派遣元であることを理解する
・早めに日程調整を行い、派遣元に相談する
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■ 年5日の有給休暇取得義務も派遣元の責任
2019年から導入された「年5日の有給休暇取得義務」についても、派遣社員は例外ではありません。
この義務を管理するのも派遣元です。派遣先任せにしていると、知らないうちに未取得となり、派遣元が法令違反を問われるリスクがあります。
派遣元としては、派遣先との連携を取りながら、計画的な取得を促す体制づくりが重要になります。
────────────────────────
■ 社会保険労務士ができるサポート
派遣社員の有給休暇管理は、労働基準法だけでなく、労働者派遣法や関連ガイドラインも関係するため、実務判断が難しい分野です。
社会保険労務士は、
・有給休暇管理の仕組みづくり
・帳簿や管理方法の整備
・派遣先との役割分担の整理
・派遣社員からの相談対応
といった形で、派遣元・派遣先双方をサポートすることができます。
派遣社員の有給休暇をめぐるトラブルは、「知らなかった」「思い込みだった」というケースが大半です。正しい知識を持ち、早めに専門家へ相談することで、無用なリスクを防ぐことができます。
派遣という働き方が当たり前になった今だからこそ、有給休暇の正しい管理と運用を、改めて見直してみてはいかがでしょうか。
当事務所へのご相談は初回無料です。ホームページお問合せよりご連絡ください。
📝人材ビジネスナビに1月分の記事を執筆しました 2026.01.15
テーマ:派遣事業報告書の書き方(第1面編)
6月提出の報告書、全12ページもあるので2026年1月から解説スタート!
✅許可番号の正確な記載方法 ✅本社・支社がある場合の注意点 ✅労働局から指摘されやすいミス
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「予め料金が分かっているので、安心して申し込めます」
「料金交渉が不要で助かります」
「時間単価は一定なので、研修時間数を調整すればいいから、予算との折り合いも簡単にできます」
などなど、多くのお客様に喜ばれております。
セミナーについて
当事務所セミナー会場(27Fスカイラウンジ)で、当事務所が独自にテーマを設定し、お申し込み頂いた、複数の会社様にご参加頂くものです。
セミナー開催実績例
- 介護事業者様向け「改正介護保険法セミナー」
- 介護事業者様向け「介護労働環境向上奨励金セミナー」 3回
- 新規採用をお考えの事業者様向け
「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」 - 飲食店様向け「元ハローワーク職員が教える!求人助成金セミナー」
講演について
当事務所代表が会社様や、ご同業者の集まりに訪問し、ご依頼されたテーマ(一般的な課題)について原稿を作成し、講演するものです。
講演実績
日本経営開発協会様 御紹介
市川港開発協議会様 主催 研修
「マイナンバー通知開始!
今知りたいマイナンバー制度の傾向と対策」
【参加者様からのお声】
- 非常に分かりやすく、90分飽きさせることのない素晴らしいものだった。
- 非常に役に立ち、興味が持てる内容だった。
- 普段は講義に集中するのは難儀なのだが、話のスピード、声のトーン、間、どれを取っても感心するばかりだった。
- マイナンバーが今後いろいろな問題を引き起こす可能性があることがよくわかり、大変勉強になった。早期に確実な運用体制を社内に確立させなければと思った。
一般社団法人 港湾労働安定協会 様 主催
雇用管理者研修「職場のメンタルヘルスに関して(会社を守る職場のメンタルヘルス対策)」
【参加者様からのお声】
- メンタルヘルス対策は今後も重要になってくると思うので、このような研修会を増やして貰いたい。
- 社会保険労務士による内容を次回もお願いしたい。
- メンタルヘルス関係で初めて面白い(役に立つ)情報が聞けたと思います。
- 大変に良い研修ですので、これからも続けて貰えるとありがたいです。
- 中間管理職として守るべきというか、部下に対してどのような人事労務管理をすればよいのか、中小企業向けに別途講習会をやってほしいと思った。
- 株式会社LEC 様 主催
「介護雇用管理研修」業務委託登録講師 - 株式会社フィールドプランニング 様 主催
「派遣元・派遣先・職業紹介責任者講習」業務委託主任講師 - 神奈川韓国商工会議所様 主催
経営者セミナー「お役立ち助成金講座
(雇用の確保と5年ルールへの対応策)」 - 日本経営開発協会様 御紹介
株式会社根布工業様 主催
安全大会「入ってないと、どうなっちゃうの?社会保険のこわ~いお話」
泉文美 講師紹介ページ
研修について
当事務所代表が、会社様のご依頼に基づき、会社様の具体的な人事労務に関わる内容(個別事案)について、オーダーメイドのプログラムを作成し、社員の皆様に研修するものです。
研修のご依頼例
- 就業規則を変更したので、わかりやすい説明会を開いてほしい
- 給与規定を見直したので、従業員に説明をしてほしい
- 従業員向けの、接客マナー、敬語などのレッスン会をしてほしい
執筆のご依頼
雑誌・メルマガ、HPコラムなど、ご希望に沿ったテーマで記事を執筆いたします。
掲載履歴
HP記事執筆
ハッケン!リクナビ派遣に「働き改革!派遣社員が選べるふたつの雇用とは」と題する記事を執筆しました。
「近代中小企業」2月号
「近代中小企業」2月号に記事を執筆しました。
「元ハローワーク職員が教える!ハローワーク求人&助成金活用法」
「SR」 9月号
ハローワークを始め、社会保険事務所(現:年金事務所)、労働基準監督署でも勤務経験を持ち、「お役所の裏事情に詳しい社労士」として定評のある我がみなとみらい人事コンサルティング代表。
ハローワークでの勤務経験を買われ、日本法令様出版の「SR 9月号」に記事を執筆しました。
(第27号 2012年8月6日発売)


